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呼吸

生肉のワルツ(第2話)

都築 理都

生ぬるい微風が不器用にめくる
静謐な狂気と透き通った絶望

275文字

時計の秒針が肉を削る音がする
西日の傾いた四畳半の
剥がれかけた壁紙の裏側で
世界は僕を置き去りにして呼吸を続けている
言葉はいつも喉元で腐敗する果実
君の輪郭をなぞろうとするたびに
指先は冷たい虚空を突き抜け
夕闇のあの不吉な紫に染まっていくのだ
正しさとは誰かがついた美しい嘘
僕は錆びたスプーンで
己の内部の暗い泥を掬い上げている

それが光に透ける一瞬だけを
「永遠」と呼ぶ罪を許してほしい
踏切の警報機が遠くで心音を模倣する
死なない程度に傷つくことが
これほどまでにひどく
退屈で神聖なことだとは知らなかった
窓ガラスに映る見知らぬ男の顔が
かすかに笑って
それから静かに消えた

© 2026 都築 理都 ( 2026年8月1日公開

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