陰る表情。湿る眼。赤裸々を知らない女児が、ココアを使って滑り台を汚し始めた。天候のような青色に、四肢を持たない道化師が踊りを教えていた。尊ぶべき踊りだった。暗闇を照らすべき踊りだった。彼は、化粧が溶けている道化だった。いつでも涙の味を舌の裏に隠していた。駄菓子で全ての挫折を誤魔化していた。
背を監視していた青い風流の若い人は、その踊りで二つの詩を産み落とした。
全ての医学の中の監視者は、最後の朝日の中で、希死念慮を抱いた。
今、あなたの肛門に居ます。
今、あなたの前立腺に居ます。
今、あなたの精巣に居ます。
今、あなたの外尿道口に居ます。
あぁ、銀色の尿として、すっかり出ちゃったよ。
児童を愛する道化師は、舌の上で全ての化粧の薄い味を感じていた。透明な涙が全てを潤し、錆びている門をくぐる女児の背に射精を行う妄想を続けた。
連続して発生する来週への移行に伴い、石鹸を噛みしめている爬虫類の解剖が急がれた。分け目を発光させることに適した砂漠では、新しいテントの中で浮遊の黄色の実験が行われていた。医学専用のメスにかかれば、全ての書物が食物連鎖の中での出来事なので、バスケットゴール付近に漂う季節は破裂を経験していた。二秒ほどの惑星衝突の内部構造を描くと、必ず書道の爬虫類がノコギリを再現した声を出す。計算器具に取り付けた麻酔の針が注射器を模して、全てのパーソナルコンピュータに赤飯の欠片を挿入させていた。命令のような落雷による避雷針の総額が決定すると、科学者は焦りの浮かぶ顔で、秋刀魚へと帰っていく。会議のような生産管理を怠れば、どこにでも眼球が飛んで行く蛙によって、住処の八割が輝く球体へと変化してしまう。同時刻に行われる溶解と、待つことを知らない宇宙服が邂逅し、街中の手術で二つの年越しを続けていた。見守られている自覚を飲み込んだ学級員長が制服のままでの前転を続け、ありとあらゆる臓物に歓喜を吹かせていた。苦味のある墨汁の中で生きる電信柱が舌を外し、氷のような母親にメスを入れた。
邂逅が医学の隙間に迫っていた。風船のような怒気を舐め、棘を貼り付けたメスで電撃を流していた。
光沢の中のマイマイカブリの大群が、列車の下敷きとして室内に滑り込んだ。街角に積もる雪の小さな山を、高尚な墓標として考えるスポーツ大会と、歯車を唾液で凍らせることのできる科学好きの女児によって、山羊のみの牧場が高層ビルへと成長した。彼女は必ず、底が桃色の靴を履く。そしてミミズを食らっている。彼女は新天地でのカフェテリア巡りでミミズのココアを嗜む。彼女にとってのマイマイカブリとは母親であり、祖母であり、教育の末に貫くべき敵でもあった。
彼女は家庭を持たなかった。彼女はいつでも、マンホールの中の軋轢を気にしていた。しかし彼女はシャツを知らなかった。彼女は女児としての役目を全うできなかった。彼女は錠剤の中の医学を知ることができなかった。
「彼女は石鹸のようなぬめりを禁止条例に浸していたんです!」
「席巻?」
「石鹸」
観測者たちの中で、彼女の脳細胞を見つめた者は一人も居なかった。
荒唐無稽を筆で創り、老いた胎児で酒を吸いつくすこともあった。詩人の街角で黄緑色のスライムが落下するふりをしていた。
投薬を終えた女児は、錆びの多い独房に帰っていく……。彼女のすっかり丸まった背に、無数のハエのような看守が射精の妄想を擦り付けていた。
学級では、いつでも風船が浮いていた……。筆を握ることしかできない多眼どもが、窓越しにお目当ての女児の分け目を睨んでいた……。女児は夢の中ですら投薬を強いられていた。薄い白い毛布をしゃぶる女児は、自身の抜けていく頭髪に恐怖を覚えていた。
女児は瘡蓋で覆われた分厚い瞼を閉じた。冷たい独房の床が、彼女の頬を癒していた。
「静粛に! 静粛にっ!」
黒い背広の長身教師が叫ぶと、それぞれが思い思いに叫び散らしていた児童たちは一斉に口を閉じ、道楽の顔を無表情へと変え、素早く各自の席へ戻っていった。児童たちは無音を貫いていた。それは椅子を引く音すら鳴らさない丁寧で濃厚な静寂だった。着席をした児童たちは両手を膝の上に置き、背筋をピンと伸ばし、表情の無い顔は前方を向いていた。児童たちの目線は教師に集中しているわけではなく、ただ、まっすぐだった。またそんな児童たちの瞳の中に感情の光は無かった。それは心ここにあらずの真骨頂であり、瞳の中には虚無が漂っているだけだった。
「では、授業を始めるっ!」
黒い背広の長身教師が再び叫び、振り返ると同時にチョークで黒板に文字を書いていった。硬い黒板を叩く音が響くと同時に、児童がノートや教科書をめくる音が教室内に漂い始めた。
三年ほど人間らしい生活を送ったオニダルマオコゼの所有しているライフルは、まだ熱を持っていた。それは窯から取り出したばかりのピザのような熱だった。夏の蕎麦を嫌う彼は、デオキシリボ核酸が多く埋まっている潮干狩りについてを調べていた。マネージャーのような顔をする案山子を、機関銃のような村の中心で目撃し、腕の無い農作業の凄惨さを連想していた。
