ノベルジャムが終わってから、しばらくは仕事に手がつかなかった。
フリーランスとはいえ、いろいろ抱えている案件もあるから、そんなにぼんやりもしていられないのだが、かといって今まで通りに過ごすという気分にはなかなかならなかった。
そうこうしているうちに、参加者の多くがそれぞれに参戦記を公開し始めた。
漫画で綴るスゴい人もいた。
ぼくも「ストラタジャム」と自作タイトルをもじってルポの連載を始めた。
破滅派を公開場所に選んだのは、高橋文樹に見せるためだ。
そんなみんなの参戦記を集めてアンソロジーを作ろうという計画を立てたりもしたのだが、夏ぐらいから仕事がテンパってなにもできなくなってしまい、すっかり忘却の彼方に吹き飛んでしまっていた。
秋になる頃に、日本独立作家同盟で次回ノベルジャムの計画がスタートした。
ぼくはボランティア参加をするつもりだったので最初の数回の会合に出席したのだが、それからまた仕事に追われる日々に舞い戻ってしまい、ずいぶんと不義理をしてしまった。
11月下旬、ノベルジャムの開催告知が行われた。ぼくもどうにか仕事の合間を縫って会場運営の手伝いに参加した。
準備には参加できてはいないが、2月の本番は必ずスケジュールを開けて、運営スタッフの一員として、新たなノベルジャム戦士の面倒をみることに決めていたのだ。
この頃は。
サンタクロースが深夜の街を徘徊するかしないかという、冬が始まってきたと実感がじわじわと高まってきた夜、1通のメッセージがぼくの元へ届いた。
誰からなのかは伏せておこう。
『あなたはクビです』
「え? なんですか急に」
『とにかくノベルジャムのスタッフからは外れてもらいます』
「そんな」
『いま内情をどのぐらい知っていますか?』
「あ、すいません。忙しくて全然掲示板を追えていないです。ほとんどわかりません」
『そうですか』
「今すぐチェックしたほうがいいですか?」
『いいえ、その必要はありません。むしろ好都合です』
「好都合?」
『ところで、話は変わりますが』
「はい」
『編集とデザイナーが足りません』
「は?」
『忖度を期待します』
「それを言ったらそれはもう忖度ではないのでは?」
『それではおやすみなさい』
新年明けて1月5日、ノベルジャムの申し込み期限が過ぎた。
そして数日。
ぼくは八王子で行われる第2回ノベルジャムに、「デザイナー」として参戦することが決まった。
やれやれ。
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