【 30秒で読める話:10】Yeahhh!
サッカーの試合を見るために、ぼくたちは集まった。
「ビール、回して。乾杯まで飲むなよ」
まさおは、ビールを受け取ると、すぐに缶をあけてゴクゴクと一気に飲み干した。
そしてゲップをしながら、親指を立てる。
「いや、全然わかってねーじゃん」
テレビの前のソファに座るぼくたち。
「なんか、緊張してきたな」とひとりがいう。
「公式戦だからね」とぼくはいう。
国歌斉唱がはじまる。
ぼくらは何となく神妙な面持ちで、メロディに合わせて歌い始める。
するとすぐに、まさおが「Ah Yeahhh!」と合いの手を入れる。
「おい、君が代に『Ah Yeahhh』はないだろ」とぼくはいう。
「アメリカの国歌だって、そんなのないわ。厳粛なんだから国歌って」
まさおはビールを傾ける。
「あー、お前ら、そっち系? おれにはブレイク・ビーツが聞こえんのに」
「聞こえねえよ」と皆がいう。
「そっか、じゃあ、DNAか。刻まれてんのかも、おれって」
「お前、実家が三浦で農家やってるっていったじゃん」
まさおは、大根でも見るようにぼくらの顔を見る。
「突然変異。ヘミングウェイの猫みたいなのが、おれなのよ」
だれも何もいわない。というか、いえない。
そのとき笛が鳴って試合が始まった。
「Ah Yeahhh!」と皆で叫んだ。
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