数学室にスカウトを加えた二本の離れない鎖。

巣居けけ

小説

4,223文字

「快適だな電動」おれは購入画面の一番下の高級決定ボタンを押す。そして明日の昼食の弁当を注文する。「即席だな弁当」

釣り師のいくつかの選択と最大限の営みや、カルト宗教の崩壊を描いた精進裁判のサウンド・トラックたち……。夢と浮遊する赤いブランコの殴打に添えられた色彩パターンと、自立する電子レンジで発火した広場の財団……。「おい、向こうから何かやってくるぞ?」気にするな……。そして天候を変化させろ……。さらに重ねて置かれた救急の水滴にただ入力していく鏡の段階や、ソシオパスの回収部隊と造語のパラダイス……。「おれは何も動かしてないぞ?」

翌朝、おれは方位磁石とは逆の方向に進む……。さらにスパゲッティ職人を注文し、位置エネルギーと新聞紙の回転を利用した感動の最中に錠剤を与え、どんな発言も尽力した化石と真夏の街。

おれは一旦、自分の腹に隠し事を挿入してから、花火の音と色どりに舌を伸ばしてから突き進む。階段のいくつかの旅行日記がおれの前に現れると同時に、数学室の扉を叩いて中の様子を調べる。
「何をしているの?」と中から数学室室長が出てくる。

おれは自分のポケットに両手を入れてから鍵を取り出し、口に咥えて彼の眉間に飛ばす。「どうだい? おれはこれでも正直者なんだ」
「ならさっさと書類を提出しろ。そうすれば救われるんだから」
「本当かよ」

おれは室長と入れ違いで数学室に入る。そしてすでに無くなった絵本の続きを執筆し、一度目の夕暮れと共にダイレクトメールを口に入れる。すると校内放送が響き渡り、割れた音がおれの耳に触ってから銃声が轟く。
「今日はスパゲッティ職人か……」

おれは自分のスマート・フオンの明るい画面を見つめながら、その中に表示されているメッセージにため息を吐く。ついでにいくつかのアプリケーションを操作して、最新式の電動自転車の購入画面を二秒間見つめる。
「快適だな電動」おれは購入画面の一番下の高級決定ボタンを押す。そして明日の昼食の弁当を注文する。「即席だな弁当」

残弾を確認してから要求に沿った男を入れる……。そして海外の人間に自分のトイレを示してから洋館を爆破しようとする。おれは同じ言葉を繰り返している赤い髪の二頭身の人形の土で作られた魅惑の住処に突撃してからボタンを押して、世界の裏側だけを記した奇抜で頼りになる地図を立体的に仕立て上げる。洋服の色が変動して繰り返しの鉄の扉に手刀を刺す。隙間にめり込んでくるポリゴンの音たちがざわめていておれを探し出すはずだ……。おれは布団を纏ってから座敷をひっくり返して、月に自分の正体を示す。
「昔のお前は履修だったさ。穴が開いた他人の歯列の真ん中に五千円のボールペンを立ててから、冬の量子力学と女の腹の中と薩摩芋に透過の性能を解くんだ……。おれたちは同時に学会に入ってから階段状の会場と外せない証明ボタン……。さらにスパゲッティの職人が昼に学校にやってきて大騒ぎになる……。透明になった男が全裸で衣服の商売を始める。少なくなっている油の鳥籠とグローブの色たち……」固着している男の形のチーズ……。匂いを色で見分けられる男とミキサーの内部の血飛沫……。「おれは正常に動作する機械が好きだ」

ラインとは逆方向に突き進んでいく列車。線路が列車の中を走っている……。「本当に?」すると駅員が答えてくれる。曰く、「本当に」おれはプロデューサーの命を重ねて吐き出すオーケストラや烏賊のパスタ……。掃除機の煩い音の組み上げ作業に天秤が下る理由……。

隣町の老人は朝六時になると必ず向かいの家のポストから新聞紙を取り出し、内容の相違に悪態をつきながら事務局に電話する。

スイッチを連呼している数学の隙間とそれに挿入されるべき動物園のカフェイン……。オレンジの色の保護を被せている黄緑色の唯一のキャップ。

トパーズと、それ以外の宝石たちによる支援の器……。高い再現性と出し切った白濁が染まるキャンバス女子高生生地……。すでに加工された肉塊。そして始まる音楽と三人の換気の蠢く音……。
「生徒総会? いいえ、自立ですよ」
「なら書類を」
「こちら……」

そして室長は手渡された男の書類を噛み砕いて飲み込む。胃液と万年筆とが混ざり合って灰色の蜜柑になる。

トマトの成長を一秒単位で見つめている委員長。それを後ろの二階から見下ろしている書記係。「こいつはもう駄目かもしれない……」

そして次の委員長投票が始まる。おれは西からやってきた女に二票ほど入れてから、その日の給食を調べるために一階に下る。
「なんと! 今日の給食は揚げパン一個か! スパゲッティ職人はどうしたんだ?」
「もう死んだよ。お前らはこれだけで生き延びろ……」
「どうしてそんなことが……」
「まあきっと校長からの試練だろうね」と、給食の正体不明な老婆は自分の頭の白い帽子を取る。金色に輝くフサフサの髪が出てくる。「これだけで生き残れっていうね」
「なるほど」

おれは一個だけの揚げパンを手に取ってから数学室に戻った。

九州の爆弾を想って表紙を描く。死人の衣服に信号機を当ててから事故の発生率を調べる。なるほど、二年前の卒業生たちは頭からジャムを被って逮捕、と……。

おれは夕暮れの中の彼女に出会ってその日の出来事を誘う。そして白髪の彼女の死にゆく姿に惚れこんで一生を音楽の中で過ごす。
「掃除してるだろ? なら球速を調べるべきだ」
「どうして野球部がないんです?」
「さあ……」

