
わたしたちは、小学校も一緒だったし、中学校も一緒だったし、高校も一緒だった。
わたしは募る想いを告げられずに高校二年生の春を迎えてしまった。
「貴女のことだけを愛しているのよ」と言いたかった。しかし何も言えなかった。
「ね、アケミ話があるんだけど」「うん? 何?」
「ええと、ええと、ね」
わたさいはスカートの裾を握りしめる。じんわりと汗が手の中につたっているのを感じる。
「私のことをしたの名前で呼んでちょうだい」
「何、そんなのことなの。好いに決まっているじゃない。」
「じゃあ呼んで」」
「春香。」
「ありがとう、本当にありがとう」
わたしはこれで充分なのだ。下の名前を呼んでもらえたで充分だ。でも、想いは募るばかり──。
アカリとはクラスが違うから、教室で話すことはめったにない。廊下ですれ違ったときに話をすることが多い。この前も──
「あ。アカリ」
「ふふーん、よくすれ違うわね、わたしたち。
「確かにそうね」
廊下に二人で立ち止まって話している。
アカリが冗談めかして言う、
「私たちって運命に導かれているんじゃないの?」
でもわたしはその言葉を額面通り受け取ってしまってドキドキする。
「でもね、でもね、」
わたしは言葉に詰まってしまう。
「どうしたの?」アカリがわたしを覗き込むように尋ねる。
「ううん、なんでもないよ、もう授業だから行こ」
わたしたちは分かれて別の授業を受ける。
わたしは考える。アケミは何の授業を受けているだろうか、と。いまいちアケミの時間割が思い出せない。
わたしhが教室で数学の授業を受けながら、窓際の席で外の雲を眺めている。
数学なんて勉強して何になる。わたしは絶対数学の授業よりも「ひとと上手に関わり合う方法」の授業を受けたい。
スカートのすそが、開けた窓から入ってくる風に靡く。
ああ、アケミに告白したいなあ。でもそれでアケミとの関係がなくなってしまうのが怖くて一歩を踏み出せない。
アケミはお洒落だから長い髪にかんざしをつけている。とってもきれいなかんざし。
わたしがアケミのことを好きなのはそのせいもあるかもしれない。
「あれ? 何に、何の意味があるのだろう」
アケミのかんざしを考えていたら、ついそんな言葉が出た。どうしてかは、わからない。
分かるのはアケミに名前を呼んでほしいってこと。
放課後、アケミと渡り廊下で、待ち合わせをした。
いつまでたってもアケミは来ない。いつくるのかとそわそわしてわたしはスマートフォンを取り出した。
アケミへのメッセージには既読がついている。
(もういるよ)
(もうすぐ着くかんね、ちょっと待ってね)
わたしはスマートフォンをカバンの中にしまうと、夕暮れを眺めることにした。夕暮れに照らされた積乱雲。美味しそう。風が吹くと気持ちが好い。自分のリボンも心なしかそよいでいる。
そうしているうちにアケミが来た。
「何? 用って。」
「別に用がなくても好いでしょう?」
「まあそうだけど……こっちが呼び出されているわけだしね。何かあるか知らと考えるわよ」
「うん、じゃあ、あの──」
「え、どうしたの?」
わたしは一呼吸おいてから、
「抱きしめて」
沈黙。
風のように薄いレースのようにアカリの身体がまわる。
ふんわりとわたしをアカリの腕が包み込んだ。
アカリが耳元で囁く。
「これで好い?」
わたしは一呼吸置いて、
「名前を呼んで」
アカリがわたしの髪を撫でた。
「大好きだよ、春香」
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