四章以降が面白い

名探偵破滅派『その謎を解いてはいけない』応募作品

大猫

エセー

1,426文字

場面場面での文体の切替がすごかった。
年寄りにはついて行けないギャグの連発で、読み始めはどうしようかと思いましたが徐々に慣れました。
名探偵破滅2023年8月課題参加

この作品は四章と五章だけで良いんじゃないかなと思った。

一章から三章までは何だか読まされている感があった。小鳥遊や暗黒院、一二三という個性豊かな登場人物を定着化するのが目的だったのかもしれないけど。

でも四章以降、俄然面白くなった。

 

殺人のターゲットは最初から長野蝶だったはずで、四つの現場に書かれた「春夏秋冬」の文字は殺人(殺猫)をよりシンボリックにしたい犯人の思惑である。(中二病の表現っていうの?)

黒猫の死骸に画鋲を刺した意味は、いわゆる「黒歴史」をズタズタに葬り去る意思なのだろう。水浸しにしたり井戸に落としたりしたのは後の計画でのプール殺人のカモフラージュである。

第三の暗黒院の事件は殺意が認められず、警察の目からの第四の殺人の隠れ蓑とし、アリバイ成立に利用したものと思われる。

 

となると犯人は第三の事件でアリバイがある者であり、二年前の上履き事件や告白事件に密接に立ち合った人物となるだろう。
天野川
綾野綾
ひょっとして相生葵
の三人に絞られると思う。

 

天野川には告白事件以来長野に遺恨があり、その上、ビッチの長野に童貞を弄ばれたらしく十分動機がある。
暗黒院事件の発見者であること、成人男性の暗黒院を眠らせた上、手足を縛ってバスタブに沈めるのは男性でないと難しいことより、天野川犯人が一番自然に思われる。

犯行当日、何か理由をつけて(渡辺渉に引き合わせるとか)18時頃に長野を呼び出し、薬品を用いて気絶させ、何かのトリックを使って、例えばプールに少しずつ落ちて行くような仕掛けを作り、4時間後の22時に溺死するようにしておき、自分は何食わぬ顔で暗黒院事件の現場に居合わせてアリバイを作った。

携帯やプールの鍵を紐のトリックでプールに落とすのは夜間だと難しいので、早朝に実行したのではないか。昨晩の仕掛けで絶命した長野をプール中央まで運び、携帯と鍵をトリックを使って落とし、帰宅して着替えた頃には殺人事件が発覚して騒ぎになっているという寸法だ。

暗黒院事件の際、綾野を呼び出したのも天野川、相生と長野にもしれっと連絡をしている。

このように天野川が犯人とするといろいろしっくり来る。が、あんまり面白くないなあ。

 

小説家志望の綾野綾ちゃんが犯人だったらいいのに。

でも彼女には動機が見当たらない。彼女の書いた作品を現実化するため? と思ったけれど、そうだとしたら彼女の内面世界、世界観がもう少し書き込んであるはず。これほど頭の良い子がなんで長野と友達付き合いをしていたのか謎だけど、これも人間観察のためだったのか、それとも長野には人として魅力があったのか。

相生葵ちゃんも犯人かなと思ったけど、これも動機が弱い。渡辺渉君の幼馴染くらいしか思い当たらない。そんな動機でここまで冷徹な事件を計画するだろうか。

一周回っていっそのこと暗黒院が犯人だと面白くなるんだけど、ここまで綿密にキャラクター設定した人物をむざむざ潰すとも思えない。

なので天野川が犯人とする。

 

この先、謎解きが行われ、犯人が壮絶な「中二病」の自分語りをすると思われる。これから続きを読む。大どんでん返しを期待する。

心優しい小鳥遊ちゃんには幸せになってほしい。

 

※関係ないけど
「ちょうのちょう」
「あやのあや」
「あいおいあおい」
などのネーミングセンスが結構好き。何よりも覚えやすい。
時代劇書いたら「大場掃部(おおばかもん)」って人を登場させてほしい。

2023年8月21日公開

© 2023 大猫

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