昔々ある所に、ハンガーラックと室内用の物干しざお、突っ張り棒を使っている人間がおりました。
その人間はハンガーラックに衣服、べべをぶら下げて、突っ張り棒に上着、外着をぶら下げて暮らしておりました。その生活は居心地がよく、ハンガーラックはドアの前に置いてあるので、ドアの開閉にも影響を及ぼしていたのですが、ドアが全開にならない状態になっていたのですが、人間はそれも味だと考えていました。
「まあ、これもまた良しだよなあ」
昔の城は攻めずらい形状であったそうだしなあ。攻めてきても入りずらい。攻めずらい。そういうものだった。だから、これも一緒だよ。ドアが全開にならない。これもそういう事だよな。
という思考でおりました。
一体全体誰が攻めてくるというのでしょうか。人間は集合住宅に暮らしていました。年に何回か火災報知機の点検で業者が家に来るのでした。そういう時もドアは全開になりません。
「すいません。よろしくお願いします」
と言って半開きのドアに業者を、長い棒。先端にカップのついた長い棒を持った業者を招き入れるのでした。
ハンガーラックにはギチギチにべべがぶら下がっておりました。室内用の物干しざお、突っ張り棒にもギチギチに上着、外着がぶら下がっておりました。ハンガーラックの上に室内用の物干しざお、突っ張り棒を設置しておりました。ドアの枠組みに出っ張りがあって突っ張り棒を引っかけるのにちょうどよかったのです。
ある日の事。青森県沖で震度六を観測する地震が発生しました。関東圏においても長時間揺れ、その人間は、ああ、揺れが長いなあと思いました。年末実家、北東北に帰省するけど大丈夫か。そんな事を考えました。
その時でした。
突っ張り棒が、ドアの枠組みにひっかけてあった突っ張り棒が落下したのです。突っ張り棒の落下自体は珍しいものではありません。季節の変わり目、暑くなったり、寒くなったりする度に落ちてきます。十二月に入って寒くなって、それで冬用の上着、ユニクロのもこもこしたやつを吊るすようになったのです。それで突っ張り棒がいつも以上にしなっていたのでしょう。
突っ張り棒が落ちてきて、それがハンガーラックにぶつかって、ハンガーラックが壊れたのです。いつもギチギチにべべをぶら下げていたハンガーラックはとっくの昔に、限界を迎えていたのでしょう。
青森県沖で震度六の地震が発生して、その揺れで突っ張り棒が落ちてきて、そしてピタゴラスイッチ的にそれが下に設置していたハンガーラックにぶつかってギチギチにべべをぶら下げていたハンガーラックはまるで、キル・ビルVol.2のビルの最後の様に、少しばかり画面の向こう側に歩いた後に、なんかあんな感じで、壊れたのでした。
それを見て人間は慌てました。
「あばばば、あばばばばばば」
とても慌てました。慌てふためきました。突っ張り棒が落ちてきてそれが頭に直撃した時ですら、そんなに慌てませんでした。東日本大震災の時突っ張り棒から何から、棚の本から何から全部落ちた時のレベルの慌てでした。
もうどうしたらいいんだろう。人間は思いました。今までも何度かハンガーラックの不調は目にしていました。ハンガーラックもまた、突っ張り棒と同じく、季節によって、暑くなったり寒くなったりする度に、その形状を微妙に変えていたのです。ドアの開閉が、今日は開くなあ。今日はちょっと開かないなあ。という感じで、突っ張り棒と同じく日々コンディションが微妙に異なっていました。そしてもうずっと長い間不調だったのです。
それを人間は無視してたのでした。
無視というと聞こえが悪いかもしれません。しかし不調と言えば不調だったのです。でもそれが好調と言えば好調にも思えたのでした。
「今日はちょっとご機嫌斜めだねえ」
「今日はちょっと開きやすいねえ。いいねえ」
そんな風な、人間はハンガーラックと長らくそういう関係であったのです。それが青森県沖の地震と突っ張り棒の落下によって、完全に壊れたのでした。パイプがありえない所から飛び出して、刺し貫かれたかのようになったのでした。
「あばばば、あばばばばばばば」
ハンガーラックが無くては困ります。大変に困ります。なにせそこにべべをギチギチになるまで、圧縮されてるのではないかと、布団圧縮機かと、プレス機かと、そういう御煎餅かと、Amazonとかで売ってる御煎餅メーカーかと、プレス御煎餅メーカーかと、そんな感じになるまでべべをぶら下げていたのです。
ハンガーラックが無くては困ります。人間はすぐにAmazonに飛びました。入林しました。そして色々と見て回り、懐事情と相談しながら、検討したのでした。
年末には実家に帰省します。帰省はタダではできません。年末は値引きが出来たらラッキー。定価で当たり前です。
「こんな時にいいいいい」
人間は思いました。しかし人間はハンガーラックにも突っ張り棒にもあたり散らかしたり、キレ散らかしたりはしませんでした。
「きっとぶら下げ過ぎなんだろうな」
という自覚があったからです。言葉にはしなかったけども、態度にも表さなかったけども。でも、きっとぶら下げ過ぎなんだろうなと、人間は前々から思っていたのでした。つまり甘えていたのでした。突っ張り棒と、ハンガーラックに。
「にゃんにゃんにゃんにゃ~ん」
っていう感じで。ずっと、長い間、人間はハンガーラックと突っ張り棒に甘えていたのでした。
Amazonに入林した結果、パール金属のハンガーラックを購入することにしました。
「パル金ってハンガーラックも作っているんだ」
決め手はパール金属でした。昔、今もありますが、以前、パール金属の圧力鍋をAmazonで買っていたのです。人間が料理とかをよくしていた頃に。昔々。
だからパール金属にしました。パール金属のハンガーラック。
パールハンガー
パイルバンカー
パールハーバー
パパパ、パパパパ、パールハンガー
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