超短編小説「猫角家の人々」その65

moonkaguya

小説

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超短編小説「猫角家の人々」その65
さて、K包囲網を構築して「黙らせる」筈が、どうなったか?

気が付いたら、包囲されていたのは「朝鮮悪」の方だった。オヲムと北朝鮮の秘密の関係を暴露されたばかりでなく、朝鮮悪の資金稼ぎ犯罪である、薬物密売と保険金殺人まで暴かれてしまった。しかも、無数の顔の見えない「敵」に包囲されている。Kの後援会のメンバーやブログの読者は、一部を除いてどこの誰だかわからないのだ。見えない敵ほど怖いものはない。

Kは、朝鮮悪が組織的に保険金殺人事業を繰り広げていると看破した。自分の親族を殺して大金を手にした朝鮮悪メンバーは、何もかもバレて死刑になるのではないかと恐れおののく。自暴自棄になって、シャブを打ちまくる。打ち過ぎて死にでもしたら、他のメンバーに動揺が広がる。とにかく、朝鮮悪の幹部が当事者を必死になだめる。

「大丈夫ですよ。安倍さんが総理の座にある限りは、我々には免罪符が与えられているのですよ。警察も暗黙の了解をしていて、皆さんを捕まえたりしませんから。」

「でも、いつまでも、今みたいに怯えていなくちゃいけないのなら、気がおかしくなる。いつまで….」いまどき流行らない旧式の、細身のインシュリン用注射器を左腕にさして、液体を静脈に送り込みながら、中年男が幹部に毒づく。今の時代は、インシュリン注射器も進化していて、インシュリン液体容器と一体型となっており、シャブの注射には使えないタイプが主流になっているのだ。これからは、シャブ用注射器も使いまわししなくてはならない。

「安部だって、森友問題で追い詰められて6月に辞めるかもしれないじゃないか。俺たちも、安部と一緒に廃棄処分かよ。それまでに都合よくオウム事件の本番でも起きるのかよ?」

「あのですね、オヲムの本番は必ず実行します。その時には、Kや周囲のウザイ奴らは全部、どさくさ紛れで消します。オウムの本番が終われば、我々の犯罪を追及するやつはもういませんよ。安心してください。それまでの辛抱ですから。」

幹部はそう言う。だが、幹部の本音は違う。確かにK達は消す算段だ。だが、リクルートしたシャブ中連中も消す。当たり前だ。朝鮮悪の秘密を知ったジャンキーなど生かしておいてはろくなことはない。これ以上、餌代も出したくない。派手に立ち回った中年女やシャブ中独身男が、真っ先に山中に埋められる。夏は腐敗が早い。

だが、オウム事件の本番は、実現しない。山中に埋められる予定の紳士淑女も、朝鮮悪組織の幹部も、保険金殺人で立派に極悪人の認定を受け、正々堂々と死刑となる栄誉に浴することができる。なぜ、そうなるのか?

オヲム事件の本番は、北朝鮮による朝鮮半島有事に連動したテロである。従って、金正恩が、対南軍事行動を起こしてくれない限り、オヲム事件の本番も起き得ないのだ。2017年5月の今、米国、中国、ロシアによる北朝鮮封じ込め作戦が進行している。金正恩は、新型のミサイルを発射するなど、挑発を続けているが、実は、酷く追い詰められている。一旦戦火が開かれれば、北は圧倒的に非力な現行戦力では、米軍と一日たりとも戦えない。結局は、金正恩は、平壌を無血開城して亡命するしか選択肢はないのではないか。2016年末のトランプ革命以降、北朝鮮をめぐる環境は一変したのだ。北朝鮮の真の後ろ盾、1%オリガーキは、一気に主導権を奪われたのだ。

こうなると、日本の朝鮮悪のような末端組織など、誰も面倒を見てはくれない。直ちに打ち捨てられる。朝鮮悪は、金正恩とともに消えていくのだ。(続く)

2023年8月27日公開

© 2023 moonkaguya

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