今から遡ること五十年――。
アナログレコードが回転する様子を見て、一緒に目玉を回転させて悦に浸る少年がいた。
この少年ときたら、目玉をレコードの回転速度と同じに回転することができた。
カセットテープが世に出てきたときも同様……。
さらには、CDの高速回転を追っていた頃が、彼の人生における絶頂期といえた。
そして今。
超絶デジタル化・サブスク化が進み、音楽を聴くにあたって何一つぐるぐる回転しない時代と相成った。
彼の目玉も回転の機会を失った。
目玉を回転できない人生は、彼にしてみればひたすら砂漠を彷徨うかのような、乾ききった味気ないものだ。彼は人生を儚んだ。
やむなく彼は回転物を求めて、回転寿司店にてバイトを始めることにした。とにかく回転しているものがなければ。それに呼応して目玉を回転させねば。
しかし、基本的に回転寿司店での仕事は音楽とは無関係であり、ロックもロールも感じられずに落ち込んでいく。しかも、頻繁に目眩を覚えるような年齢になってしまった。
今や彼の心は、いつだって鬱屈したブルースが流れている。
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