「僕の脳内には簡易的なダウジング能力が備わっているんだ……」と豪語する男は目を閉じ、鼻先の感覚だけで女児の股の泉を発見する……。「うーん。これは性的な香り……」
微細な空気感と、空間の中心に佇む冷凍保存の食肉製造機のガソリンだらけの音……。
「ところでハンバーグを作ってくれないか?」
「嫌だ」と囁いて机をこつとやる……。
「ハンバーグを作ってはくれないか?」
「嫌だ」二度ほどこつとやる……。
「私に一握りのハンバーグを作ってくれないだろうか」
「嫌だ」五度ほどこつとやる……。
最終的な想定をいつでも頭にいれておけ……。そして脳の中の一番奥の空室に溶解液を流し込み、主婦たちの反応を予測して成長を遂げる。
おれはビタミン製造工場の扉を叩く。そして向こうから流れてくるレモンの香りの風に背中を預けて空砲を考える。さらにスタッカートが描かれている大量のうちわを取り出し、二階建てのマンションの屋上で炬燵に入っている彼女の夕暮れを願う。
どのような理化学的模様が彼の心を刺激しているのか。おれは右手に握っているカードを一枚一枚丁寧に机に乗せ、彼の反応を見る。すると彼は自分の指を口に入れ、そのまま噛みちぎってしまう。おれはすっかり怯えた調子で彼に十一本目の指を捧げる。彼は血肉にまみれた歯列でおれの指を睨んでくる。
甲殻類の彼は夜になるといつも尻の穴から人糞を吐き散らかし、月の形によって持ち上げる鋏の上下の回数を決定する。おれはそんな彼の横顔をスケッチし、出来上がったデッサンの跡地をビタミン製造工場に送信する。
余裕のある……、チベットのような風格……、おれたちだらけの街……、溶解液。おれの予測変換と並大抵のキーボード専門店入場……。「まさか君のような風体の男が僕の尻を狙っているとは思わなかったよ。だって僕たちは通信兵じゃないし、店先の城の中に薬を挿入することもできないじゃないかっ! 計算式と空気感のパイプや、娼婦の声色と旅立ちの抑揚が僕らに突き刺さる」そこで中華料理研究家は立ち上がって右手を上に向ける。「僕たちは向かってくる波に立ち向かうのです! そして水滴を顔面で感じ、四肢を振るわせて試験管が割れる音を聞くのです……」
裕福な家庭とあまり裕福ではない家庭と真実の家庭……。「どうして階段を下るの? 僕たちはまだ蛸の足を食らってすらないよ」そして迫り来る草原の音と波のような白くて剥離のあるカクテル……、講師の音とチョークの落ちる速度……。
全国の通信兵たちは自分の都合で送信器具を破壊して階段を上がる……。
巻き上げ装置に絡めとられた女児が泣き叫びながら人糞を要求する……。
四肢をもがれた女児……、脳天に陰茎を指し込まれた女児……、溶けていく女児……、女児たちは血を流し、男たちは陰茎を大きくして熱のある吐息を漏らす……。
おれはいくつもの女児の死体と性交をしてきたが、彼女らには必ずそれ相応の意思がある。まるでおれの陰茎の心地に答えているようだ……。おれは自分の化けの皮を剥ぎ、自分の泥のようにどこまでも途切れることのない性欲を彼女にぶつける。すると彼女らもそれに答えてくれる。たいていは丘に上げられた若鮎のようにうねりうねりと蠢いているが、まれにおれの煽動する感じの陰茎に応答してくる子も居る。おれはそんな特異的な彼女の唇を楽しく奪う。彼女ははねながらおれを飲み込んで一つになろうとしてくれる……。
叩かれたドラムセットと古ぼけた緑茶入れ……。旋回して回る飛行機の乗組員たち……。「かすめ取る? いいえ……」数学教師の女が注射器で人を殺している……。
奇跡のペンウィー・ドダーは暗号を見つける……、いいや、彼女は子持ちではない……。しかし彼女は自分だけの注射器を見つけて素手に起こす……。「私は医学者だ」先生、どうして彼女を医学者にしたのですか?
