この世で最愛で最低な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第7話)

実琴

小説

984文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

大田さんとの距離が縮まって来た頃、女性上司から

「今日、所長が焼肉ご馳走してくれるから来るでしょ?」

と、言われた。私の家は私の帰宅に合わせて母がご飯を用意して送り迎えをしてもらっていたので少し考えた。

「ちなみにメンバーは?」

と咄嗟に聞いていた。

「所長に私ともう1人の社員と大田さんそのメンバーだけだから秘密よ」

と返ってきた。

あたしはこれはチャンス?と思ってしまった。

「とりあえず母に確認します」

と上司に伝え、母に連絡をした。

25歳にもなって母に確認しなきゃいけない私も私だが…母は快く承諾してくれた。

「今日大丈夫です!」

上司に報告した。

もう1人の社員の男性は別の棟で業務をしているが、打ち合わせで一緒になるのでそこそこ交流はあった。恥ずかしがり屋なのかちょっとおどおどした感じの大人しい人。

同僚のやっかい者が居ない事も大きかった。

上司から 、今日の業務は他に任せて定時で上がりなさいと命令が下ったので、言う通り定時で上がり上司の車で焼肉店に向かった

他の人達はそれぞれの車でお店へと向かっていた。

お店に入り案内された席に行くと何故か私が奥に行くように言われたので奥に座ろうとしたら

「俺、ちょっとトイレ行ってきます」

と、大田さんはトイレに行ってしまった。

私の隣は上司とばかり思っていたが、もう1人の男性社員だった。

違う、お前じゃないんだよ…と思ってしまった。

トイレから戻って来た大田さんは私の前に座った。

前でも有りか?などと思ってしまった。

「石渡さん、何飲む?」

と大田さんが聞いてきた。

焼肉と言えば…ビールそれしか頭になく、私以外運転者なのに

「所長、ビール飲んでいいですか?」

と聞いてしまった。

「石渡さん運転しないからいいよ」

と言われたので心の中でガッツポーズしてた。

飲み物が揃い、一応乾杯をした。

その後大田さんが

「石渡さん何食べたい?奢りなんだから好きなの頼んじゃいなよ」

「上タン塩で」

「タン美味しいよね」

「はい」

そんなたわいもないやり取りしながら食事は終わった。

すると女性上司が

「さくら帰りどうする?私は反対方向だし…」

「ああ(ママに連絡かな)」

と思っていたら

「俺が送りますよ!」

と声が上がった。

それは大田さんだった。

え、大田さんも逆じゃなかったっけ?

「じゃあ、お願いね」

と女性上司が話を決めてしまい、私は大田さんに家に送ってもらう事になった。

 

2022年2月15日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第7話 (全28話)

© 2022 実琴

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