ボイラー会議室。

巣居けけ

小説

2,527文字

粘膜のための企業の重要性の高い会議を盗聴し、さらなる界隈発展のために使用した一例……。

「金庫破りは誰がする?」女は会議室の面々を眺めて叫んだ。
「誰でも。あるいは、誰とでも……」
「それから弊社は、いつでも確かめることができる資料などの建設に当たりました。二日後、𠮟咤激励の軍隊の街に到達し、さらにそこから西へ二メートル、ついに水源の確保とプリントの掃除に成功しました……」

会議室の中央で、ナビゲーターの女はマイクを片手に饒舌に喋っている。車の駆動音のようなエアコンにも負けない声量だった。

女を囲んでいる机に尻を置いている胡坐かきの男たちは、自分の露出した陰茎を擦っている。膨張した竿からは透明な粘液が溢れ出ており、右から順に精液を放射した男たちは、頬を赤らめながら女の腰のくぼみに目をやっていた。
「街の操縦はいつでも寛容でした。さらに、我々の抑止力となっていた河川敷の女子高校生たちが、舗装された車道の中心で死体となっていました」
「犯すべきだっ!」

男の一人、山本が立ち上がってコンビニ弁当を食べ始めた。すっかり萎れた陰茎はそのままに、ズボンのチャクが垂れ下がって鉄の風味を醸し出していた。
「まあそれも一つの手段ですが、それよりも我々は、蟻の掃除と歯列の基盤を改める箇所について会議をはじめました」
「そんなところに立つなよ。紛らわしい」山本は空になった栗色のプラスチック・ボードを投げ捨てて、まだチャーハンの香りが残っている口を開く。「そんなに死体としたいなら、さっさと特殊清掃員にでもなればいい」
「まてよ」それは山本の隣で二度目の射精を楽しんでいた佐藤の声だった。佐藤は立ち上がり、山本と同様にコンビニエンス・弁当を取り出して蓋を開いた。

会議室に担々麵の香りが立ち込めた。
「これからの時代は、死体だ……」

佐藤が素手で担々麵を啜り始めた。
「ふざけるなよっ!」

山本が右腕を振り上げ、佐藤の頬に叩きつけた。パシン、と音が響き、担々麵が佐藤の腕から離れて女に振りかかった。
「おやおや。これでは鍵のあり方と、さらなる発展に枯れ木しか望めませんね……」

女はウルフカットの髪に粘り付いた担々麵の黄色い麺をつまんで食べた。すると頭頂部がほんのりと赤くなった。それは頭頂部の沸騰だった。頭蓋の中では脳が煮え立っているはずだった。肌を通して外部に出力される熱は担々麵の粘り気や香りをかき消した。
「これは神秘だ!」
「いいや熱量だっ!」

山本が叫んで佐藤の後頭部を叩いた。

女の身体は白い煙を放出して担々麵をかき消した。数秒で桃色のスーツは元通りになった。

「まるでマッサージ技師ですね。それとも、理解のあるテントウムシや、破裂したゴキブリの発達障害でしょうか?」

女は右腕を天井に伸ばして叫んでいる。その声は物質となって山本の右頬に突き刺さって入り込んで行った。山本の身体に染み込んでいく女の声は何倍にも反響し、山本の身体を震わせた。
「通りで昔の紙芝居だらけだと思ったよ……。消耗品の兵士なんて話にならないし、坂道の中腹辺りで懐中電灯をつけてから尻を落下させて演歌を所望する社長さ……」

山本はそのまま机の上で三転倒立を発揮した。すると会議室の第五出入り口が開かれ、外から猪の頭の黄色いワンピースを着た男が入室してきた。男は筋骨隆々な体躯で、両肩が激しく盛り上がっていた。
「なんだね君はっ!」

佐藤が机から飛び降りながら猪の男に接近した。スーツの懐から1911を引っ張り出し、猪の眉間に狙いを定めた。
「胃の四肢ってな」
「なんだね君はっ!」

すると女が会議室西のスクリーンに近寄った。佐藤は銃口を自分の口に当てて舌で先端を舐め始めた。
「まあ、幼児退行している佐藤係長は置いておいて、次、もしも人糞を擦り付けられた時の対処法を」
「はいっ!」山本が机の上で足を叩いた。ガタン、と音が鳴り机が震えた。「こちらから発信させてもらいますっ!」
「ではどうぞ……」
「申請する力士と胃液と内容物による発展が、先ほどのような立体的な果実による変動を呼び起こしますっ! 記者の指から放射する人糞の香りの万年筆の欠片が空中に浮遊し、店長と名乗る男のような幼児の対抗に階段を突きつけますっ!」

崩壊していく企業の果て……。そのまま拳銃の全てを飲み込んで猪の鍋を食らう佐藤……。中断されたコンビニエンスストアのアルバイト精神……。砂漠に放り出された山本……。
「金庫破りは誰がする?」女が指揮棒を口から放出して問い始めた。

音楽の立地と数学的な模様の畑が五センチ……。台所の肌色と人間的な肌色の違い……。相槌の木星と会議室内に浮かんでいるロングコートの男……。女が手持ちのコートと指揮棒を口に収納して振りかかる雨の香りに鼻を伸ばしている。「それから、どうして洞窟のミネラルウォーターを飲んでいるのでしょうか? 鼻梁に絡みついた野生的な猪が大量に本社を襲撃し手からでは遅いのですよ」

すると会議委員会の連中が一斉に、第五出入り口に立っている猪を見上げた。すぐ横で佐藤が子宮内部のような香りをまき散らしながら喘いでいる……。
「君、侵略者なのか?」
「侵略? おれは野生的な動物だぜ?」
「ならば証拠を見せなさいっ!」

すると猪は腹を突き出して踏ん張り始めた。すると尻の穴が拡張されていき、すぐに透明な粘液が噴き出した。
「これはっ!」
「待ってくれ……」山本が机から降り、猪の尻に向かった。そして尻に手を当て、尻から吹き出す粘液を取った。濡れた素手を自分の鼻に持っていくと、スンスンと音を立てて嗅いだ。
「これは……」
「なんですか? 尿ですか? 尿」女がなぜか興奮気味に訊ねた。
「うーん……」山本は素手を鼻から外した。「これは、ミネラルウォーター……」

証明された力学がロープを切り落として穴に沈んでいく……。ミネラルウォーターの香りを選別してから脳の奥底に眠る赤子の記憶を呼び起こす……。「ミネラルウォーター……」

常に動き出してからタイヤの底力を信じている文学者……。辣腕のさ中に自殺者をせき止めている面接の指揮官。「それは私が勤めます……」信じ込んでいる宗教の拠点と圧巻の建前。消滅する文学と黒板の裏に潜むシスター。
「では議題は?」
「はは。まさか……」

そして全員が一斉に机から落下し、一つの生命体として指名される。「限りなくゼロに近い音」

2023年4月4日公開

© 2023 巣居けけ

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