フィスト

破滅派21号「ノワール」応募作品

諏訪真

小説

5,897文字

この話の語り手と聞き手の名前が出てこないのは、筆者的にどうでもいいからだ

土産の持参とは、一応礼儀ってモンは知ってるようだな。前にも宇津木のとこから来た奴がいたが、最近のガキはマナーのイロハも知りゃしねえ。そいつがどうなったか、知りてえか? んなことはどうでもいいか。

俺が宇津木と会ったのは、あいつがまだ高校生の時で、俺は既に地下格のイベントを回していた。仮にGと言っておく。調べりゃ元関係者はいるだろうけど、あんまり嗅ぎ回らない方がお前の身のためだ。どんな興行かは所謂普通の地下格とは違うことくらいは分かるだろう? 大体お前がイメージしている通りだろうが、もっと趣味が悪い。ただ、実入りだけは素晴らしく良かった。俺はその少し前に別のところでヘマをやらかしたんでデカい手当てが必要だった。

丁度田舎の趣味の悪い名士の暇を潰すイベントの運営に回ったというわけだ。客を厳選し、運営に地主に病院長、警察署長まで巻き込んでるから、何をやろうとよっぽどヘマをしなければ外に漏れることはない。格闘技というより、大昔の剣奴みたいなものだ。俺はその手配とマッチアップを一手に担っていた。腕に覚えのある奴にはハイリスク、ハイリターンを提供し、脛に傷のある奴をスカウト、時には攫ってきてマッチアップする。勝者はガッポリ、客は大盛り上がりで、邪魔な奴は消える。誰にとっても嬉しいイベントだ。

 

宇津木が関わることになったのは、俺にも宇津木にも間の悪いことに、その日空きが出てしまってな。前座のカードのうち、片方が逃げやがった。とりあえず逃げた奴を追うのはスタッフに任せて、俺は急遽欠員を埋めなければならなかった。この時の人選は割と適当で良かった。前座だからな。ひとつ気にしなければならないのは、トラブルになりそうな奴は避けなければならない。俺は当時の地区の高校の名簿を入手し、この辺りにどんな奴がいるのかはざっと目を通していた。田舎なんでそんなに人がいるわけじゃないから大体通りを歩く制服姿の男子がどこの誰かは大体わかった。

丁度目の前を宇津木が通りがかった。父親を病気で亡くし、母子家庭で妹と三人暮らし。兄妹ともに広い交友関係があるわけでもなく、母親は入院中という、俺からしたら好条件だった。俺は宇津木を追跡し、人気のない道に入った時に定石通りに拉致した。

 

宇津木を目隠ししたまま、今回の試合会場まで連行した。恐怖に引きつって、まったく訳が分からないって顔してるが、拉致ってきた奴は大体こういう顔をする。そんで、そういう奴を取りあえず試合にぶち込む方法も既にマニュアルがあるほどだ。手っ取り早く試合とその結果を一部始終見せ、後は吐くまで殴る。

今回は前座のカードだから、試合前に逃げた奴がどうなるかのケジメを見せた。処刑法のガントレットって知っているか? 西部劇とかでもたまに見るけど、獲物を手に並んだ面々を通り抜けられれば晴れて自由。ただし生きて通り抜けられれば、の話だけどな。今回も例外なく肉塊になった成れの果てを、吊るし上げるところまで、宇津木の前で行った。取りあえず、逃げ場は無いと言うことだけは理解できたようだった。

 

だが、肝心の試合の方が正直失敗だった。今となっては意外だろうけど、当時の宇津木は全く使い物にならなかった。せめて虐殺でもされれば客を盛り上げられるが、相手も相手でチンピラに毛が生えた程度の軽量級の雑魚で、もう名前すら覚えていない。試合が始まった当初から宇津木は完全に逃げの態勢に入っているので、チンピラが大ぶりのパンチを空振りするたびにどんどんスタミナを浪費していく。五分も経つと完全に泥試合の有様だった。

この作品の続きは外部にて読むことができます。

2024年4月25日公開

© 2024 諏訪真

これはの応募作品です。
他の作品ともどもレビューお願いします。

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"フィスト"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る