医者と妖怪。

松野焔楽

小説

6,342文字

主人公の白金勇希は精神科と外科を掛け持ちしている23歳の医師。自分の患者であり、親友の2人を殺人鬼に殺され、今日は2人が死んで3年後の命日。墓参りを終えた帰り、神社の境内で勇希は三尾の狐ルタとカラス天狗ラゴと出会う。ルタとラゴは死んだ親友2人に何処か似ていた。そんな妖怪との出会いから1ヶ月の間に、勇希に起こった奇跡の物語。
(現在未完成です。)

そしてそれから数日後、今度はルタに誘われた。人間界の街で面白そうな場所を見つけたから、一緒に行こうと言っている。言われた通り、街に出ると人で賑わっていた。
「旦那、この街は今、祭りなんですぜ。今日は1日、俺と此処で楽しみやせんか?」
「それはつまり、俺の自由を奪って連れ回すって事か?」
「酷い事言うと燃やしやすぜ、旦那。」
それを聞いて俺は思い出した。燃やす、それは何か気に入らない事があった時に樹流が良く言ってた言葉。口調こそ違うものの、俺はその時、ルタと樹流の面影が重なって見えた。
「ルタ、お前はいつから三尾の狐をやっているんだ?」
「生まれた時から三尾の狐ですぜ。」
「じゃあ、いつ生まれた?」
「3年くらい前ですぜ。でも、あまり覚えてないんでさあ。」
3年。まだ生まれて3年しか経っていないのに大人びた奴。でも、いつもヘラヘラしてるルタが寂しそうなのは気づいた。何か悩んでる事があるのではないかと。
「旦那。こんな所で立ち話も何ですぜ。屋台、買って来やす。」
そう言ってルタは屋台の方へ走って行った。俺はその時まだ気づいていなかった。俺の命を狙う存在に。
しばらく待っているとルタが戻って来た。
「旦那。見てくだせえ。美味そうなタコ焼き!」
「はいはい、美味しそうだな。」
ルタは大好きなタコ焼きを手に入れたようで機嫌が良かった。狐面の下を少し開けて、隙間から美味しそうにタコ焼きを頬張っている。でも何か可笑しい。ときどき俺の方をチラ見してくる。
「さっきから何見てるんだ?」
「旦那の顔、傷ついてやすぜ。何というか、凄く寂しそうな顔してやすぜ。」
「分かるのか?」
「親友を亡くしたって顔に書いてあるんでさあ。旦那、ちょっといいですかい?」
そう言ってルタが顔を近づけてきた。何する気だ、と警戒しているとルタが俺の耳元で囁いた。
「旦那、まだ帰れないですぜ。もっと、イイコトしたいと思いやせんかい?」
イイコト。その意味が俺には理解出来なかった。
「まぁ、俺は旦那の考えてる事が分かるんでさあ。逃がす訳には行かねえんですぜ。」
そう言ってルタは軽々と俺を抱き上げ、森の奥へと入って行った。

2019年1月28日公開

© 2019 松野焔楽

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