「本当に大丈夫なのか?」
「だいじょぶだいじょぶ、俺だぜ?」
朗らかに笑うリョースケだったが、彼は今さっき、そこには警察がいるというのに、僕が気づかれず病院を出られるように院内の監視ロボットをハックして五分間だけダミーの映像を流していた。こいつは今直ぐにでもテロリストになれる。どうして警察はミナのことなんて疑っておいてこんな危険な人間を野放しにしているんだろう。
「とりあえずありがとう」
「な、俺にレポート見せといてよかっただろ」
「……その恩はまだ結構残ってるよな?」
「なんだ、まだなんかあんのか?おもしろくなってきたじゃねーか」
わかりやすい悪者のように「クックック」と笑うリョースケに呆れることで僕は少し落ち着きを取り戻した。
「状況は大体調べたから話さなくていいぜ。まずは何からする?」
調べたというのは、つまり警察の情報をハックしたということだろうか。いや、今はそんなことはどうでもいい。まず確かめなければならないことは、この通り魔事件の被害者についてだ。僕はアリシアのデータから、あることに気がついた。
「うちの大学の学生課から、十年前にクローバーの森へボランティアに行った人の名前を調べてほしいんだ」
"隣にいる君を探して 第9話"へのコメント 0件