音楽家ステンハウスが主犯で従犯がクロードと俳優のエドガーだと思う。
<リーズ博士殺害>
雨の降っていない時間帯にフレンチドアからやって来た人物が二人いた。午前中、博士が「それは問題だ、お待ちしている」と言って「フレンチドア」を見た電話によって来訪した。エドガーとステンハウスである。
ミセス・ターナーが夜食を届けに来た夜9時、ドアを開けたのは実はエドガーであり、夜遅くにある人物の来訪があることを告げた。博士は眠らされて衣裳箱の中に押し込められていた。ニセ博士は夜食を受け取った後、ステンハウスに変装してフレンチドアから出てアパートに帰った。この時、足跡がつかないような細工をしておいた。(どんな細工かは知らん)
部屋に残ったステンハウスは11時15分の来客クロードを出迎えた。ミセス・ターナーの立ち聞き癖を知っている二人は「使用人が覗いている」と細かい演出を行った。ちなみにこの時、外で調査会社の若い男が様子を見ていたことになっているが、実際には彼はその場にはいなかった。警察に尋問されたら嘘の証言をするようにクロードの妻から言い含められていた。
博士殺害後、クロードは正面玄関から去った。11時45分、ステンハウス(実はエドガー)がアリバイのための電話をかけた。ステンハウスはその電話に出てメモを取るふりをした。ミセス・ターナーが立ち聞きしているからである。その後、細工をしたフレンチドアから悠々と立ち去った。
電話メモを持って帰ったのは、博士の字ではないことを見破られないため。
グラスを一つ持って帰ったのは、睡眠薬が検出されたら困るから。
<ビート殺害>
フリント警部補たちにわざと建物内を捜索させ、発砲事件を起こしてどさくさに紛れてビートを殺害した。
ビートがステンハウスに変装したエドガーに気がついたため。
発砲ちょっと前にステンハウスの家の呼び鈴を鳴らし、はっきりと銃声を聞かせるためにドアから顔を出させた。犯人はビートに呼び鈴を鳴らすようにそそのかし、発砲音を合図に四階でエレベーターに乗せて殺した。守衛は慌てふためいていてエレベーターが動いたのを見なかった。しかし当時のエレベーターは自動では扉が開かないはずだし、扉を開けたら大きな音がするはず。
現場にはフリント警部補、デラ、浮浪者の男がいたが発砲したのはデラ。ステンハウスに頼まれて何かの演出と思って発砲した。ビートを絞殺したのはエドガーということになるが、手際が鮮やかすぎる。どうやって逃げたのか?
<動機>
ステンハウスは蛇男の娘の婚約者だった。
デラと幼馴染。実は二人とも乳児院の出身。音楽の才能があったステンハウスは金持ちの家に引き取られ、音楽家となってウィーンで蛇男の娘と知り合った。ステンハウスは蛇男と娘の忌まわしい関係を憎み、蛇男を亡き者にした上、娘も手に掛けた。リーズ博士が英国にやって来た際、犯人は自分のことを調べるためと思い、先手を打って患者として博士に近づいた。
クロードにも動機があった。昔、書いた小説に蛇男殺害そっくりの話があった。実は診療記録を入手して書いたものであり、それをリーズ博士に指摘されたくなかった。
たびたび登場する名画「エル・ナシミエント」(残念ながら架空の絵らしい。つい検索してしまった)は、母と子のつながりを強く示唆している。
博士の遺体は膝の上で強く手を組んでいた。また、ビートの遺体は胎児のようなうずくまった姿勢だった。母体回帰の妄想か?
蛇男の断末魔の顔を忘れられない犯人は、母体へ帰りたいと願っており、殺害した人物をも母体へ返す儀式を施したのだろうか。
博士自身もうすうすとステンハウスの思惑を知っていたのかもしれない。蛇男の治療の失敗以来、心が死んだという博士は、我が身に危険が及ぶかもしれないと知りながら、何の手も打たずに流れに身を任せていたのだろうか。娘のリディアも知っていたかもしれない。また盗癖のある女優デラ、ダメ男のマーカス、デラの後釜を狙っているルーシー、一筋縄ではいかぬ人々ばかりで、誰が犯人でもおかしくない気がした。このあたりは続きを楽しみに読むこととしよう。
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