道徳的は膣の壁が蠢いている。カリキュラムの生徒たちは自分だけの小説の生み出し方を知っているが、それを自慢げに掲げることは絶対にない……。彼らは鏡に映る自分を見つけたことがない。
株式会社ラストリスの取締役社長は常に夜間に全裸で狩りをする。彼は、視られる光の波長域が、他の人間よりも広いのだ……。
そして課長の彼は自分の縄張りを尿で記す。取締役社長の彼はそんな尿の色を高機能の目で見つめる。会社が木製の歯車で動き出す……。
「なあ、ここに飾ってある、ビタミンライフルってなんだ?」
「そりゃあお前、ビタミンさんが作ったライフルだろ……」金切り声で全てをかき消す。人事部の彼には何も聞こえない。「なにか言ったか?」
また、この優秀なビタミンライフルに装着できる銃剣は、二キロ以下のものに限ります……。
花瓶を投げている主婦の顔。右手だけで嘆きを否定している船乗りの女。ポーカーフェイスの男が万年筆で切手を切り裂いているぞ……。
流されかけているボートの木片に、駅員から強奪したドアノブを擦り付ける。すると百足の母親が谷から這い出てきて、右手だけを打撲混で埋め尽くす。鏡の狭間に取り残されてしまったレジ係がカウンター席で男らしさを嘆いて叫んでいる……。
男はランプを消して自分の似顔絵が記入されている壁に唾液の玉を飛ばす。
トランプ・カードの音色……。自分からサイケデリック的世界観に飛び込んでしまう担任教師……。「私が配達員だと? いいえ……」
ふてくされている父親にナイフを投げている息子。次期大統領の男がスーツの音色で回転式……。
おれはいつにのまにか自分の手の中に百足の彫刻が乗せられている日のことを思い出す。(この彫刻は一年中唾液を垂らしている面長の顔を持った長身の男が二か月で作り上げた作品で、裏側にこの街で最も安価でコカインを手にする方法が刻まれているという噂がある……)おれはアレックスだかシマックスだかソリトメルンだかの名前の男の部屋を訪ねてその彫刻を手渡す。そして手土産に彼の地下二階のパイプ室に案内してもらう。
急な階段を下った先にパイプ室の出入り口が立っている。それ以外の壁は漆黒に塗られているためおれには視認できない。なので扉だけが浮いて見えている。
「それで? ここから先が部屋かい?」とおれは本職の数学者的な笑みを彼に向ける。
「ええ!」と彼は笑っている……。
おれは階段を最後まで下りてから扉のノブをひねって手前に起こす。(この扉はノブを握った本人が思い描いた方法で開く。おれの場合は自宅の玄関扉と同様に引くことで開くように念じた……)
中には赤いパイプが張り巡らされていた。おれはその八畳ほどの部屋を二度ほど見渡してから中に入った。
「これはすごい……」
「感激だろ? ここにきた人間は誰だって感激する」
そして迫り来るパイプからの鉄の圧力……。おれの割れてしまう眼鏡の音……。「私はこのゲームを一度プレイしたことがあるが、それは今から再度プレイする上であまり関係ない……」
それから下っていく腹の大きさと硬い物質的で昆虫的な笑みの作り方。「私は二階建てのマンションの中で書類を手にしたんだ……、財団の群れ……、草食動物たちの亡骸……、おれたちだらけの茸の遠吠えと書類の整理……」彼は両手を広げてから大きく叫んだ……、そして新しいモータースポーツの音を投げた……、偽物の信念……、そして扇風機が再開する……。「わかるだろ? おれだ……」おれじゃない……。おれではない……。貴金属類の音……。「さらに崖から落ちたんだろ? おれは母親の羊水の色をズバリ言い当てることができるんだ」それから二人組はつまようじを取り出し、山の山頂のモデルになったカクテルの模様を破裂させる……、有機物の音たち……。