雲の形に憧れた虫網の少年が、向かいの女児の背中に酷暑を擦り付けるために走り出した。電信柱すらも悲鳴を上げる灼熱の下で、階級を知らない駄菓子屋主人が焼肉を始めた。歪んでいる坂道の頂点に、粘着質に変わり果てた女児と少年の虫網になった片手が浮いていた。
そもそも弟は、新作のカードホルダーを持っていなかった。篝を食らう月食の団子に、置き去りにされた拳を覆う皮の紫色が、むき出しの牙を研いでいた。上半身の黒い波紋に水が通り、視聴覚を極めた有効期限に黄身が落ちていた。惑星を模倣した駅員と、カイロを好まない天候操作が路線図を舐めていた。自転車を転がす獣が舞踏会を破壊し、電気がワイン・マニアの全身を伝っていた。目元が黒いマスクになっているワイン・マニアの二つに裂かれた拳が、夕焼けの粘膜で建物を破壊していた。
「タスマニアデビルだっ!」
「タスマニアデビル? なんだ、お前の宗教の神か、何かか? お前の下半身はれっきとしたスパゲッティだったのか?」
「いいやおれは正真正銘のレトロ・パスタ。マグカップの中に居る女児に遠慮のない放尿。いつでも漂うことができる風船の中の衝動。それに、違う! やつは森の掃除をするんだ! 死肉でも骨でも食らうんだ!」
九回の嘔吐を終えた信者は、綿で作られた光源が落下する瞬間を眼に宿すことができなかった。
「へへ。ウチはホワイト企業といっても、白濁の企業だからなぁ」
「なんとも!」
新入社員に陰茎を向ける課長が、二日後には淫らなマネキンとして街を徘徊し始めている……。水面の炎天下がうちわを要求し、音楽の円盤で屋根を観察し始めている……。
静脈に音が生えている……。女性社員が使用した湯舟の中には、雄の秋刀魚の死骸が必ず二匹は入っている……。錠剤が弛緩し、市販の注射器で一撃の盛りを潰すことがある……。まるで騒音のような二日を、ベッドの奥底の冷却で過ごすしている……。錠剤に熱が浮いている……。
まるで、球体のようだった。まるで、焼酎を焼いているような心地だった。
血液が汗に変化していた。女児が全ての雄の血液を舐めとった。そして自身を重厚な鉄の塊だと言い張った。
新作のコピー機で重機を押し殺している……。機械の受付で錠剤を弾いている……。紙幣が、甘い香りの漂うだけの血管になっている……。全ての静脈で新聞紙が共同作業を続けている……。
姉のような影の肉の中で、笑い声の落石が配達の代理を続けていた。三日月の色を議論した頭たちが、高速の回転でピザを焼き始めた。
「なあ、おれたちが警備しているこの飲食店って、どうして黄色の看板を掲げてるんだ?」
「それの何がおかしい? おれたちはサンタクロースなんかじゃないんだぜ? いつでも宗教を笑っているんだぜ?」
「だってよ。孤児よりも息が長い悪霊なんだぜ? 未来が視えない? 違うだろ? おれたちはでくの坊だ。おれたちはいつでも教師気取りだ」
「おいおい、それは卑下だぜ。おれたちは高尚だ。少なくとも、ここを警備しているうちはな」
「カツなんかじゃねえよ……。何が嬉しくて油まみれになってるんだ?」
「遠近法だからな。それに、おれたちが揚げ物だって? まさか。花火でも視たのか? お前」
「どこもむいちゃいねえよ……。一体お前は何を流すんだ?」
高台を得ている商人が、解説を続ける修行の中で瓦割りをひったくった。白い背景の中に黒色の文字を見つけ、新人の雀頭を舐めているサングラスに刀を添えた。全ての商人が詩を読み、二倍の時間間隔の中で泳いでいた。
マニアを欺くためには五つの紙幣が必要だった。そして五つの紙幣とは、どこでも飛ぶことができる気球の中にしまわれていることがほとんどだった。兄弟の中の手榴弾には火薬が無かった。アスファルトを知らない工事職員が、飛行船の中で開花していた。
シリアルキラーを解雇するには二年の出産が必要だった。そして八つの出産とは、どこでも沈むことができる昆虫の中で発生することがほとんどだった。焼酎の外の堕胎手術には海水が無かった。トビズムカデを知らない高級園児が、銃剣の中で消化していた。
マラカスだらけの国で筆を執ると、大きな縄に縛られた。全裸の男が二重となって、迫ってきていた。光沢の中に居る全裸の山羊人間が、自身の肌らしい感触の中でかつ丼を注文していた。
まるで太陽のような白い壁と、フォークリフトの二頭身が会話を試みていた。硝子の向こう側の研究員どもが、紙幣の降り注ぐ街でワイン・マニアを鹵獲していた。
チョークの補充で両手を喪失した黄色いステッカーが、ドットの海の中でマジシャンを呑んでいた。数字を喪失した科学研究所の屋上で、孤児気取りの魔女が少女のマジシャンを呑んでいた。
烈々とフォークリフトを動かす力士。彼は大量の筋肉で鍋を作った経験があった。そして一度のしわぶきで、アフロの赤い探偵を白濁に染めたことがあった。
彼は毎朝の弁当生成を逆立ちでのぞむ。
彼の腹のシャベルの入れ墨が、深夜の二時間で蛸へと成長する……。外套の事を想う力士の上司が、フォークリフトの最初の犠牲者のようなミミズに成り下がる……。昆虫博士が気球の内部に侵入し、飛ぶような足取りで現場へと踏み入れる……。教会の中でのゴキブリに限り、神々のような躾を受けることができる……。
"パーティー学級日誌、その後。"へのコメント 0件