首絞めマン

小林TKG

小説

2,326文字

Xのタイムラインを眺めている時に思いつきました。

 これは首絞めマンと私に関しての話です。

今後、いつ何時かその際の事を聞かれた時の為に記録に残しておこうと思ったんです。

先日、レイプされて殺されそうになったんです。仕事帰り、川口にある自分の家に帰ろうとしている時でした。もうすっかり夜になっていて、怖いなって思ったんです。その、最近Xとかでもよく見るので。川口の事。警察も国家も何もしてくれないって。それで、帰っている時に突然後ろから抱きつかれて。一応明るい所を、コンビニの前だったんで大丈夫かなと思ったんですけど。軽薄でした。私にはあの人達が、最近Xでよくタイムラインに流れてくる移民かなにか、外国の方々の何か、そういう人達なのかどうかはわかりません。私は仕事で疲れてましたし。早く帰りたかったし。怖かったし。それで何もわからないままに抱きつかれて、何か言われたりとか、騒いだら殺すぞって言われたりとか、もしかしたらそういう事もあったのかもしれません。何も。覚えてないですけども。でも、その瞬間終わったなとは思ったって言うか、わかったって言うか。でもそれ以外は何も考えられなくて。怖くて。発砲事件があったってニュースも見てましたし。それで抱きついたその人以外、他にも複数いたみたいで。その人達は私の事を車に連れ込もうとしたみたいでした。黒いバンだったと思います。

それで、そこまで私を引っ張って行ってる途中で。突然でした。私を捕まえていた奴の手が緩んだんです。体が急に自由になりました。私は地面にへたり込んでしまいました。逃げればよかったとは思うんですけど。でも突然そんな事になって。怖くて。信じられなくて。そんな事が起きたのが。そしたら、
「ぎいい、ぐいい、げええ」

すぐ近くでそんな音が聞こえたんです。バルーンアートみたいな音でした。バルーンアートでトイプードルか何かを作る途中、風船をねじってるみたいな音。私の事を捕まえていた奴が黒い格好をした大柄な人に持ち上げられていたんです。どこから来たのか、どこから出たのか、私にはわかりませんでした。大柄って言うのも正直、はっきりしません。私がその時そう感じたんです。その大柄な人は、顔にも黒い布を巻いていました。その人は両手で私を捕まえていた奴の事を持ち上げていました。首を掴んでいました。黒い大柄な人が突然その場に現れて、何も言わずに、何も気にせずに、見向きもせずに、そいつの首を掴んで持ち上げていました。捕まったそいつの手足がばたばたとしていました。ばたばた。首を絞めていたんだと思います。ぎゅうぎゅうに。ぎゅうぎゅうに締めてて、
「ぎいいいいいい」

って、言ってましたから。その人。それで私の事を襲ったそいつの仲間達が、首を絞められている奴を助けようとして、その黒い人に襲い掛かりました。殴りつけたり蹴りつけたり、ナイフとか、凶器を出したりして。

でも、黒いその人には関係ないみたいでした。掴んだ奴の事を振り回して、私の頭の上でです。私はうずくまってその場から動けませんでした。でも、紙みたいに振り回してたのは見てました。その首絞める奴の体を。人形みたいに振り回してました。電柱に叩きつけられたり、地面に叩きつけられたりしてました。足が変な方向に曲がっていました。

途中で黒い人が、片手でもう一人の首を掴んで、二人の男を掴んで、空中で、それで掴んだ二人の頭を、どっちの頭も陥没するくらいの勢いでぶつけて。ラッコみたいに。ラッコが貝を石で割るみたいに。ぐしゃって言いました。ぶつかった瞬間。音がしました。ぐしゃ。ごしゃ。その後その二人をその人達のバンに、私を連れ込もうとしたバンに、開いてるドアの中に放り投げて。それから同じようにして六人くらい捕まえて、首を絞めて地面に叩きつけたり、壁に叩きつけたりして、バンに放り込んで。逃げた人もいましたみたいでしたけど、でも気がつくと、私とその黒い人の周りから誰も居なくなっていて。それでその黒い人は周りを見回して、それから私の事を見たんです。黒い大柄な、その人が。私は何もできませんでした。そんな私にも手が、大きな手が、黒い大きな手が迫ってきました。その時、自分の呼吸の声が聞こえました。はあ、はあ、って。あと遠くでパトカーとか救急車の音、サイレンが鳴ってるのが聞こえました。私はそこで意識を失いました。

目が覚めた時病院にいました。朝でした。様子を見に来た看護師の人に言われました。
「運がよかったわね」

って。もう家に帰りなさいって。支払いは済んでるからって。今日は大事をとって仕事は休みなさいって。今日休んだら三連休になるからって。金曜日だったんです。その日。病院を出てからカバンの中を見ると、見覚えのないネックウォーマーと手首ウォーマーと足首ウォーマーが入ってました。ネコちゃんとかワンちゃんのキャラクターがあしらってあるもこもこウォーマー。ピンク色の。あとメモ用紙が入ってました。それを見ると、
《三首を冷やさないこと》

そう書いてました。家に帰ってそれらをカバンから出してる時、何かが床に落ちて、見たらお金だったんです。ドラマとか映画とかで見るような。帯のついた金。その帯に、
《その金を使って引っ越せ》

って。書いてました。

ネットで調べてみたら、最近、出没するらしいんです。この界隈に。その人、首絞めマンって言われてるみたいでした。私はその人に助けてもらったんです。暫く気がつかなかったけど。なんか警察も追ってるみたいでした。その人の事、首絞めマンの事を。引っ越しはまだしてません。もう一回会いたいんです。私。その人に。首絞めマンに。危ないって言うのはわかるんですけど。でも、どうしてももう一回会いたいんです。どうしても。

2024年11月12日公開

© 2024 小林TKG

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