アレックスとシマックスとソリトメルンの三人は楽器販売店で騒ぎを起こした……。彼らは三億円の資金で土地から全てを買い取り、その中で奇跡の闇鍋を発生させた。アレックスはその鍋の汁で脱落して田舎に帰った。シマックスは二本の指で鍋の後始末を発生させた。ソリトメルンの二重になったパターンのパネルと鍋から立ち上る薄紫色の焦げ臭い煙……、門の前……、全員死んだ……、前立腺を露出させているアレックス……。階段を下るべきなのかと安易な考え……、血飛沫を巡らせている自立支援型の店長……。
そしてペンウィーは、いつもの試験管の中で三つ子を育て始める……。
さらに山の麓でさばかれている女のいくつもの死体と電撃で焦げた百足の死骸。「おいおい、こんなの罰当たりじゃないか」
おれはいつものココアの手順の中で山羊の体毛が蔓延っているのに気が付く。そして右手の指を瓶の中に入れ、この原型の無い勇ましい意思がこじれていくのを感じる。ココアの香りが鼻孔に吹き荒れ、山羊の鳴き声が二オクターブほど上がって聞こえる。おれは耳を塞いで百足のお守りを握りしめる。瓶が震えて落下し、山羊が絶命する音が鼻孔に絡みつく。夜を迎えて珈琲ゼリーを作りだす。友人が突っ込んできて全てが下痢に帰る。
荒れている毛並みの脳が迫ってきている。おれは迎え撃つ銃撃戦の中で次の彫刻のアイデアを見出し、生暖かい肉の香りを脳で直に感じる。たぶん、三日前の脳の中では通常通りの街なみが平行して行われているはずだ……。おれは下水道に続く道で講義をしている山羊頭の男に問いかける。しかし彼は落下してきたチラシの文字列に夢中で何にも気づかない。どうしてこんなにも空中的な色が目立つのだろうか。どうしてこんなにも正統的な数学の亀裂が目立つのだろうか。おれは山羊の鳴き声の回数で自分が一日にどれだけ絶頂するのかを予測する。山羊はたいてい鈍感でのろまだ。まれに数学的な優秀さを持つ山羊もいるが、九割の山羊は丸い目の通りのゆったりとした思考を持っている。山羊には少しの好奇心もない……。山羊は食料さえあればいい……。
おれはいくつかの山羊の死骸を見つめてからその丸い目の中で繰り広げられている街の色を観察する。さらに見つけられた処分方法の中で最も危険で最も優秀な医学の即席屋台を見つける。
応援歌を道路に吐き出してから進む水滴の音たち……、株式会社が瓦解する音、力士たちの足音、さらに養殖と鋼の精神力……。百足山羊が足跡を付けてから洞窟に身体を突っ込んでいるぞ。
陰茎の亀裂と水分だらけのパイプ室……。向かってくる女たちの持っているナイフに『噛み砕き』を命令している番犬の黒い抜け毛。パラレルワールドにも行ける……、水滴も全部飲める……、暗転と白い膜……、操縦の掟。「僕は歩行訓練だけでいいよ……、母さん」
おれはそれから過ぎ去っていく教室の人間たちの流れをじっと見つめる。そうすることで吸盤だらけの黒板の合間を見定めているのだ……。彼らの学級システムは実に興味深い……。そうすることでおれは数学の授業で挙手をする。しかし観測者のおれは指名されることはない……。
チョークのカツカツという音と生徒たちの万年筆のガサガサという音が混ざり合う……。おれの耳介に突き刺さる……。衝動的な授業の音……、眠れる生徒たちのノートをめくる音……。おれは二度目の挙手をする。
「まったく。君は当てることなんてないんだよ」
「どうしてですか……。おれは立派な生徒だ……」
「君は生徒じゃないよ」過ぎ去って行く教師の指揮棒の振るう音。
