匣沼 第一部 

脳彫別バジャアキ

小説

652文字

主人公の佐々木は、母親のことをM子と呼び、父親のことをヨシオさんと呼ぶ。M子は夜中まで働き、たまに来るヨシオさんの機嫌をとる。家事なんかしたことないくせに、ヨシオさんが来る時だけはスキヤキなんか作ったりする。
第二章では、M子と二人で行った旅行の思い出を書いている。

モコモコ

 

早朝。

つい、寒い、寒いと口に出す。

もう、やめて、せっかくの旅行なのに、気分がさがる。

そう言われて驚いた。

寒いの一言が人の気分を下げるとは。

今まで何気なく吐いていた言葉が、人を不幸にしていたとは。

しかし、難しい。

暑い、寒い、眠い、この三つを封印することは。

俺にとってはほぼ拷問。

だって、ほとんどの会話がこの三つで済んでいたんだもん。

つまんない俺。

そりゃ、つまんないよね、確かに。

 

そういえば洗ったよ、昔、シャツをこんな寒い日に。

全然泡立たない硬い石鹸で、ゴシゴシ擦った。

誰にも知られたくなくって。

弱い俺。

綺麗に洗いたいのに、どんなに洗っても、洗えた感じがしなかった。

 

そうだ、マスクをしよう。

寒さを凌げるかも。

うんうん、確かに。

あとはネックウォーマーとレッグウォーマーとモコモコのジャンパー。

いつもの感じ。

なかなかこの季節に、こんなフル装備な奴はいない。

春は皆、だいたい、洒落た装い。

あ、でも、まだいるわ、虫の腹にしか見えないダウンジャケットも。

 

さむ!を言いそうになって、慌てて飲み込む。

おっとあぶね、またいつもの癖。

しかし寒いが文句に聞こえるとはね。

新発見!

気をつけよう、社会生活うまくやる為。

とか言いながらも、いつも被りたくなるんだよフード。

寒くなくても被りたくなる。

まずは爆音ヘッドホン。

そしてフードを被り、鼻先を洗濯バサミで挟む。

マスクもしてるし、一気に一安心。

モコモコに包まれてる感じ。

おやすみ坊や、いい夢を。

 

2020.1.19発行

2024年1月22日公開

© 2024 脳彫別バジャアキ

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