【 30秒で読める話:07】解釈と介錯
狭い団地の部屋がしゅるると軋んだ。
姉は赤ん坊を抱いている。
赤ん坊が蛹のように静かなのは、姉が小さく揺れ続けているからかもしれない。
ぼくの頭の中で、陳列する商品の段ボールだけがどこまでも、どこまでも積み上げられていく。
クビを切られたあとも、ぼくは夢の中で仕事をしていることがあった。
目が覚めると、手ごたえのある疲労感が残っているのに、稼ぎはなかった。
無職なだけで、肩身が狭い。居心地が悪いのは、銃口のような目をした姉のせいかもしれない。
「まったく、何考えてんのよ。タトゥーなんて、『ぼくはバカです』って宣伝してるようなもんよ」
姉は、シャベルでも眺めるようにぼくを見ている。 ぼくは首元に手をやる。
「いっとくけど、ぼくのは『タトゥー』じゃなくて『入れ墨』だから。一緒にしないでくれる?」
「あっそ。じゃあ『バカ』じゃなくて、『アホ』とか『トンマ』ってこと?」
そのとき、赤ん坊が泣き出す。
姉があやすと、すぐに泣き止んだ。
「いい子ね。本当にいい子。あんなふうになっちゃだめですからね」
赤ん坊はぼくを見ている。
つるんとした顔が、見る見る老けていく。
そこには、もう中年になった赤ん坊がいる。
中年の男は、訳知り顔でニヤリと笑っていた。
老けた赤ん坊の首元に、ぼくと同じ入れ墨があった。
それは首全体を覆ったあと、顔へと広がっていく。
「もう全部、起きちまったから」と中年の男が言った。
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