おれは念力の信ぴょう性を確かめるために肩を壊すまで座禅をする。やがて視界の隅に山羊の頭が常に見えるようになる。おれは驚いて二か月前の食パンを食べる。腹が痛くなりトイレに駆け込む。すると先客の山羊頭男がおれに話しかけてきてくれる。
「それで? アンタはどうしてここに?」
「は、腹が……、痛くて痛くてしょうがないのです」
「なるほどね……」それから山羊頭男の尻から糞が出てくる。あまりにも強烈な破裂音が個室に鳴り響く。
「ひどい音だ……」
「ああ、しょうがないだろ?」
それから二時間の逃避行……、おれたちだらけの百足の音……。「おれは尻から百足を出す……」
痣だらけの山羊……、収縮していく山羊と眼帯の女。発芽の調子とロクデナシたちの顔色……。「おれはこんな奴ら知らないぞ……」と叫んでいる科学者の頭を殴りつける。すると彼の眼窩からビックリ・マークが飛び出して華やかな音が鳴る……。
「空気がちげぇんだ」
「なら、道路?」
「いいや。おれたちは山羊だ」
公民館の工場……、サイバーチックな機械の音……、硝子……。「それからどうした? アンタはどこに行くんだ?」
いくつかの林檎のような確定された銀河の流れ……。酒と氷の密度と吸引していく教室の風景……。おれは坂の上でそれらを観測しした後に、それらを報告するために事務所に向かう……。
「ボス! あんたに報告だよ!」おれは出入り口の引き戸(この扉はおれの意思とは関係なく常に引き戸)を大げさな動作で動かして、室内の一番奥の位置でふんぞり返っているボスに声を投げる。
「まずは手洗いだろ?」と、ボスは低く呟く。
おれは彼に流されるようにして室内右側の手洗い室に入る。そして白い洗面台の上に設置されている金属の蛇口をひねり、水を出して手を洗った。
「それでボス! あんたに報告だっ!」
おれは手を拭きながらボスに歩み寄る……。するとボスの姿が何重にも増えているように視え、次いでボスの顔色が変わっていった。「あれ、ボス、あんた風邪気味かい?」
「そんなことないが……」ボスは今にも消えてしまいそうな微細な蝋燭の炎のような小さくとろける声でおれの右肩を狙ってくる。
湧き出てくる水とそれを止めるための蓋のような黒くて硬い円形の何か。おれはそれらをバッグに入れてから投げ出し、屋上に居るはずのナイト・ガーディアンに連絡を取る。深夜三時までに電話を鳴らしてはいけません……。また、三時前に呼吸をするためには、例の主任研究員に声を掛ける必要がある……。
おれは階段を下って集中治療室に入った。するとここから一番遠い位置に執刀医が立っており、おれは当てられた雨の音や冷たさを彼に与えるために作業着を着て入室し、執刀医……、全ての医療用メスや電子パンフレットの中の白色……、人間を切る音……。とても豪邸とは思えないゆったりとした動作の中の治療方法。
「蟹を置く? いいえ。私は三日目の深夜に対応するために貴方の顔面を三角形にする義務があるの……」
「でも理解者だよ?」
「いいえ……」そこでアンジュリーは首を振るって両手を伸ばす。二メートルの彼女の優秀な腕たちはおれが判別できない距離の高さの山の上にあるガムを取り出して戻ってくる。「ね? これでいいでしょう?」
惨劇の模様を記す音たち……。クローゼットの色を選ぶ……。ニューヨークのホームセンター……。贅沢な死。
おれは公共交通機関の世話になるための手順から部屋の全ての蝋燭の位置を特定する。
流れていく道路の破片と時計の大きな針たち。百足が他の昆虫を連れてくる。おれは配達されているクローゼットに入って隠れてからロッカーの冷たさを指先で演出する。配達者は急いで家に帰るべきだし、マッチポンプを選んでいる教授は自分の研究室に閉じ籠るべきだ……。