おれは室内から迸る彼女の香りに浮かれながら真実の教室に出会って悶絶する。さらに三日後の死者蘇生に立ち会って向こう見ずな性格な彼女のことを出迎える。
「ようこそ生き返ってくださいました。ここは楽園です」
「ぼくが求めているのは天国なんだけど」
「あ……」

おれは自分の失敗の中からどこが棘なのかを見つけ出し、合唱の中心を見つけた時の喜びを浴びる。すると目の前の彼女が溶けだし、今までの全てが幻想であることを察知する。「なにもかも嘘だったってことか」

するとおれの中で一つの部屋が出来上がる。頑丈な黒い室内で一人の、山羊の頭をした生命体がプラカードを掲げているのが見える。
「なにこれ」
「はい。全てはこの部屋のためです」

おれは男の持っているプラカードを見る。そしてそれが最古の研究者たちによる短い数式であることを知る。
「これがなんだっていうんです? これなら授業で習いましたけど?」
「はい。正直なところこれは関係ないんです」と山羊頭はプラカードを真っ二つにすると口を開き、その大口でカードをぐしゃぐしゃと咀嚼して飲み込んだ。
「ならどうして……」
「君は間違いを侵した。そしてそれによってこの部屋ができた。それは幸福なことです」
「ふざけんなよ! これのどこが幸福なんだ?」

おれはそうして自分に絡みついている鎖をがさがさとやる。すると床から伸びている鎖がぎゅっと縮おれは床に貼り付けられたような恰好になった。
「おい! どうしてくれる! 放せよ!」
「だめです」

山羊頭がおれの腹の位置で腰を下ろす。おれに彼の体重がかかる。おれは両手両足の巻き付いた鎖を動かして音を出す。
「やかましいですね……。ではこうしましょう」

山羊頭は着ている白衣の裏からセロハンテープを取り出すと、おれの右腕と左腕を床と貼り付けた。そして指をパチンと鳴らすと、鎖がどろどろに溶けて床に吸い込まれていった。おれは腕を動かそうとした。しかし一切動かなかった。テープが鎖の代わりになっておれの腕を拘束しているようだった。
「なんだこれ」
「動かないでしょう? 我が財団の新商品なんですよ、これ」
「新商品?」
「おお! 興味ありますよね? 実は今日こうして出会ったのも、それが目的なんですよ」
「目的? 財団が?」
「はい」山羊頭はうんうんと頷いた。そして口の先端をおれの右耳に近づけた。「貴方をスカウトしたい」
「スカウトだって?」

おれは至近距離になった山羊頭をじっと睨んだ。すると山羊頭は顔を放した。
「財団は常に新しい人材を求めています。そのサーチ力は並大抵のものじゃない。貴方は我が財団に入るにふさわしい……」
「そうか。そういうことだったのか」
「はいぃっ!」山羊頭はキリキリする高音を口から放った。その顔に変化はなかったが、おれの目にはどうしてか、喜んでいるように見えた。
「で、どうです? 入りますか?」
「ああ……。はいるぅ……」

おれは右腕の瘡蓋のことを考えながら答えた……。明日の抑揚が脳裡に降り注ぎ、腹筋から電話を無数の声に分けてから楽に飛ばした。

支配の欲から解放された公園と遊具の相性と排気ガスの塊……。おれは飛行機の裏側に答えを探してへこんでいる水を飲む。横から女が質問をしてくるが、さっさと車に乗って全てを無視する。

差別的なサラダに唾液を垂らす。彫刻が独りでに喋り出したことで財団が動き、その床に落ちていた歌唱力の種を廃棄物ボックスに入れる。おれは甘いモノを食べてから寝転ぶことにする……。
「ねえ、どうして君はそんなにも明るいの?」
「電池で動いているから」と笑う彼女は制服をめくり、腹に出来た四角の亀裂を触って外す。中には単三電池が五本入っていた。
「ホントだ!」

おれは叫びながら彼女の電池にゆっくりと射精する……。後からロケットの推進力の激突が待ちわびて緑茶と友好関係を結んでいる。

美しいリーダーの気質……。抑揚の音と麦茶の必要性……。小声で降り注ぐ脳のカスと削られた大声……。さらに調子の良い煉瓦の並びとカクテルが固まる瞬間。雑に混ぜられた台風の目と肘と腕と活性化したドミノの正しい使用用途……。二本の棒を探して周る赤い頭の講演の常人。

逆さまの呪文を口ずさんでから出所する……。提出期限を大幅に過ぎた答案用紙を広げて次の国への侵入方法を模索する。
「おれは国賊になる……」そして手持ちの辞書で『国賊』という単語について調べて知的になる……。

脳が震えて電撃を産み出し、全ての女子小学生の机の中身を把握する。階段を下る女児たちの会話の中から新作の彫刻のスタートを知る。「おれの脳はまだ創作をしたがってるんだ」万年筆を指に突き刺してキーボードを破壊する。歯列がむき出しになっている作家に人形を持ち込む。本書の最期の軌跡にような道に脱糞をして匂いを立たせる。

造花……。祭壇の中心……。入り組んだ墨と……、自動販売機の硝子のケースの音……。そして、再現の序文……。
「君は何者なの?」
「電池」

そして彼女は……。

透けているオーケストラの花弁と風の方向に依存した太陽たち……。銀河系を崩壊させる七人の知的生命体。喇叭の係と紙切れの端の黄色。

2023年2月17日公開

© 2023 巣居けけ

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