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丘猫(demo)

小林TKG

幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻幻7

タグ: #BFC7幻の決勝戦作

小説

2,189文字

メモ帳に、丘猫と書いてありました。恐らく、私が考えたお話のしっぽ、切れ端、お話のかけらなのです。しかし私にはそれが何なのかわかりません。先日の事です。つい先日の事なんですけども、もう思い出せません。その期間は色々と考え事をしていました。

「アブラハム・ア・サンタクララって、ネットで調べるとアーブラハム・ア・ザンクタ・クラーラって出て来るなあ。どっちなんだ。アブラハム・ア・サンタクララなのか、アーブラハム・ア・ザンクタ・クラーラなのか。国で読み方が変わるのか。どうなんだ?」

とか、

「スーペリアツインとスーペリアと、タイトルどっちにしようかな。キャプション画像どうしようかな。そういえば確かスピッツにそういうタイトルのアルバムがあったなあ」

とか、

「今更、イグBFC5.5のタグをつけて話を投げたら他人から嫌な顔されるかな?」

とか、

「でもイブクリとマーラーの話は、今出したいしなあ。来年はクマが一頭も出ないかもしれないし、それに家守綺譚の事だってなあ」

とか、

「BFC7に投げた網目麒麟、あれって、よくよく考えてみたら、あれだよな。イブマスの山椒魚のパクリになるよなあ。どうしようか。落選展に出したいけど大丈夫だろうか、いや大丈夫じゃないかもしれないなあ」

とか、

そういう事を考えていました。色々と考えていました。あとそもそもイブクリの話を思いついたり、家守綺譚についての話を思い付いたり、考えたり、実際に書いてみて、ちょっと六枚から溢れちゃったから、六枚に収めるために形を整えたりしていました。そういう事をしている内に、私はすっかりその事、丘猫の事を忘れてしまったようなのです。ミスです。これはミスです。手痛いミスです。

「なんだろう。丘猫ってなんだろう?」

せっかく某かの事を思い付いたのに、手痛いミスです。あるいは手痛いミスではないかもしれません。丘猫はそれくらいのものなのかもしれません。だったのかもしれません。イブクリと天上の牧歌の話だって、思い付いてから書くまでに少し時間を要しています。

「ああ、洗濯しなきゃ」

「あれ、あれの支払いに行かなきゃ」

日常の中にある様々、諸々の事に押し流されてすぐには着手できませんでした。思いついてから、私の元に降りてきてから、すぐには書けませんでした。でも、流された先のもの、それらを再び拾い上げて、それに、そこに残った情報を元に、一応、一応は書く事が出来たのです。一回書いてみて、整地して、キャプション画像付けて、投げれたのです。

情報が残っていたんです。流された先で再び拾い上げた際、そこに情報が残っていました。だから書けたのです。それに比べると、

「丘猫は、本当に何だろう?」

丘猫に関しては一切、何もわかりません。なに、これ何? 何なの? どういう話だったの? 大抵の場合、一度流されてしまいます。降りてきて、それを確認して、でもすぐに着手しないからちょっと放置して、放置している間に流されて、流された先で再び拾い上げて確認したそれらのもの、ブラックボックスの中身は、もしかしたら元々の状態とは幾分か姿形が異なっているかもしれません。

しかし、そこに残った情報と私の中に残った情報とを整合出来れば、なんとなく書く事はできます。書き起こしたデータを再び、

「ここはこうだったかも」

「これはああだったかも」

と、改変して、また整地して、これでいいとなったら出来たとしてラインに乗せます。

でも、丘猫にはそれがなく、流された先のブラックボックスを開いても、そこには少しの情報も残っておらず、タイトルだけがメモ帳に記されているだけで、だから見た時、

「これなんだろう? 何だっけ?」

となってしまったのです。そして今度はそれが私の事を苛むのです。苦しめるのです。

「丘猫? 丘猫? 猫丘? ん? 丘猫?」

何だろう。丘猫って何だろう。何だったんだ。何だったんだっけ。ホントに。何なの。突然迷路に入り込んでしまったみたいに。知らないうちにグリーンメイズに迷い込んでしまったみたいに。かつての天鷺遊園ファミリーランドの忍者迷路に入ってしまったみたいに、私は丘猫に迷い込んでしまったのです。

だので仮説を考えました。丘猫の仮説、
1、丘にいる猫の話
2、丘猫っていう妖怪の話
3、猫のサイレント・ヒルみたいな話
4、猫丘って苗字の人の業界用語的なやつ
5、丘だと思っていたら猫だった話。山だと思っていたら実は海獣だったみたいなやつ

とりあえず五つ、こうして仮説を立ててみたのですが、どれもピンときません。どう考えても思い当たる所がありません。仮説が違うのか、もっと他にも仮説を立てるべきか、しかしどれを、どのひもを引っ張ってもPS5が当たるとは思えない、スイッチ2が当たるとは思えない。お祭りの出店のやつみたいに。そこで不意に私に去来した考えが一つ。

果たして、

本当にこれは私が書いたのだろうか。という可能性。このメモ帳を使うのは私だけ。他の人には見せもしないし、存在を明かしてもいない。だから私が書いたと思っていた。でも、本当に私が書いたんだろうか。これだけやって何も思い出せない事があるだろうか。

という事。

そんな訳ない。私が書いた。私のメモ帳なんだし、どう見ても私の字だし。これは私の字だ。汚い字だ。他の人には書けない。私の字。私の、ん、これ、ああ、そうか、そうだった、ああ、これは、これはははははははは

© 2025 小林TKG ( 2025年11月23日公開

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