紫煙

花家

小説

932文字

後悔と自責の念に囚われ続けている男の始まりの夜を描いた物語

俺は紫煙が嫌いだ。それでも吸い続ける理由がある。

三年前、俺が幼少期から苦楽を共にしていた、親友といってもいいくらいだった男を自死から救えなかった。その男はかつての俺とは違い不真面目で平気で社会のルールを逸脱する行為をすることがあった。その度、俺は注意をしていた気がする。それでも彼を嫌いになることはなかった。敷かれたレールの上ばかり歩いていた俺にとっては、彼の存在が憧れになっていた。

「煙草、健康に悪いからいい加減にしろよ。」

「お前も吸ってみるか?」

そんな会話を塾の帰りに毎日のように繰り返していた記憶がある。そんな日常がいつまでも続くと思っていた。

ある日を境に、俺はその男と会わなくなった。彼が長年に渡って親から与えられてきたプレッシャー、受験のストレスで重度の鬱病を患ってしまった。社会のルールを逸脱する行為、それは彼からのSOSサインだったのかも知れない。俺はそれに気づけなかった。

彼が鬱病になってから数カ月後、一通の連絡が入った。鬱はもう寛解したとのことだった。俺は何よりも嬉しかった。今日は塾の帰りに彼の好きな栄養ドリンクと煙草を買って帰ろう、時刻は既に夜9時を過ぎていたが友人の体調の回復を嬉しく思っていた俺は彼の住む家に向かった。彼の両親は帰りが遅い、日付が変わるまで語り明かそう、そんな期待を胸に。

インターフォンを押しても彼は出てくることはなかった。早く彼に会いたいと思っていた俺は、鍵が掛かっているであろうと思いつつもドアを引いた。鍵は掛かっていなかった。あれだけ俺が戸締りをうるさく言っていたのにどうしてだ、奇妙に思った俺はドアを開け、彼の部屋まで走った。電気は消えていた。血液の臭いがした。恐る恐る電気のスイッチを押すと倒れている彼がいた。綺麗だったフローリングは血の海、どこを刺したのかはわからない。気が動転した俺は、彼の身体を揺すり、叩き起こそうとした。しかし彼の反応は無かった。

俺は気づいた、彼はもう既に亡くなっていると。

救急車を呼んでからのことは覚えていない。何度も思い出そうとしたがそれはできなかった。

目の前で亡くなったお前の顔がな、今でも夢に出てくるよ。

 

書いていて自分の限界を感じたのでこの辺で終わらせることにしよう。

2021年3月21日公開

© 2021 花家

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