お店を出て、私は大田さんの車に乗ろうとした。
「後ろの方がいいですか?」
「前に乗って大丈夫だよ」
と、言われましても…彼女の居る人の助手席ってなんか乗りづらい…
「早く乗って。大丈夫だから」
と言われたので助手席に乗った。
不思議な感覚。隣りに大田さんが居る。
「なんかすいません、送ってもらっちゃって」
私は申し訳ないように大田さんに言った。
「全然大丈夫だから、気にしないで。それに送りたいと思ってたから」
その言葉を聞いて、
ああ、この人私に好意を寄せてると思った。そして自分も…
お互い相手が居るのに他の人を好きになってしまった。
車の中でのたわいもない会話が楽しかった。
自分の彼氏という関係性の彼には全く持たない感情だった。
これが恋なんだろうか。恋をした事ない私の中で何かが生まれた。
男性と話してドキドキして嬉しくてどうしようもなかった。完全に浮かれていた。
初めての本当の恋に。25歳でやっと人を好きになれた。
私でも人を好きになれるのかと。
お店から自宅までは車にだとあっという間だった。
「ありがとうございました」
降りるのが名残り惜しい。
「どういたしまして。また会社で」
「はい。お疲れ様です」
そう言って私は車を降りて大田さんの方を見ると車の中から手を振っていた。
私は軽く会釈すると、大田さんの車が走り出し、それを目で追いかけていた。
車が見えなくなるまで。
あの人ともっと話したい、あの人の事をもっと知りたい。
生まれて初めての感情に戸惑いながらも、私はあの人が好きだと思った。どこが好きかと聞かれるとわからないけど、もっと一緒に居たいと思った。
「そうか、これが恋か」
大田さんの車が見えなくなって一人呟いた。
そして私は自宅へ帰った。2人きりの時間余韻に浸りながら。
"この世で最愛で最低な君へ"へのコメント 0件