9年前のストーカーの話

ゴニゴ

エセー

2,261文字

9年前くらいに出会ったプチストーカーとの思い出です。1人暮らしの方は気を付けましょう。

■出会い

大学1年のおわり、春休みのことだった。朝から昼過ぎまでのケーキ屋のバイトを済ませ、近くの中古ゲーム屋に立ち寄った。当時、アニメやゲームについて研究するサークルに入っていたため、その資料としてレトロゲームが必要だったのだ。狭く雑多とした店内には既に自分以外に1人か2人客がいた。入店してすぐに商品を購入し、店を後にした。そのあと、マンション近くのコンビニにも寄った。アイスを買った。

 

そして、帰宅。資料用にAmazonでもゲームを注文していたのでそれをマンション入り口に設置された郵便受けから取り出す。バラバラと落ちてきた。普段からチラシを回収しないため、ギュウギュウに荷物が詰め込まれていたのだ。だらしがない。

 

落ちた郵便物を拾って顔を上げると、見たことのある男性がいた。身長が低め、太め、スポーツ刈りでおにぎりみたい。マスクをつけている。さっき、店で見た男性だ。

 

「同じマンションだったのね。感じよくしとこう。」と思い会釈。愛想が足りないとケーキ屋のバイトで毎日のように叱られていたので、せめて少しでも。

 

「あの!さっき店で見ていいなって思って!!!お友達になってください!!」

男は突然大声でなにやら口上を述べ始めた。

 

その後もなんか言ってた気がするが「『店で見ていいな』って言われてるの、まるで人じゃなくて商品みたい。おもしろい。」と変なところで楽しくなってしまった。

 

しかも、咄嗟のことで頭が回らず、

「えっ、罰ゲームかなにかですか?それとも不審者ですか?」

とアホな質問をしてしまった。不審者だとしても、不審者だと答えるはずがなかろう。眼前の相手は噴き出している。和ませちゃダメだ。男性に話しかけられたことのない地味女としての学生生活が板についた蒲鉾となってしまっているので、当然のように罰ゲームだと思ったのだ。

 

私の突拍子もない質問に男性も動揺し始めている。いけないことを言ってしまったことはわかる。

落ちついて、詳しく話を聞くと、連絡先を聞かれた。当時は、メールアドレスが主流である。LINEは少数派であった。正直教えたくないが、郵便受けを開けているところを見られてるから部屋がバレている。しかも、冷静に考えると、ゲーム屋からコンビニ、家まで後をつけてきたストーカーじゃないか。私もよく気づかなかったものだ。

 

連絡先なんて教えたくない。でも、雰囲気は和んでいる。ここで断ったら空気を読めないのではないだろうか……。場の空気にのまれて渋々教えて、エレベーターで自室に戻ると早速メールが来ていた。8つ年上の近くの焼肉屋の店員らしい。「店に来てくださいよ!」と誘われたが、ストーカーの店で一人焼肉は異常すぎる。せめてカフェにしてくれ。

 

ちなみに、普段はなんのゲームやるのか聞かれて、「ディグダグとかパックピクス」と答えたら、「そういうパズルゲームはわかりませんが、僕はRPGやります。今度一緒にやりませんか?」って言われたのですが、一般にRPG系のゲームって一緒にプレイしようと誘うのに適切なんですかね。

 

溶けかけたアイスを食べつつ返事をするも、たわいのないやり取りでもなんだか怖くなってきた。取り敢えず、オタクサークルに所属してるくせに「テニスサークル」と嘘をつき、「サークルの集まりがあるから」とその日のうちに誘われた食事の約束を断った。

 

次の日にもメールが来ていた。「返信があると幸せです」なんて書かれている。そっか。「お友達になってください」と言われてメールアドレスを交換したが、相手はそのつもりはないのか。恋人を前提としたお友達ってわけか。言葉通り受け取ってしまった。それは困る。

 

どうしたらいいかわからず、1日携帯を放置し、テニスサークルではなく、オタクサークルの集まりに向かった。サークルの活動が終わって携帯を開くと、

「返事をください」

「忙しいんですかね」

「何か悪いことしましたかね」

なんて、メールがいくつか溜まっていた。最新のやつを開くと、

「つけまわすようなことをしてすみませんでした。僕は大阪に引っ越すので安心してください。」

というメッセージが届いており、なんだか知らぬが勝手に解決されていた。

それにしても、1日メール放置しただけで、そんなに反応を求められるものなのかね。普通のつき合いだったとしても成立しないのでは…。

 

それからは宣言通り連絡が来ることはなく、会うことはなかった。ラッキーだったと思う。現在だと、SNSでいくらでも特定されたんだろうな。

 

■後日談

実は少しだけ後日談がある。

お別れのメールを受けた次の日くらいに、郵便受けをあけると、なにやらカードがバラバラとたくさん入っていた。チラシじゃないから不思議。手に取って見てみると、スタンプが全部たまっているゲーム屋のポイントカードだ。スタンプを溜めると割引とかいうやつだ。

最高にいらない。こわい。

置き土産のつもりだろうか。「なんなのなんなの」と言いながら近くのコンビニのゴミ箱に捨てに行った。ゴミの回収日まで家に置いておくのも嫌だった。

 

おかげで、これ以降、郵便受けにはちゃんと鍵をかけるようになった。1人の不審者のおかげで、私のひとり暮らしの安寧が保たれている。

 

■まとめ

  • 郵便受けの鍵をかけるべき
  • 怪しい人に「不審者ですか?」と聞いてはいけない
  • 時々後ろを振り返りながら歩こう

2021年6月11日公開

© 2021 ゴニゴ

読み終えたらレビューしてください

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

この機能は廃止予定です。

タグ

この投稿にはまだ誰もタグをつけていません。ぜひ最初のタグをつけてください!

タグをつける

タグ付け機能は会員限定です。ログインまたは新規登録をしてください。

作者がつけたタグ

散文

"9年前のストーカーの話"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る