ひととひとへ、繋ぐ糸は剥がれていきます
たくさんに撚り合わされたものも、どうせ必ず滅びるものです
ほら小難しい顔で/畏まってはどう致しましたか
決してもむず痒くはありませんか
いっそ振りほどいてしまえばいいのに、己を正当化するために折りたたんでは、祈り紡いでは、織ってもどうせ呪いにしか成りませんが。
祖の意図、今更カタチにしたところで朧気な月夜の酔狂な宵にしか現れぬと、真実などと光源いたしたところで輪郭だけが鮮明で、中身など腐りきったもの、等に風化し空っぽにしか過ぎませんが。
なにか、私として、ひとつ、置いてしまいたいのですね。
貴方様はそう比(たぐ)せられると――
その道に正しくはあるのだと、窮屈にも柵と置いた箱庭の瞼を開いておしまいに生られました。
伝え技(ぎ)いたわけでもないが、泥濘にも善いところがあるといいます。枝道に差し掛かり迷路に行きあたる。標識のない迂回路には浮き橋が罹るのだと、
「見な、振り返るだけのことだろう。」
けばけばしい紋様が頬にカラダに、遠げに則した花道が向こう岸へわたる獣道を覆っていた。飛び石にはちいさく枯山水には諄(くど)く、最果てには遅く旅の空と翔けるという。
笑人、カイナ 一糸 綴じ梟
[それは奇麗な泥でした。]
雛が孵るように物憂げに遠くを見詰める。
凌駕する左手はそえるだけで雪解けがはじまる、乱行に及ぶ志(こころざし)など、ひとつぬかし、不透明な聖典を紐解いた象徴的な水面が見世物のように、違いなく、正面からしとやかに振る舞われる。
特定の色だけを衣に感覚が風景を鈍らせる、浮腫は、形跡だけを開いて黄泉路を舌にする。
私情を縺れさせた情熱が篤く脚色され天壌を抑え、これまでの感情で或る不安や余裕を強引に風味と馴染ませ、果実の恩寵は楽団を抱え込む。濡羽に応(あた)る髪を押さえ鳥が舞頻り。乱流が弛緩した扉を軋ませ好意を漏った。触れあえば熱を膿み膨れ上がる、浮遊した瞬きがうたかたを呼び込み表記の規律が《くだん》の感覚を狂わせる。
一服。洩る、
欠片一つないヘドロの奥そこに、美しい器がその土壌において――永遠(とわ)。私から見れば何処からとも傷もなきものと栄える、ただただキミにこれが見えるのか皆目知らぬがホトケとしただ合掌と抱擁する。
これら暗澹も何処へと灯火せよと焚きつける導(しる)べを、どうか、歎息と致す。
「これは私と過去を紐解き、私の未来へと次(つ)ぐものだ。」
大層汚れた碗は破れものと拾い上げてやる。そのかたびらはやはり透いていた。このすがたが面とあることに気づく。それは意識せずとも口角を上げ、一つ手にとってその重みと淑やかさが陽として跳ね上げる。
黒白に目が細まり、ほぉと鳴く。己が息の根に驚き、随分おおきな箱庭に惑いこんでいたのだと気付かされる。もう淡彩の薄闇に梟と皿に或る。樹海の奥に隠れるように熨せられ。焚べた炎は限りあるときを大きく撓らせ、ときの香りを潜らせる。
調子を喪った指揮は風の便りよりヘタクソな仮称を相乗した
しかしこれといって変容もなく偏屈でもない
わたしたちはみなうつわにあり、うつわにかえるのだと。今微動だにせずとも翁、ただいまと築く。我の姿わかろうものなら、ひとつ、こしらえて見るといい、はなつ。
直に値するよう飛沫(しぶき)を見るような心地よさ。カンとして鈴の尾は高らかに振るい落とす。芯として願としてしつこくも遺る、これを骨格として肉付けをほどこすように、
まっすぐに線を引く。又はたおやかにしなだれる。
芦のようだとも簾にする。
この手で深々と覆ったのだ、君の瞳を、私のこの手で嘯いたようにして、隠国(こもりく)の業(ごう)のように好いただけの卑語(ひご)と営みでもあったと。
素手に夏のおわりの言うことは聴いてはいけない決まりが、よりたくさんの虫の音を火の色を際立たせ、儚いだけの夢の正夢が昂じて首を締め上げる。
こうして絞めれば湿るほどワタシに吸い付いては離れなくなる。
毒を含んでしまったのか、器は既に壊れていたのか。どうでもよかった、どこもかしこも醉がった。素薔薇しく酔狂な華に散らされたものだと、どうしても善がったのだ。
そうしてモゴモゴと口に含んでしまったのか自然と、笑む
己が前には軽く泥の器、個々に諦め、此処に縒り在りて、祈念にも賜り
茶室における侘び寂びは両手を広げれば壁にみるように稚拙で背丈もなく子供じみた庭園を端的に組み入れただけのものである。多分それだけを心地として場をしたためる、特別なものでもないのだが、やはり相応しい時と場所を聖櫃に納めている、
つもりなのであるから甚だ、破綻したものが其処に、つまり……重苦しいわけでもないが、よりやすいというわけでもない。
この状況がシドロモドロ。ただヒトを選別しているのだと、何気なくなにかもせいにして見るものだ。結びつかない事情を目配せしつつ、やはり器を、この魂が相応しい場所を探している、
ツチクレたちとの戯れに興ずる。
ままごとのようなもの、玩び、我に在り、素の器に問うが漆黒の星が遁走する、ただ笑人と有り底に揺蕩うは、単調な時代がひけらかす欠伸による。
これより悠(はる)か唐物の風呂敷を広げては少しの人と人とを触れさせては、記憶の隅に落とすなにかを、引っ掛けるような苦心と酸の泪を味あわせては、いっときの夢と笑(え)んで魅せるのだと、
……苑宴(そのうたげ)の夢はなにか、
何もなきところより此処に湧き滴るばかりの、それらすべてが幽隠偶感。
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