花火は神様の射精……。おれは二階建てのバスの中心で陰茎を露出し、同時に乗り合わせた女児に擦るように命令する。彼女はすっかり忘れた『コキ』の方法を電撃で呼び出し、すぐに遂行してくれる。
バイノーラル・ギャングたち……。おれは南の停留所でココアの蓋を開ける。すぐに裏側に貼り付いている百足の死骸を舌先で舐める。ビクンと跳ねてから百足がココアの中に消える……。
さらに、自分の腹が鳴ったと勘違いを起こす……。地震が吹き飛び、火山の活性化が確認される。本棚が倒れ、おれの足元に恐竜の図鑑が転げ落ちる。おれは何気なくそれを開き、トリケラトプスの絵柄を記録する。
『穴を開ける』みたいなとても短い……、動作……。恐竜の足跡や台所の隅っこに付いているガラス・ケース……。「ええ、人並みの人波」
全世界の山羊学者たちが一斉に頭を光らせて自分の研究所や書類の山やその他どうしようもないレント・ゲンの写真をかき集め始める。おれはそんな波にあてられて駆け出し、自分の研究室の中で最も古い遺骨を取り出して粉砕する……。
「やめてください! やめてください!」と助手の一人が叫んでいる。(まったく。おれほどになると助手も複数人雇っているんだ)
早急に過ぎ去っていく芸術作品やリズミカルの心臓の音たちと色紙の味や早朝の硝子瓶……。カリキュラム……。山羊たちのモータースポーツの音……。
おれは自分で作った紅茶の色でその日の尿の調子を検査する。山羊たちは助手の中でも最も書類の執筆速度が高い研究員の頭に奇声する。そして自分だけの電波を放出し、その他の研究室に問いかけを続ける。「おい、おれはプレミアムなゼリーしか食わんぞ……」波のような電波の塊が迫ってきている……。
人々はそれらを『就職する』と表現するが、おれはそうは思わない……。さらにその日の診察の中で検査の報告を待つ。さらに時として、肉体を持たない透明な山羊たちが肉のプールに飛び込むこともある。おれの素手が自動的に動き出し、次にこの診察室に入ってきた患者の頭蓋を粉砕し、中の脳を摘出して山羊に与える。おれはそうすることで電波の報酬を受け取り、次の学会の準備に取り掛かる。おれはゆったりと開いていくドアの前でいつかのパイプ室のことを思い出す。そして膨れていく脳の大きさを眼窩の中で移し、無差別的で官能的な山羊の素手の泥が流れてくるのを感じる。
なあ、収縮して去って行く山羊についてはもう書いたのか? たっぷりとした描写の中で、支持者に与える恐怖の割合はどれくらいなのだろうか……。というわけでおれは港に残り、次にやってくる紫色の金属の音を確かめる……。「なあ、山羊についてはもう書かないのか?」
トリカブトの舌たちが叫んでいる……。阿片の舌? いいや、それには続きがあるはずだ……。
配達員が勢い良く立ち上がり、おれの不祥事について叫んでいる……。劣等感に不祥事、死体まさぐり屋の男に不祥事、はす向かいの八百屋に不祥事……。
おれはときどきそんなふうに思い出す歌の一部を口ずさみ、それによって出てくる影響を記した紙に唾液を落としている。円形に広がる唾液の線はやがて国家となり、出現した大統領がおれに抗議してくる……。
「それで? 一国家の大統領サマが、おれになんの用だ?」
「あー、あー……。これからのこの国の行く末についてだ。君は私たちのことをただの液体の塊だと思っているようだが、残念ながらそれは正しい認識じゃない。我々はここに存在しているし、ここで営みがある。そして鋼の精神とは紙にしか宿らず、我々が記すダストルンズだとか、パイロンオドルだとかという薬についても、私は一切知らない、認可したこともない。とにかく我々は川の隅で暮らすような小さな虫じゃないし、君には感謝している。そうだろ?」
