『ラクヨウ』アンブラッセ
象牙の塔の住人は ニルヴァーナへ向かいあい、レユニオンの蜃気楼に虚を構える。途方もなく遠いところにいて。あなた、は 小さな星星を掬い上げる わたくしのこと。去る万華鏡の空を泳ぐ、魚たちの群れに雑じる上空から眺めるにはいささか頼りない翼で、偲ぶ指先から作られた恋文の数々をリフレインさせながら。よぎり、いわく。跨線橋から、古戦場まで、駆け抜ける風見鶏の錆びついた、呼吸は白く細く、ながく、スタッカートの輝雪。闇に呑まれ生きていた。指のまた、あいだがら、絡め取られた、冷めることもなく。ゆけるところまで颯々と攫われてしまいたい。
残り僅かなパンくずでもこぼしてみせながら。さて、どこへ。
やはり、そぞろなかぜに、なあ――ん?
青藍の空にとり残された雲の糸で編んだものが。また水母と呼ばれて、降り立ったはずです。古来引力に逆らえずに。わたくしとは――いいぶんなどきかずに、そっと立ち止まり、冷ややかな雪堂はもとより美しく、こころうちは顰むだけでした。
うつろいとおくにあった、お決まりの泡になりそこねた死合わせ、しんねりとシキサイ。ああ眠れぬ森の美女だった。〝おとぎばなし〟人魚姫の肉が今夜のご馳走だよ。一かじりしたあとの、毒リンゴもそえてあげよう。
(ゆくそのさきは、いまもしらない)
望んでいたのかもしれない名 怖かったのかもしれない死。声帯は翅音を放していた。また裏苦い 面妖な花を裂かせるまえに実を結ぶ。魔女の庭で 祈りの間だ!(マスタベ的だ。)
いきて。はにかむよう、すっと忘れてしまえたから、いまかたちを留めた気がする、覗き込んだらきょうのつづきを、吹き込んだ雪の結晶は僅かに。
無人島に、寝転がって、こちらにおいでという――うららかな骨組みばかりが浮き出ているアバラヤ。ひらかれた口に 花を埋ける。死に化粧を施された春の香りの中夢見心地でいられるのは鴉片のせいで、喚き散らしたあとの祀りの夜に故あって。夢の中にまで打ち寄せている。まっすぐに伸ばされた その腕だ、そのひとだ。その歩調だ、小瓶に更された、この砂時計をおもって。
魔女は深海に住んでいる、なんてわらわんでね。
寄せては返す波の音はもたげ。封をしても零れる耳鳴りに侵される。割れて欠けたアワーグラスの、余空ヨソラから、おっこちた一等星の、咲いた暖冬が氾濫する真砂を。踏みつける、可哀想な鳴き声ばっかね。また霞を残した時間軸に引っ掻かれた。
細い山道を行くには、薄情なインクで、また拙い筆跡ばかりを踏む。sourisハツカネズミに産み落とされる。夢見る天使像、ゆめゆめ、夢にまで見た光景、忘れられぬ記憶のとびら、ただひとつの賢者の魂と古い巨木にときに捩じ切る、佇みつづけ、あらしのあとに、ひとつの指揮とうたわされた、ざわめきだけ丸く、収められた花道に暗夜の灯をおもうとき、ずっとふかいヴィジョンにおちる。いきしろく、どこまでか、たゆまぬところまでただけわしくもあり、その手をとりなだらかであれ、凪の末路だ。
「刹那を染めだしたのだ!」
果てはいつかに。捧げられたは少女だった。
瞳孔の境地にマリアンヌの抜け殻をみた。
一閃、通りすがりに知り得た芒はときを停めた、ピリオドの鍵だったか。花だったか。天翔ける舟を 浮桟橋へ。溶接された鉛の置物は、蝶だったか。よれた帳でしかない、そのストロークのまま沈んでいく、波打ち際の彼は誰時。輪郭は光を呑み込み 隧道はどこまで行っても明かりにたどり着かずに、川のせせらぎだけ 木の実コノミに縫い付けてく。
そしてあれは……倉庫番はいう、あさもひるもよるも乳臭い娘だ。
歪な加工が施される片隅から、大空まで確かにエモさだけが取り残されそれでも。
「そうそう 滅んでいくんだよ たぶんきっとなんて おぼろげな魔法で」
積み木を与えてから、水をやり肥しをかけ、それから子守唄を鳴らした
「可愛そうだね、なんて額を合わせて、生きているからね、そっとだよ」
(銀盤に花が咲いたよ、ノイズだらけの吃音だったけど、)
その動物は、頭 首 四肢、尾を残して、どう(胴)ともこう(孔)でもない
いまだタマゴじゃないか。/そうだわ、
紋白蝶は 生きていたんだなと、これから――どこかとおくで吠えた、影狼のすみかだったら。いつのまにかどこか風に飛ばされてしまったが、暗礁にのりあげ、そのうち漂流する、そして沈没する。もがいても、必ず。
弛緩して、たおやかに紐解かれるなら
あなたは鍵、分け与えてから、くれてやる。あなたは蔵、無機質な未来を、ゆっくりと時間をかけて。雨宿りの陽は、海でも空でもない、あいだでできた、スミカだけをのみ込んで、ここにあらず、とどこか夜霧に包まれた、サカサマスグの嵩を眺め、あんたはどこにもいない、大嫌い とつぶやく。
オラクルカードが暗示するの――夢のまた夢が、漏れ出して作り出された
すべては眠り姫、乙女が少女だったころ、夢見た夢にありながら天使になれるのかしら
来たるべき日のために、依頼人の席は空いたまま。
無音の封を閉じて。また手繰り寄せて引き渡して、
まだ明けやしない、キャミワンピを着た、仮染だったわたくしは ペンキでよごしていた、ほらその白い手袋だ いま、委ねられた、名前はまだなかった――
擦り付けるようにして爪を立て撫で下ろす、キャンバスに触れ自慰をあやすように
父は母は、私は。あなたは――
かるくてやわらかでハリがあり腰がある。お腹のなかで踊ってる、そんなウロ洞を飼っている。
近頃では ダフネ沈丁花のかおりに運ばれるオブシダン黒曜石の夢ばかりみている。いまに似合わない、大きく膨らんだシフォンに重ねられるオーガンジー、つまびらかなひとみで、おもいえがいて。
ほら『シンデレラ』――そのありきたりのうた綻ばせて。
意味ありげのはなしね――誑かされたのかしら。
追って届けられた過去に魅せ悠とおい未来に劣る。忘れたころに達すること、これからしらせること、あなたのまた、流星が垣間見えた頬、ひとみ、唇を。ゆくゆくは。といい置いて、後ほど。ばかばかしいほど壊れるぐらいみだり眩しいから目頭が熱くなる。
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