千切れたる翼のままで飛ぶという
狂気にあらずそれは寂寥
映る影われにあらざる気がしては
爪を立てたる冷たき鏡
夕映えの空に溶けゆく鳥の影
永遠と須臾の境を渡る
言葉とは光の粒子降り注ぐ
沈黙の海に沈みゆくもの
深呼吸する肺の中酸素満つ
シアノバクテリアの遺産なりけり
通勤の人波に揉まれ思いおり
群れる本能魚の時代
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ひそやかに面の裏の紅濡れて
夜の底なる鬼を抱きおり
さよならの輪郭だけが白くなる
冷蔵庫から卵をひとつ
冬の海へ石を投げれば沈むまで
母の記憶が波紋となりぬ
暗きより炎のごとく湧く言葉
鬼も仏も胸に棲みけり
りんご剥くその指先を濡らすのは
冷え冷えとしたわが身の情念
荒ぶるは月の光か水底の
砂金もろともすくいあげれば
『好きだよ』と言えば言うほど嘘くさく
なりゆく言葉の賞味期限
息をするたびに内側削られて
鉛筆の芯の様な冬空
母の忌や仏壇の前でふと思う
あの人今も煙草吸ってる?
愛される理由を欲して海に来た
足首までを塩が満たして
つめたいを正当化するセーターの
毛玉をむしる夕暮れの部屋
つかの間の命を燃やす蝶々の
羽音の如くお前は消えぬ
燃え殻の微熱を抱く灰皿の
底に静かに月は満ち足り
また明日ねと手を振る君の指先が
少し寒そう八月なのに
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