顕微鏡の中で開催されるイベント……。排出量を絞ってから紙幣の臭いを確かめる……。「すみません。突撃インタビューです。自分からインタビュー対象に突撃するタイプのインタビューです」
「それで用事とはなんですか?」
「幼児? 私に離乳食は必要ないですが」
「どういうことですか? 我々は対立のさ中でできた恋仲ですが、私と貴方に所属するダニに三つの針を刺すんですよ?」
二年前に収容された『ビペリデン』、『オランザピン』、『ラツーダ』に加え、今期の犯罪抑止力大会において、新入りの『オロパタジン』、『カルボシステイン』、『アンブロキソール』、『モンテルカスト』たちが、第五保管室に入った。彼らは古株の連中に痰を吐きつけながらも居心地の良い独房を気に入り、訪れることのない朝日を浴衣と同等の薄さを持つベッドの上で待った。
「まるで動物園だな」と看守連中は煙草をふかしながらつぶやいている。新人のジョンは彼らの中で最も凶悪だと言われているアンブロキソールの眼光を餌にして他の収容罪人を手ごまにし、自分の地位が上がることを願っていた。
「アレロック、ムコソルバン、シングレア……」春の軋轢の中に住む冷淡で叙述的な錠剤たち……。蔓延る歯列と歯茎の音……。「おれは広告塔をなぎ倒すぞ……」
粉末状のラツーダ……。そして紅茶に溶かされているビペリデン……。おれは薬局の中でサブマシンガンを連射して、でぶの親父に新しいアレロックを持ってくるように叫ぶ。さらにラジオ放送で幻のライスシャワーが走っている姿を実況で確認する。
よくわからないインベントリのような何かが走っているぞ……。そしておれは全裸になり、証明すべき問題を額に当てながらミュージシャン気取りの波に乗る。すぐに山羊たちが追いかけてくる。
「どうかしましたか?」おれはアスファルトの道の中心で振り返って山羊の女に唾を飛ばす。
「はい。忘れものです」
「私はどこにも行ってませんが」
「貴方は薬局に出向いたじゃありませんか!」
「ああ……」と叫びながらおれは右手を山羊女に差し出す。
すると山羊女は尻の穴に隠していた白い袋をおれに手渡してくれる。なるほど……。ラツーダが追加で二十錠ほど入っているな……。
創造と、『破壊』。おれは目の前で山羊女が崩れていくのを感じながら道を進み、西の方角で自分の下着を露出させながら焼き鳥を売っている男に唾を投げる。すると彼のスイッチが入り、すでに暗闇に包まれている頭上の液晶画面に注意喚起が灯る……。
「これでおしまい?」と並んでいた少年が屋台の看板に唾を放つ。
「いいや……」男が自分のはげ頭のさらに上に灯った『注意喚起』に目を向ける。「まだだ……」
おれは東の夜空を見つめながらあの山羊女から手渡された袋に手を入れ、適当に錠剤を取り出す。「なんだ、いつもの梱包じゃないのか」
そして撮み出した五錠のラツーダを男に投げつける。さらに二錠のビペリデンを液晶に飛ばし、ひびが入るのを見つめてから少年に笑みを向けて、「おれたちの消耗品だろ?」と誘いを放つ。
カルボシステインを粉にしろ……。おれは朝日と共に和装の国へと飛び立つ。さらに車道ですき焼きを開始し、チャペルの色で湯呑を満たす。
トロッコの中でげっぷをしているはげの店長……。響きだけで採用した音楽的記号……。「株式会社? ははっ、あれは危ない薬みたいなモンさ……」
すると商人の集団たちがコンクリート・ミルクを飲んでから排気ガスのような口臭で講義を再開する。
「昨日、当てが外れてよぉ……。五万円落としちまってよぉ……。炊飯器で尿意を取り戻して、お母さんの子宮で寝泊まりする夢見てよぉ……。おじさんのナイスバディ? もちろん錠剤。えへ」灯台。
それからおれは数多の声の中から正解の声を聞き分け、物騒でぶっきらぼうな女たちの自問の声を聞いた。「どうする? 『それが勇気だ』が、正解だ……」
おれは新しい錠剤を買いに行くために家から出る。すでにふけと埃で視界が埋め尽くされている部屋から逃げ出すようにドアを開き、夕暮れの西の光に当たりながら自転車を必死にこぐ……。
五分ほどで薬局にたどり着いた。おれは自分の自転車をその場に捨てから入場し、颯爽とおれの右手に書かれた注文票を読み解く。
「ああ! 新作のカタツムリですね? わかりました。すぐに用意させます」
「用意?」
「はい。すぐに命令を出します」
すると受付女はカウンターの向こう側におぼろげな足で向かい、さまざまな薬が置かれているバックヤード室内へ顔面だけを突っ込み、鼓膜が震える怒声で、「カタツムリ一丁っ!」と叫んだ。薬局の全てが震え、同時に返事としての「了解っ!」が響いた。
おれは硝子越しに見えるバックヤード室内を眺めながら、どれくらいの時間をここで過ごすべきなのか……。五度目のスマート・フオンチラ見をし、すでにこの薬局に入店してから二時間が過ぎていることを実感する。「はぁ……」とため息を漏らす。するとカウンターの向こう側でせわしなく蠢くゴキブリ頭の白衣の男たちに緊張感を伝播させる。
「はぁ……」と受付の女がココアを飲んでいるのを目撃する。そしておれは居ずまいを正し、喉を鳴らしてから立ち上がる。
「あの、あなたは何もしないのですか?」
「はい? 私はただの受付ですが。私は新しく入店してきたお客に浮かんでいる文字を読み解いて、クスリの調達をバックヤードに叫ぶだけですが」
「はあ……」
おれは肩から下がって全身に伝わるガッカリの感情に吐息を漏らし、偉大な母親の言葉を思い出した。曰く、「入店の時だけ気負付けろ。それ以外はどうでもいい」だ……。
おれは自分がキャプテン・マニアになっていくのを感じながら身体の隅でレコードを鳴らす。すると耳鳴りを感じた受付女が両耳を塞ぎ、バックヤードのゴキブリ男たちがさらに両手をばたつかせて薬をパッケージに入れていく。
「はやくしてもらおうか……。おれの右腕はすでに枯渇しているんだ……」
「は、はいぃ……」
さっそうと現れた軍隊的な白衣の男は白の袋の中につまった錠剤軍団をおれに差し出してくれる。おれはそれをすぐに受け取り、同時に腕を袋の中に突っ込んだ。そして二度ほどガサゴソとやり、一番最初に飲むべき『カタツムリ』の薬を取り出した。
「おれの進化を見ていろ。そこで」
おれは錠剤の粒を人差し指と小指ではさみ、腕を上に掲げ、上を向き、錠剤を落とした。口の中に入った錠剤は舌の上に落ち、すぐに溶けておれの身体と一体化した。
それは魂の洗浄だった。あるいは細胞の再起動。身体の細胞の一つ一つが潤い、みずみずしさに満ちていった。おれは自分の視界が五十パーセントほど増幅していくのを感じながらおれに錠剤の入った袋を差し出してきたゴキブリ頭の男を撫で、受付女に接吻をして薬局を後にした。
まぶしい錠剤の色彩が、瞼を貫いて脳を溶かした。
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