「あー……、えっと……」おれはいくつかの国家との連携を思い出しながら彼の怪電波的演説を受け入れる。そうすることで自分の意思が彼の電波塔の中に紛れ込まないようにする……。「と、とにかくピザを食べないか? そっちにはないだろ?」おれは死んでいった仲間たちに敬礼をしながらこの腐った大統領を暗殺する計画を立てる……。これについては何を見なくとも暗唱できるし、今すぐトイレの壁に書けと言われても難なくできる……。
道徳的で献身的な褐色の母親のような風体を示している鮮やかで脆い空虚な風。
詩人の香りは学校内部に吹き荒れ、そのびゅうびゅうという音が学区内に潜んでいた誘拐犯の耳介を強く刺激して彼の生活をかき乱して反抗的意志を阻害する……。
手術の形式を採用しているゲームの中で三百人が犠牲になる……。このゲームは数学で赤点を取らなければ誰でも参加できる……。
誠実な男と肉体の描写が得意な男と楽観主義な男とが大げさに踊りを指導して騒ぎ立てる。「我々は理解者を求めているのですよ。そしてやってくる、劣勢……」最後の宇宙の隙間に入り込む電波の塊……。道徳の授業やそれに付随する歴史……。稲妻の子供山羊など……。
全区画のテレビ発進局局員はひっきりなしに電波を阻害して進んでいく……。
さらに数学的な階段の位置に拳をぶつけてから指揮棒を手に取る……。
オルガンの傍らの男……。掃除はすでに済ませたぜ……。おれたちの教室の裏側……。
人々は究極の微細を求めてあちこち駆けまわる。そして穴の中に発見した自動的な自立装置に頭痛を感じて下がる。さらに凍えた拳がようやく電波的な階段から剥がれて転げ落ちる。おれはいくつかの例文の中から温かい人間の温もりのような何かを発掘し、横でその動作を見つめていたおれの友人そっくりの男に渡す。男は喜んで受け取り、かわりにおれの足元に究極の微細を落として去ってゆく……。
観測する不確かな連続した存在の脳……。おれたちはそう名付けられたレント・ゲン写真に飛び込んで終わりに向かう。広大な港を愛した釣り師の音が丘に栄えた街並みに吹き飛んでどこかへ消えてしまう……。縮こまってしまっている丸い何かの付属部品が連続で磁石に反応して街の一番高い建物に集合して金切り声を上げている……。『脳』はそれを読み解こうとしている人間や山羊に、どこかの国のランチのように沈黙を要求する……。そして金属の温かさに頬を撫でつけて自身の言葉で集会を紡ぐ……。
道化師のシマックス・ロックバトラー……。三千年の世界の中心で磔刑……。
そして彼の血飛沫を存分に浴びた男たちは、その街の放送局に新聞紙で作った手紙をよこした。
「なあ! おれたちが百足だろ?」
「いいえ……」主婦のダイアンは右手の金属バットを振り回しながら、それでも口調だけは冷静に持ちこたえていた。「我々は見捨てられたの。この世界に」
「この世界が中心なんだ!」
コンビニエンスストアの陳列棚を縄張りにしている猫たちはお決まりのキィキィ声を出しながら店員が持ってきてくれる苦い田舎町特有の珈琲を待っている。(珈琲を飲むなんていかにも猫らしい)おれは机から離れて山羊図鑑を尻にしまい込む……。
アレックスのポルターガイストに驚くべきではない……。おれは西から東にかけて流れていく川に身を任せて研究材料を求める。おれの自宅のトイレはそこまで落ち着かない……。
水曜日の目次……。おれは最低限の準備だけで崖登りを再開する。蟻の大群が攻めてきておれを飲み込んで溶かしてしまう。おれは右手だけで脱出を試みるが、鉄のような肉片の震える動作に圧されてしまう。
