名探偵が死んだ……。魔女が何か突拍子もないニュースを視て驚愕している……。おれは山の中に居た。いつでも山の中に居る。誰でも山に入ることができる……。鏡だらけの作家のような立体的な色彩のある山々……。
山頂から強張った光だけを眺めていた。脚本を仕上げなければならない……。おれは作家には成れない。けれど魔女は居る。おれはいつでも耳と脳と自分自身の精神的な欲求の中に魔女を視ている。この山も魔女が生み出したのかもしれない。おれは試験管を揺するように文字を綴った。千文字書いてから百文字を消した。デジタルの中にアイデンティティが浮かび上がり、それらは脂のように常に変形している。素手と素手の間に調理方法が重なって視えている……。おれは階段を駆け上がった。けれど、人はどのようにして自分が相手する階段を駆け上がっているのか下っているのか理解するのだろう……。
おれは朝のうちからバーでいくつか酒を飲んだ。いつでも市場の動きを観察できるように訓練されている。特殊部隊のような脳内での妄想が開始して終了して途中から川のようにどこかに消える……。おれは自分の体力が少しずつ削られてゆくことを意識していた。文字列に統一感がある。正確性だけを嫌っている教師の連中がおれのことを探している。おれはコートを手に取り、診察室から出るみたいにバーを後にした。
魔女の歌声が流れている……。おれはその繊細な生まれたばかりの硝子のような透明でどんなことにも負けなさそうな声を頼りに西へ歩いた。きっと産道を歩いている。廊下変わらない雰囲気の冷たい道を歩いている。右端に模様が浮かんでいる。おれは魔女がどのようにして生まれてしまったのか訊ねるふりをした。東から声がする。きっと見知らぬ男たちが斬首にされているのだろう……。おれは自分の中の魔女を絞首台に送る時のことを妄想した……。そうしておれは自分の二つの手首が、いつの間にか魔女のあの長い長い髪によって縛られていることを自覚した。
吉報がやってきて魔女がまた歌っている。おれは今から数千年後のデジタルの世界をひとつだけ連想してみる。計算機が自我を持ち、銃火器のような精密な所作で人間のことを調べている様子だけが瞼に映り込んでくる。夕暮れの中に魔女があった。あの白色の髪に橙色の薄い光沢が浮かび上がっている。おれは二日前の手術のことを連想した。あの消毒液のようなにおいの間の部分から魔女の瞳を視ていた。おれは出産されてゆく魔女たちの子孫について想った……。考えることはいつでも一緒だった。
それから理科室のような括り付けられた試験管たちのことをいつでも考えているふりをして二日をやり過ごした……。おれは消耗品のような顔をしている青色の瞳について書籍を出版した……。
それは公的に考えればみっともない仕事ぶりだった。なぜ、人々は自ら蹴飛ばした教科書にさえ後ずさりしてしまうのだろう……。文字列が逃げ、さらに加速する筆先があちこちに街をつくり出している……。
おれは朝から夕暮れから夜の深い位置に魔女をみつけたことがある。おれはその背中の中から花々を取り出し、異形と化した友人たちの未来を計測したことがある。さらにおれは、脳内における極めてデジタル的な部分に寄せられたいくつかの便箋について理性的な学術書を発行したことがある……。
おれの中に瞳の魔女がある……。おれは自らの腕を外科手術するようにそれらを取り出したことがある……。おれは教室の中で昆虫を計測し、常に過去が未来で未来が早朝に集結しているのだと理解している……。天体の間に瞳がある。魔女たちが乳製品のような声を発揮する……。デジタルの海と名付けられた立方体の中で戦争がいくつも発生している。おれはコートのすぐ裏に潜む新しい楽譜を必死に脚本にする作業に昨日から取りかかる。必死なのね、と君にいってもらいたかった……。
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