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1-2. 《碧葉国》の物語。
1-2-1. 災厄の巨平石。
《神殺し》たちが数を増やし、
姿を増やし、
海辺の磯浜から山上の岩漠にまで、
棲む領域を広げに広げたある時。
天空を斜めに切り裂き、燃えさかる《巨平石》が墜ちてきた。
巨大なる平石は燃えさかりながら斜めに墜ちて、
荒れ狂う北の海面に当たり、
墜ちた勢いのまま二度、三度と、
斜めに飛びあがってはまた落ちて、
跳ねて、進んだ。
《大いなる壁のごとき大波》が起こり、
浜辺ちかくに棲息していた《神殺し》たちと
その眷属とその敵とを
全て一息に飲み干した。
飛び跳ねつくした平石は勢いのまま、
大陸の岸辺を飛び越え、
大岩壁に当たって止まり、
大いなる熱を発して、
大地をことごとく熔かした。
その後へ幾度も幾度も、
大波が襲い掛かった。
1-2-2. 大寒冷。
波は久しく折り重なり荒れ狂い、
空は激しく昏く燃えて荒れ狂い、
冷たき酷寒と狂風の時代が続き、
《神殺し》たちは溺れ、凍え、餓え、
冷えて動かなくなり、
次々にほとんど死んだ。
生き残る者は互いにあい喰み、
ただ強い者だけが残った。
ようやくに天が開き陽光が戻った時、
《神殺し》たちのうちには、雌や子どもが全く残らなかった。
そしてようよう地が冷め乾き、
埋もれた平石の周りが冷えた時。
そこから出て来た者たちには、
なにゆえか、
雄の成獣が全くいなかった。
1-2-3. 《胎卵》の一族。
大いなる燃える平石を《ほしのふね》と呼ぶ
美しい雌たちは、
《神殺し》たちと取引をした。
交わって、卵を産もう。
産んだ卵を温めて、孵そう。
無事に生まれた2つまでは《神殺し》に与えよう。
そして3つから後は、われら《ほしのふね》の跡継ぎに貰う。
と…。
墜ちてきた雌たちは
《神殺し》の大いなる雄らと交わり、
その不可思議な胎の袋で
大いなる一つの卵を護り、孵した。
《神殺し》たちは
奇異なる姿の賢く美しい雌たちと
喜んで交わり、
産み育ての母から知恵を授けられた
我が仔を一族に得て、
更に喜び、
やがて再び、ますますに増えて栄えた。
《ほしのふね》のまわりに移り棲んだ雌たちの子孫らも、
やがて地に増え、広がり続けた。
1-2-4. 《碧葉の樹》の国。
《ほしのふね》の子孫たちは雄も雌も産まれてやがて地に増え、
《ほしのふね》の落ちた周りには大いなる異種の樹林が育った。
子孫らはその円環の森を《碧葉の巨樹の森》と呼び、
自らの領土を《碧葉国》と号した。
1-2-5. 王国の乱立。
《神殺し》たちはそれまで
《 国 》という知恵がなかった。
一族の封土に壁や印を築き、
その土地に名をつける知恵が、
瞬く間に流行り、
次々に《 国 》が開かれた。
◇
やがてまたゆるゆると大地と気候が動き、
冷えて冷えて棲みづらくなった土地から、
《胎から仔を産む者たち》が、
新たに移動してきた。
《国》の数は増え、
《民》の種類も増え、
それぞれに合い争い、
強き者らが、栄えた。
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