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生活の中の断片的な詩集Ⅴ

人間賛歌(第62話)

山雪翔太

嵐山を訪れた際に詠んだ短歌、俳句を含みます。

タグ: #散文詩 #自由詩

592文字

鈴木のアルトも、ベンツすら、かくして等しき渋滞なり

 

深きモネの内心を睡蓮と柳の光から知らんとす

 

ドラマー「雨」のソロを窓際から聴き惚れる

 

純粋な女児の柔らかき関西弁を片耳にして

同じ事想うか白秋よ

 

朝になってもアスファルトに残る酒の失敗はへばりつき離れず

 

土俵にて侍の如く強者制す若隆景は技能賞

 

綱取りを成して横綱大の里ザンバラ髪はいつであったか

 

錦札納めし仙人のずしんと重くも煙の如く軽き足取りを想う

 

各所で酒呑む老人はきっと酒呑童子なのだと気付く

 

洋書手に持つ女児見て手遅れの差を感じる時

 

自閉症の青年をただ独り優しく見つめるのは母に抱えられし幼な子哉

 

試合に負けた親友を抱き締めた時の燃ゆる身体と濡れし背中

 

右に咀嚼音垂れ流す学生。前は姿勢の悪い学生集団。鉄道は奏でる、しゃあしゃあ擦れる音を。この混沌に紐育の地下鉄を思い出す

 

またしても母と似る箇所見つけては遺伝の非道さ恨みたり

 

嫌いな母の性格に似ている感覚よ。

 

鉄道の車窓に広がりし大パノラマ

 

街の光に照らされて開発現場に巨大ショベルカー

 

鶯や荒地忍ばむ嵐山

 

苔生して閑けさなりや祇王寺の四人尼ども何想うらむ

 

千光寺梵鐘の音や悟り近く

© 2025 山雪翔太 ( 2025年6月7日公開

作品集『人間賛歌』第62話 (全69話)

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