浪速の自称Jリーガー、破滅派を見つける。

井上 央

小説

1,354文字

大阪居住の自称Jリーガー。
ボーイミーツガールよろしくのトキメキを小脇に抱えた彼が出会ったのは、とんでもなく艶やかな令嬢の仕種を匂わせるとある経営者と、そのユーモラスな文言、ユニークな追随者に満ちたWebサイトだった。
皮肉ではないとわざわざ釈明してはまた生まれる皮肉の先に、そうして延々と続いて行くどうしようもい皮肉の道の先に、彼はゴールキーパーの姿を求め続ける。

「おいおい、まじか」

そう言うしかないやろ。なんでってそりゃ、新人賞の落選決め込んだ後になって、スパイクに付着した泥をあざ笑うようなとんでもないサイトを見つけたんやから。

慣れへん比喩を用いて言うならあれちゃう――ポストモダン気取りの連中が、あまりにもディフェンスラインを上げてっからさ、こういうホームページのオフサイドにも気付かんねん。つまりやな、どんだけ時代を先取りしてても、主審の輩が見てへんっていうそれだけのことで、笛を吹いて注目を集めるようなことにはならへんねん。分かるやろ。

せやけどまぁ、とある対象(この場合は『破滅派』ってことになるんやけど)に対する『愛』っちゅうもんが大きければ大きいほど、どうしても比喩だらけの退屈で無駄な文章で言い表そうとせざるを得なくなるってのは、俺らの共通疾患やろな。伝えようとすればするほど、俺らの文章はヒョウ柄のおばはんみたいに、押しつけがましく微に入り細を穿ちたくなって、伝わりずらくなんねん。皮肉な話や。それでも俺という未熟者は、書こうとせずにはいられへんねんから、もうどうしようもあらへんな。

 

まず、この『破滅派』ってサイトのトップページを見てくれ。

 

「後ろ向きのまま前へ進め」

 

こう書いとる。ルサンチマンがくすぐられるで。この一文だけでもう俺は、サイトの経営者がキリストには飽き足らず、ブラフマン、アッラー、ブッダの様相を呈してるのが分かるな。けどまぁ当然のことながらな、経営者は高橋文樹っちゅう人間に姿を変えて、俺らの目に馴染みやすくしとる。

そんで、そのプロフィールの欄を見てみたらな、これまた面白いんや。性懲りもなく引用するで。

 

「2007年、『アウレリャーノがやってくる』で第39回新潮新人賞を受賞するも、単行本化されず。この世のすべてを憎むようになる」

 

なんちゅう世知辛い世の中や。俺も同じように憎まれてんやろか。こんなん書いてんやから、尚更そうやろな。でも幸か不幸か、好きな言葉の欄にはこんな文章がある。

 

「なにもしなかったということは、悪いことをしなかったということではない――マルクス・アウレリス・アントニヌス」

 

これを見て、俺は安心した。なんでもええ。こんなクソJリーグ野郎の文章やろうがなんやろうが、書いても書かんでも一緒や。なんもしやんでも、なんか行動に起こしても、それは良いことも悪いことも同じ分量だけしてるし、また同じ分量だけしていないっちゅうことにもなるんや。

俺は上の引用を肝に銘じ、イエローだろうがレッドだろうが、カードどっさり貰うようなプレーを乱発したる。おいクリロナ、覚悟しとけよ。こんな恐ろしいほど寛大で、輝かしい実績たっぷりのサイトが俺にはあるんやから。

ただまぁ、頭に引っかかるのは、こんだけ書いてみても、やっぱり書いた後には失敗の念しか残らんとこやな。でも一方ではなんとなくな、今までよりかはちょっとこなれた感じで、ヒョウ柄のシャツに袖を通せたような気もするんや。そりゃパリサンジェルマンのユニフォームほどお洒落な感じじゃないやろうけどな、でも目立っては見えるやろうし、これやったら主審も見落とさず、オフサイドの笛を吹いてくれると思うんや。

 

2020年3月7日公開

© 2020 井上 央

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