回鍋肉定食

浅間のん子

小説

157文字

ありがとう、中華料理屋。麻婆豆腐も油淋鶏も好きです。

時々右の上瞼が痙攣する。あんなに根を詰めるべきじゃなかった。目を閉じれば他の客の声が余計うるさく聞こえる。睫毛の隙間から見える隣の客は猿みたいに顔を赤らめている。回鍋肉定食が運ばれてきた。

マスクはどこにやったかな。上着のポケットに手を突っ込む。ない。ズボンのポケットに突っ込む。ない。ああ思い出した、胸ポケットだ。

2023年5月11日公開

© 2023 浅間のん子

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