「漢詩の規則の中で自己の純粋詩情を自由に詠いあげ、広大なる宇宙に飛翔し、悠久の太古に遊び、春秋の艶美にその眼をたのしませ、幽邃微妙の世界に意をかよわす。如何に制約の枠があろうとも、その中で詩語を撰び、充分に推敲する時、その枠を超絶し、純粋詩情を吐露することができる。これは対境を有るがままに見、これを知ることによる。」
有賀要延『僧林漢詩作例講義 入門篇』 国書刊行会
価格¥4,739
発行国書刊行会
発売日1999 年 3 月 1 日
――さて、とはいえ、ルールは複雑です。破滅派投稿の際はまずは以下、「基本」を押さえてください。「基本」が押さえられていれば、掲載条件を満たすものとします。さらに追究したい人は「応用」へ。
基本ルール
1) <主語―述語―目的語>の順はなるべく守ろう。
例:○育児 ×児育
2) 返読文字の順はなるべく気を配ろう。
不(ず)、非(あらズ)、有(あリ)、無(なシ、なカレ)、莫(なシ、なカレ)、多(おおシ)、少(すくなシ)、難(がたシ)、易(やすシ)、使(~ヲシテ…しム)、教(~ヲシテ…しム)、自(よリ)、従(よリ)
例:○不覚 ×覚不
3) 文字数は唐詩にあわせよう。(四つのうちいずれでも可)
- 五言絶句(五字×四句=二十字)
- 七言絶句(七字×四句=二十八字)
- 五言律詩(五字×八句=四十字)
- 七言律詩(七字×八句=五十六字 )
4)基本リズム
五言ならば○○‐○○○、七言ならば○○‐○○‐○○○、の自然なリズムになるべく習おう。
例)○東京特許許可局 △在東京都水道局 (……「意味の固まりを意識する」ということですね)
5)再読文字はきっと使えるはず。
- 未(いまダ~ず)まだ~していない、まだ~でない
- 将(まさニ~ントす)今にも~しようとする
- 当(まさニ~ベシ)当然~すべきだ
- 応(まさニ~ベシ)きっと~だろう、当然~したほうがよい
- 宜(よろシク~べシ)~するのがよい
- 須(すべかラク~ベシ)~したほうがよい
応用知識(必要なもの:漢語辞典)
――漢字は全部で百六種類に分類されています。音と抑揚での分類のようです。つまり韻を踏もうなどの野心を抱いた瞬間に、この分類に関する知識が必要となる。よって、破滅派としては、以下は、純粋詩情の吐露を追究する人へ向けた内容とします。まずは知識的な説明。
1) 以下の百六種類が基礎となる型と言え、全ての漢字が百六のいずれかに属する。
・横:五種類(入声、去声、上声、下平声、上平声):抑揚(調)
・縦:三十種類(分類方法は計り知れない):音韻(母音)
2) 漢語辞典で調べられる。
「聖」を調べると……
このようなマークが書いてある。まず、黒塗り三角形は
- 右上…去声
- 右下…入声
- 左上…上声
- 左下…平声(下平声、上平声)
を意味しています。つまり、「聖」は去声。
では、「敬」とは何か。「聖」を調べているのに「敬」の漢字が記されている。上記の表を参照すると、「敬」は去声の二十四番目。
よって、「聖」は「去声二十四敬の韻」というカテゴリーに属する漢字である。
「聞」を調べると
「群」を調べると
こんなふうに調べていくんですね。「聞」と「群」は全く同じカテゴリーに属する漢字ということが分かります。
応用ルール(必要なもの:漢語辞典、詩語表)
1) 押韻のルール
押韻のルールを確認しよう。
- 五言詩では偶数句末に、七言詩では初句と偶数句末で押韻する
- 押韻は「平声」(上記黄色部分)でかつ、韻の番号もそろっている必要がある(「聞」と「群」みたいに)
- 押韻は同じ文字は駄目
- 押印しない句末は「平声」(上記黄色部分)を使ってはならない
例)七言律詩
※◎が「平声」、●は「上声」か「去声」か「入声」
2) 平仄のルール
ここからは平仄のルール。「平」とは「平声」のこと。「仄」「仄声」とは平声以外の、「上声」、「去声」、「入声」のことをまとめて指す。
- 二四不同――二と四は同じならず
一句のなかでは、二字目と四字目の平仄を変える。二字目が平声ならば四字目は仄声に。二字目が仄声ならば四字目は平声に。 - 二六対――二と六は対に
七言詩の場合、一句のなかの二字目と六字目は同じ平仄に。 - 孤平の禁
――平音を孤独にするのは禁じ手平声が仄声にはさまれることを避ける。 - 下三連の禁
――下三つが連続するのは禁じ手一句のなかの最後の三字を平声ばかりにしたり、仄声ばかりにしたりしてはならない。
――やはり応用は、詩語表なる一覧表を片手にしないと無理です。ちなみにこの段階は、実はまだまだ基本中の基本のようです……。「平仄が合わない」とは「筋道が立たない」という意味の慣用句に転じていますが、平仄を合わせるのはほんとに大変そう。ガイドブック的な本も必要になると思われます。よって、これ以上分け入る人はそれらの本を参照してください! ただ、参考書として使用した『漢詩を創る、漢詩を愉しむ』の著者である鈴木淳次先生のサイトでは、韻字表などが無料で閲覧できる模様。詩語表を買ったり借りたりするのが面倒な人にはこりゃありがたい。
これにて解説は終り!
参考書:鈴木淳次 2009『漢詩を創る、漢詩を愉しむ』二見書房
価格¥1,081
順位599,724位
著鈴木 淳次
発行リヨン社
発売日2009 年 8 月 24 日