ステン・サブマシンガン……。さらに鉄で作られているレミントンたち……。防空の係員のモシン・ナガン……。
謎の閉塞感が肩を襲う。「なあ、赤ちゃん言葉で癒やしてくれ……」と思う。そして右手に埋め込まれてしまっているランドセルのミニチュアをねじ切る……。鮮血が薔薇のような様子を呈する。おれは手のひらを舐めて鎮火を試みる。すると市長がおれに話しかけてきてくれる……。
「どうかね? 進捗は?」
「ああ……、私はいつもいい調子ですよ……。へ、へへ……」
おれはいつしか見つめたイタリアンの料理人のような声を特別に演出して笑い声を出す。すると後方のプラカードを掲げた男が驚いて尻もちをつく。「まさか再開するとは……」
「君はイタリアン・マニアか?」と市長が呟いて歩み寄る。おれは理解者にふりをして右手をスーツのポケットに入れる。(右手をポケットに収納する動きはこの街では理解者の印……)
「それで? 君はどうしてここでプラカードを持っていたんだ? んん? これは犯罪山羊抑制……」
「やあ! やあ! やあ!」
「……どうして山羊のマネを?」
市長は男が掲げていたプラカードを見つめる。するとそこに描かれていた山羊の暗黒で空虚なイラストに染み込んでいき吸い込まれて消えてしまう。おれは忽然と消えた市長の行方を探すために探偵の仲間入りを果たす……。
「君が探偵だとして、ぼくは何なんだい?」
「助手……」
おれはトレンチコートを翻して、彼を連れ添って街の中へと溶けていく……。後に続く音の連なりがおれたちを出迎えてから書類の制作技術に見惚れてメモを取る……。おれは自分の万年筆を取り出して男のプラカードを貫く。
「どうして破壊したの?」
「過去との決別……」おれはとろける山羊らしい声でその場を制する……。男のくたくたになったプラカードから山羊が発生して逃げていく。「あれは野生に帰るんだ」
酒と引火の可能性……。竜巻の予測範囲内の街並みや商店街の活気のある声援……。コントラストの判明や試験管住まいの実験対象者……。ユニーク・バリエーションに願った不確かな踊りとそれに付き添う形の泥のような音の集合体……。「まったく、黒板消しみてーな頭しやがって……」とおれは思うことにしている。そうすることで美意識の改善を図り、さらにモデルチェンジのようなギアの回転を叫んでいる。
カリスマ・ジョークと当てられた指揮棒……。今度はお前の番だよ、医者様……。ブリキで作られた学会……、メスを入れる準備はできたか?
カクテルの色は集合体の無意識の中で掃除を行い、メッセージ・ボトルの進路を決定している会社に波を与えて大胆なレバーを操作している。
病気にかかった山羊の正しくない輪郭の音と階段から転げ落ちる人間たちの四肢の蠢き……。おれは嬌声の局長たちの肉を食らってから鍋の中の……、どうしようもない熱湯たちが流れていく音……、微細な振動と洞窟の風景……、おれは待合室でペンウィー先生に会う……。
ペンウィー・ドダーに対する印象は人によって違う。彼女の数々の奇行を前にして憧れを抱く人間は、必ず医学者としての才能がある。逆に彼女のどうしようもない脳に嫌気を感じている人間は医学に携わるべきではない……。メスとメスが弾ける音……、ペンウィー先生が入室する音……。
おれはいくつかの音を目印にした文章を書く……。そうすることで自分に降りかかる状況を客観的に見つめなおし、次に迫り来る切開に完璧に対応する。おれは肉の洞窟の中で蠢く医学者の卵ではない……。
「患者の顔面を殴って、遺族に花を渡せ……」
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