この世で最悪で最低な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第24話)

実琴

小説

1,326文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

私達は夕飯の買い物の前に雑貨屋さんによった。食器を買うためだ。

「ねえねえ、お皿ってどれくらいあるの?」

「1一人暮らしだから多くはないけどそれなりかな?」

「そうか、じゃ茶碗とお箸買おうか!」

「そうだね」

と彼は優しく微笑んだ。

「あっ、これならいいんじゃない?可愛い」

私が手に取ったのは和風でシンプルなお茶碗だった。ちょうどペアになっていた。

「いいね」

と彼は言った。と、その時あるものが目に入った。

「このグラス可愛い!」

それは透明のグラスに金魚があしらわれていた。金魚自体は好きではないけど、モチーフは好きで一目惚れした。赤の金魚、青の金魚のペアのグラスになっていた。

「これ欲しい」

と私が言うと

「じゃ、買おうか。ペアになってるし」

と彼は言った。

「うん」

お茶碗に箸にグラス。

全部ペアになっている物を買った。私はそれが凄く嬉しかった。人を好きになれないでいた私が人を好きになってこういう恋人同士の様な事をするなんて思ってもいなかった。

この先、この人とどれだけ一緒に居られるんだろう。

ずっと一緒に居たい。そう思った。

 

買い物を済ませ、私達は彼の家に着いた。

「今日からお泊まり出来て良かったね」

と彼が笑顔で言った。

「うん、ママがすんなり許してくれるとは思わなかった。でも嬉しい」

「俺も。それにこれで俺も一緒にお酒飲めるしね」

と彼は言うと私にキスをした。

何故か照れくさかった。

「あ、今日の夕飯は何?」

「出来てからのお楽しみ。よし、作ろう」

そう言って私はキッチンに立った。

すると彼もキッチンに来て、私を後ろから抱きしめた。

「なんかこういうのいいね。俺の家でさくらが夕飯作ってくれるの」

「そう?」

「うん、嬉しい」

と言ってさらに強く抱きしめられた。

「もう、そんな事されると作れないんだけど」

「ちょっとぐらいいいじゃん。ずっとこうしたかっただ」

「これからいくらでも出来るでしょ?お腹空いてないの?」

「空いてる」

「じゃあ、向こうで待ってて」

「見てちゃダメ?」

「ダメではないけどキッチン狭いし。大人しく向こうで待ってて」

「はーい」

と言って彼はキッチンから離れた。

 

「出来たよー」

と私はテーブルに食事を運んだ。

「お、唐揚げ!」

「唐揚げは得意なの」

「美味そー!こっちは?」

「潰さないゴロゴロポテトサラダ。お酒に合うものにしてみた」

「早く食べたい!」

「その前にビール!」

と言って、私は買ってきたお揃いの金魚のグラスにビールを注いだ。

「では、乾杯」

と私は彼とグラスで乾杯した。

彼が食べるのを待っていた。

「唐揚げから食べる!ん、美味い!」

「本当?良かったー」

「この潰さないポテトサラダ初めてだけど、これも美味いね」

「でしょ?私じゃがいも好きだから、普通のポテトサラダも好きだけどこのゴロゴロ感が堪らない」

「うんうん、酒が進む。さくら本当に料理上手だね。」

「だてに小5から料理してません」

「小5から?」

「うん。まぁ、好き嫌いも多いから自分で作るのが楽なのもある。これから沢山色んなの作るね」

「すげー楽しみ!」

彼は本当に美味しそうに食べてくれた。自分の料理を美味しそうに食べてくれる事に幸せを感じた。

恋人っていいな。こうやって笑って一緒に居られる。なんて幸せな事なんだろう。

2022年3月16日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第24話 (全28話)

© 2022 実琴

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