かび臭いミートパイ。

巣居けけ

小説

1,035文字

新作の店長には迷路のような明るい色を孕んでいるのか? それによる計画書と全容があらわになっている火炎のミート・パイに水を放出して幼児を夕暮れに照らされた店内に放り出す……。曰く、『カリスマ・クッキング』だ……。

消耗品の男たちは口々に不満を垂れながら自分の顎に溜まっていく唾液の数を数えている。そして夕暮れの美しさに撃たれた男たちは下水道の蠢きを停止させる工作を手伝い、自分たちの主だった山羊どもに泡を吹かせる。

いくつかの路線を次いで、幻のカー・ミュージアムにたどり着く……。砂漠に乗りあげている株式会社に朗読のためだけの装置と製品作成機構によるベルトコンベア。おれたちだけじゃあビルディングを復活させることはできないが、仮病の少年は自分の瞼の裏の世界で街を作り、既存の死後の世界を全て空想だと決めつけている男には枕を与えて歩く。
「おれたちは下水の味だけで生きていくしかないんだ」職を失った男の一人が、見えないヘルメットに問いかけるようにしている。残りの男の数人はそのままの体勢で数時間を過ごし、さらに残った男たちはその寒さに両肘を震わせて絵を描いている。

地上の目まぐるしい赤色の生活には鈍器のような飽きを感じている商人とそのロクデナシ娘、彫刻のような巨体の涼しい力士を志願したが大食いのせいで全てが台無しになってしまった長髪の女、メモ帳での怪我が数回どころではない少女、心中マニアの骸骨のような風貌の白ワンピースの淑女、成長期を通り過ぎた手術着のバス運転手、教師だった女のような何か、空気に首輪を付けている童女、野心家の小学生、野菜のような声で希死念慮を叫んでいるギタリストの同性愛者、路上でブリッジをしている腰痛経験者の老人に上から水を投げている女児。
「ロイド眼鏡商店」は、街の中で最も栄えたことのある数学的で文学的な灰色で埃臭い一角を過ぎた先の坂の頂点に位置している。店内は薄暗く、極めてぬめりを得ていて、その上とても入り組んでいる。そして全ての細いカビで作られた道は最終的に風呂場へと通じており、店主が直接取り込んだ洗濯物の香りで満たされている。
「ここのミート・パイは一流だな……」と、船酔い上がりのはげた男がカビを片手に叫んでいる。薄暗い店内の中を反響していき、最も痩せた客のあばら骨を通過して出入り口に届く。
「ん? ここには料理もあるのかい?」

すると聞き捨てならないというように店主が薄闇から上がって来る。「いいえ。彼はカビを料理だと勘違いしているのです」
「どうして?」
「はい。この店が薄闇だからです」
「あんたのせいじゃないか!」店主のマッチが貼り付いている頭をペシンと叩く。すると木魚のような音が鳴り響き、ミート・パイ・マニアの男に届く。「それは料理ではありませんよ!」

2022年11月25日公開

© 2022 巣居けけ

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