終わりのメソッド

水村

592文字

\(^o^)/

1度きりの人生の
777回目の飲み会で
彼女は突如姿を現し
サラダを均等に取り分けながら
ぼくの方法論をかっさらっていった
個室居酒屋で
きみがぼくにくれたノウハウ
しっ 誰かが気づいたらどうするの?
経て経て経てここまでたどり着いたのでしょう? あなたは もう
わたしだって 偶然に揉まれて
それを水の泡にするつもり?
ののしり合いは革命と処刑と大型連休の後に願います
新しい恋愛観
それはいたしかたなく
炎上するタイムラインは感覚の墓場
実にたくさんの人間が目の前を通り過ぎていった
とはいえ
あなたはいまだに足音だけで他人を推し量ることができない
秘書検定に落ちたきみは1人丸の内で おにぎりとパンを隔日で食べているじゃないか
しょうもないね
この実感は何だ
ぼくは皿洗いの職に就きたくてひたすら検索したけれど
結局見つからなくて
やむをえず経営コンサル
誰でもできる仕事さ
ほらこの実感は何だよ 教えてくれ
わたしはマニュアル以外のものを書く権利を剥奪された人間だ
ときみはぼくに言った
あいにく
ぼくもマニュアル以外のものを読む権利を剥奪された人間だ
よかった
アダムとイブの弁証法の果てにいるぼくときみには
小説も批評も哲学もエッセイも関係がないからね
あるのは店内の客が多いほどボリュームの上がる音楽と
みなし労働と
ぼくときみの裸の皮膚の上を流れては消えていく鈍色のマニュアルだけだ
そこに書かれているんじゃない?
ブレない軸の作り方
終わりのメソッドがね

2015年9月26日公開

© 2015 水村

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