夕暮れに帰路。

巣居けけ

小説

1,075文字

街の中で蠢いている多様性の硬い透明で不確かな角ばった山羊たち。

道路を中断して投てきの動きを人体に染み込ませる。するとスポンジの音が響き、教室に新しい食器棚が導入されることが決定して集団が解散になる。さらに特殊な紫色のカードデッキを持ち出し、レジ係に二倍の金額を要求してから幽霊の存在を証明するために山奥の木造の電光掲示板に向かう。おれたちによる一級のフラダンスが、ざわめいている音の集合体を演出して印刷器具を出品する。

武器商人の発掘に骨髄の達人を呼び出す。携帯電話のアンテナでジャングルジムを作る。「おれたちが砂漠に九十度以上の坂を作る」宣言と調味料のスパイスが職人たちの鼻孔に嘶いてから脳を改造していく。医学を超えた手術で執刀を否定し、消毒液を子宮内部に満たす。「羊水とレモン汁を入れ替えることができれば、妊婦にダメージを与えることができるかもしれないと考えます」カルテを片手に挙手をする医学生が三人で新しいカルチャーを作り、大学二階に増設を提案する。

おれは三回目の診察の帰りにコンビニに寄り、アイスクリームと手ごろな煙草を購入して店員を口説く。すると横からやってきた山羊頭の人間が自分のスーツを広げ、内側に貼り付けられているキャンディを手渡してくれる。
「これはどんなときに舐めればいいんだ?」

山羊の頭部のような形のキャンディを握って溶かしながら訊ねる。
「ええと。君がどうしても我慢をしたくなった時!」

そして終息していく波の立ち上りの企業のような冠に糖分を唾液として流して耳介を演出する。おれたちは職員になったつもりで街の適当なアパートのドアを叩く。「失礼! 検問ですよ」

中級の漢字検定に合格した一般的な山羊は、棚の二番目に置いてかれている人形と二時間ほど喋ることができる。そしてこの間に作られたカレーライスは全国のカフェテリアに配属され、電撃のような辛さに食した全ての人間と山羊の胃袋の数が二倍になる。「ぼくはもう大食いはかんべんだよ……」

透明な硝子コップの中に潜んでいる水を飲み干し、体の中で分裂とめり込みを繰り返している胃袋に敬礼を下す。そして肛門にちょうどよくはまっている地味なタイムカプセルにも涙を流す。研究職の人間には小銭を扱う指が存在していない。肉を食らう洞窟の殺風景な板の巨人の右腕で蟻の巣を作って生誕祭を祝う。

夕暮れがおれの背中に迫ってから通り過ぎていく。おれは足を止め、振り返ると共に夕暮れの顔を確かめる。すると近場の惑星から伸びた腕がおれの身体を掴み、持ち上げてから灼熱のキッスをする。おれは騒ぐこともなく惑星の宇宙のような無気力でどこまでも連続で続く空気感を楽しんでから再度帰路に戻った。

2022年11月27日公開

© 2022 巣居けけ

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