超短編小説「猫角家の人々」その19

moonkaguya

エセー

1,084文字

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超短編小説「猫角家の人々」その19
介護ビジネスの不正請求やら、自動車保険詐欺やらであぶく銭を手に入れてきた小悪人は、生業には戻れなくなる。真面目にコツコツと介護事業をやるという原点など、どこかに置き忘れてしまっている。FXで開けた大穴を糊塗しようと、日々、金策に走り回る。億近い損失を出したなどと、姉の克子にばれたら大騒ぎになる、罵倒されると恐れる蜜子。

ヤクザな街金にも手を出す。こうなってくると、起死回生、大逆転のホームランを打たなければ、事態を打開できない。方々から借りた金で、またまた、FXの相場を張る。レバレッジ取引で張れるだけ最大限張る。こういう時に限って、損をする。大きく張るので、損失も大きい。傷口が広がるだけの結果となる。

この世の中には、詐欺行為でしか生きられない人種が存在する。詐欺で容易に金儲けができると知った輩は、目の前に詐欺のネタが転がっていると、どうしても詐欺行為を働かないと我慢できない衝動に駆られる。金額の多寡は関わりがない。少額でも騙せると分かっているのに騙さないのは「義務違反」のように感じてしまうのだ。結果、人生の主たるテーマが詐欺行為となってしまうのだ。日々、朝から晩まで、人を騙すことしか考えなくなる。62歳の婆さんが、38歳を偽装して、資産家から7億円を集めた事件が注目を浴びている。詐欺しかできない病気なのである。

蜜子は、FXは諦めた。詐欺商売で一発逆転を狙うしかない。痴呆の婆さんをぶっ殺して財産を没収し、保険金を掛けて金に換えるしかない。では、どうやって?やっぱり、成年後見人制度を悪用するしかない。ああ、時間がない。すぐにやらないと。それにしても、どうやって、カモを見つけるのか?カモを見つけるのが先決じゃないのか?

成年後見人制度の黎明期、後見人となったのは、親族が多かった。司法書士や弁護士も後見人となったが。蜜子は残念ながら、そのどれにも該当しない。だが、一部の「介護士」が後見人として認められるケースは少ないがあったのだ。当時の「介護士」の資格審査は、かなりいい加減であり、蜜子もそれほど困難なく取得することができた。

カモの老人を見つけ、うまく立ち回って、成年後見人となり、財産を勝手に処分する。これしかない。だが、婆さんはどうする?財産を処分したのがばれるとまずいから、早々にくたばってもらった方があり難い。だが、最近の老人は堅牢だ。なかなか死なない。だったら、死んでいただくしかない。死んでしまえば、財産がどう処分されたかなど、詮索する向きもなくなる。それに、大手を振って財産を取り込む作業に就ける。(続く)

2023年10月2日公開

© 2023 moonkaguya

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