メニュー

あの夏、君は海えと消えた (6)

あの夏、君は海えと消えた(第6話)

秋山優一

肺癌のみどりを思いつつも自分の人生にうまくいなかにことに腹をたてはじめる

小説

2,596文字

それから数ヶ月みどりは肺癌と診断されて、抗癌剤を投与するも一向に回復の兆しがみえない。
拓実は本当に自分の命を半分をみどりに与えることができるのならば、与えてやりたいと本気で考えてしまっていた。
そう考えても金で人の命が買える程優しい問題ではなく、又金で解決できるようなことではなにのである。
拓実はふと思う。もし本当にあの男が死神であり、自分の命をみどりに与えることができるのであれば、与えてあげたいと。
しかしそんな馬鹿げた現実があるわけでもなく、ただみどりが日々肺癌に冒されているという事実だけが冷たくも拓実に現実を突きつけるのであった。
これ以上拓実はみどりと会うことを辞め、みどりの体力の回復を願うのであるが、サーフィンの練習に身があまり入らず、時折朝の練習をさぼることもあった。
そんな時である。みどりに会わないにしても、時々電話をすることがあり、みどりから体調が少しいい時にデートをしたいと拓実は言われた。
拓実自身は親のこともあるし、今病気を少しでも早く直さないと彼女の命に関わることなので、拓実は遠慮していたのだが、みどりがどうしても会いたいというので拓実は渋々頷くのであった。
日曜日。拓実はサーフィンの練習が終わり、家で適当にスマホをいじりながら時間を潰していた。するとみどりから電話があった。
拓実は電話に出てみると、元気の良さそうな声で、
「拓実君今から会えない。結構今体調がいいの]
と、可愛いらしい声で話す。
「大丈夫だよ。今サーフィンの練習が終わって暇していたところ。何時位に迎えにいけばいい」
「昼の一時頃がいいな。私待ってるからきてね」
「ああ、いくよ」
と、二人の電話が切れた。
拓実は部屋着から適当な私服に着替え、十二時四十五分位になってから家を出た。
一時前にはみどりの家に着き、インターホンを鳴らすと、玄関の扉を開けてみどりがでてくる。
白いワンピースに黒いロングヘアーのストレートヘアーをしたみどりは何処か幻想的にみえ、拓実の目には美しく見えた。
「お、おお。久し振り。どうしたんだよ今日の格好。みどりらしくないね」
「それて私を馬鹿にしてんるの。今日は体調もいいし。インターネットで買い物のしたのワンピース拓実君に見てもらいたくって」
みどりは嬉しそうにひらひらと左右に体を動かす。だが拓実はみどりの顔が熱で真っ赤になっていて苦しそうなことが分かり、あまり一緒にはいれないと感じていた。
「今日は何処に行く。あんまり遠くじゃないほうがいいな」
「んん。私、大洗ビーチに行って海がみたい」
「ああ、わかった。じゃあ大洗ビーチ行って少し話すか」
二人は自転車の乗って大洗町ビーチに向かう、向かうその時もみどりが急に倒れてしまうのではないかと、注意深く見守りながら拓実は気を使っていた。
大洗町ビーチに着いた二人は自転車を適当なところに停めて置くと、テトラポットがある海辺の近くで話すことに決めた。
波が押したり引いたりして体に海水が時折かかるが、拓実とみどりはそんなことは気にもせず、海の景色に魅入られていた。
沈黙が暫く続き、ただ波の音だけが二人の静寂を破る。
拓実は思いっ切ってみどりに聞くことにした。
「肺癌だって言ってたけど、体の調子はどうなの」
「あまりよくないかな。でも病院にいるのもお金がかかるし、もうこれ以上良くなる見込みがないから帰ってきちゃた」
みどりは明るい表情で笑って答えてみせた。
逆にみどりの明るい返事に、拓実は自分がどれだけみどりのことを心配して、早く癌の進行がとまってくれないかと願っているからこそ、強い口調で言う。
「俺はみどりが少しでも長生きして欲しいと思っているのに、良くならないとかいうな」
拓実は泣いていた。
怒りなのか悲しみなのか分からない感情が拓実を感情的にさせる。
「拓実君。世の中にはどうしようもないことてあるの。後何ヶ月位しか私生きられないんだって、癌の進行が止まらなくレベル四て医者に言われた。もういいの人生どうでも」
諦めなのか少し狂ったような笑いをみせる。健康的な自分には分からない死を迎える側の心境はきっと苦しいのだろうと、拓実は口を慎むべきだとおもった。
「大丈夫だよ。俺がいるから大丈夫」
「そう。私には拓実君がいるから」
笑顔で話すみどりの顔を拓実はまっすぐに見ることができなかった。
目元に涙が零れ落ちる。拓実は涙を彼女の前で流さないと決めていたが、みどりの笑顔より一層悲壮感を煽る。
「ごめん。ちょとあんまり顔みれない」
「え、私なんか変かな」
「ごめん……」
みどりも拓実の泣いてる姿を見て涙を流す。
二人は暫く話すことが出来なかった。ただ波の音だけが騒がしく音を立てている。沈黙した空気が流れていた、すると急に霧が立ち込めてきたのである。
「ん、この霧。そうこの霧だ。俺が練習している時に出会った霧。なんか嫌な予感がする」
「前が霧で見えない。殆ど霧に包まれちゃった」
辺りは霧に囲まれてしまい、自分達の来た道すらも分からない位に、海もみえない。
ただ波打つ音だけがこの世にいるんだと確認させてくれる。
「あれはなに」
海の中から次々と人がテトラポットの上から這い上がってくる。
日本兵や若い女性それに少女やヤクザぽい男まで、みな何処か生気はなく青白い顔をしている。拓実はこの人達はこの世に生きている者達ではなく、あの世から来たうかばれない者達がやってきたのだと感じた。
すると、うかばれない者達はみどりの周りを囲んだ。
「なに、ないするの」
うかばれない者はみどりに抱き着き海の方向へひっぱる。その光景をみた拓実は無理矢理みどりに抱きついてる者達を離そうとするのだが、その者達の体は透けていて、掴もうとしても掴めない。
「拓実君助けて。拓実君」
「なんだこれ。クソクソ。離すことができない」
「あ、拓実君」
みどりはうかばれない者達と一緒に海に落ちてしまった。
拓実は彼女を救う為に海に入ろうとするのだが海が荒れているのと、霧でなにもみえないので、怖くなってなかなか海の中に飛び込めずにいた。
「クソ。クソ。度胸をだせ俺」
あの霧の中で海の怖さも知らずに泳いでた記憶が思い返されてしまい、さらに恐怖心が蘇がえてくる。
何処からともなく男の声が拓実の耳元に囁く。
「これでいいんだよ」
拓実は振り返る、しかしそこには誰もいない。一瞬で嘘のように霧が晴れ、拓実は一人テトラポットに囲まれた地面の上にたっていた。

© 2026 秋山優一 ( 2026年8月24日公開

作品集『あの夏、君は海えと消えた』第6話 (全8話)

読み終えたらレビューしてください

みんなの評価

0.0点(0件の評価)

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

  0
  0
  0
  0
  0
ログインするとレビュー感想をつけられるようになります。 ログインする

著者

「あの夏、君は海えと消えた (6)」をリストに追加

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 あなたのアンソロジーとして共有したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

"あの夏、君は海えと消えた (6)"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る