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1-5-1.《白鱗の民》
いつの頃からか帝国の海辺に
《白い鱗の一族》が棲みつき、次第に増え始めた。
彼らは一見して柔弱温和であり、
海産物と陸産物との交易で富を得て
穏やかに暮らしていたが、
その内実は妬心に満ち満ちて
また狡知に長け、
《谷》と《帝国》と《碧葉国》の
協和と繁栄をねたみ羨んで憎み、
《涙滴大陸》の陸上全土をも
いつか《海族》の版図とせんと、
秘かに謀り、たくらんでいた。
1-5-2.《谷》の焼失。
ある代、現帝崩御の報と共に生じた
帝家の後継争いの混乱に乗じ、
一斉に攻め入られて
帝城央都はことごとく灰燼に帰した。
《谷》もまた大火が放たれて、乾季の森は炎上し滅した。
1-5-3.《帝国》の復仇
《白鱗》の呪師が放たれ、激しい雨風が続き、
《涙滴大陸》の全土は泥濘と共に押し寄せた軍勢に呑まれかけたが、
帝家唯一の生き残りであった妾腹の皇子ミアルドが
地方公らを号して軍を立て応戦し、
これをよく防いだ。
1-5-4. 流病と回生。
やがて雲が切れ再び乾季の訪れと共に
《白鱗》と《海族》のみが死に至る病が流行り、
騒乱の日々は収まった。
復仇の皇子ミアルドが新帝家を築き《再興帝》と呼ばれた。
これより帝国は危難に備え《石の街道》と《石の守護都》の網目を築きあげ、
大陸全土を唯一の《帝軍》にて掌握し、直轄の版図とするに至った。
《再興帝》の妾にして初代の女宰相となったディア・レスト=ディアが、
この運営を賢く補佐したと長く帝家訓に語り継がれた。
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