朝の蜘蛛

浅間のん子

小説

208文字

蜘蛛は益虫なので見つけても殺さずおきます。そっと部屋の端の方へ行ってもらいます。

自然と目が覚めた。台所に向かう。コンロにヤカンを置いて、換気扇をつける。僕はお湯が沸くまで窓辺でぼうっとすることにしている。

網戸にはいつしか蜘蛛が網を張っていた。獲物もろくにいないというのに、小さなその蜘蛛は糸の上を忙しなく行き来した。僕が手前のガラス窓を開ければ君が頑張って作る巣も台無しになってしまうというのに、そんなことも知らずに彼はせっせと作り続ける。

ヤカンが笛で僕を呼んでる。今朝はエスプレッソにしようか。

2023年5月11日公開

© 2023 浅間のん子

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