背の高い女子高生が歩道で、ただ独りの宝石のような風のキャンプを開始した。彼女は火炎を甦らせる手順で麺類を焼き切り、自前のテントの色を白に決定する。さらに夕焼けの恩恵で湯を沸かし、痣だらけの裸体を完璧に円形な月に晒しながら、街で一番の極楽に肩まで浸かる。
「お嬢さん。こんな歩道でキャンピングですか?」灰色背広の初老が話を吹きかけてくる。
湯舟から出た女子高生は裸体をタオルで磨きながら、通常下着を身に付けながら答える。
「私はどこにでも野生をもたらすことができるの」そして女子高生は悪党がするような口角を吊り上げた笑みを初老に向ける……。
「お嬢さん、それはいけないよ。あんたはまだ若い。そして肌が良い。あんたみたいなのが、そんな歯列をむき出しにした笑みをしてはいけないよ」
初老も同様の笑みをしてみせる。しかし彼の歯列は黄ばんでいたため、その笑みは正真正銘のバナナに見えた。
「あんたって、どこまでもバナナな男なのね! もしかして、煙草と珈琲を嗜むのかしら」
「なっ……。どうして、君はどうしてそれを知っているんだね」初老は笑みをしまい込み、ガクッと前方に倒れて四つん這いになった。筋力を喪失し、身体の直立を維持することができなくなったようだった。「私の妻も知らない、私も知らない、私だけの嗜みを……」
初老が被っていた、灰色のハットがはらりと落ちた。初老は歩道の灰色の地面に涙を垂らした。
女子高生は泣き続ける初老を視て、電撃のようなひらめきに撃たれていた。セーラー服のスカートだけを履くと、素早く四つん這いの初老に近づき、上を向いている背中に腰を下ろした。
「これは良い椅子になるわね……。あんたは椅子だよ、良いね?」
女子高生はいまだ泣き続けている初老の、すっかりしわくちゃになっている頬をペチンとやった。
「はいぃぃ……」
満月の中。初老の、叱られた男子小学生のようなか細い声が響いて消えた。
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