医者と妖怪。

その後、ラゴが俺とルタを抱きかかえて家まで運んでくれた。ルタはラゴの腕から解放されると一目散に外へ飛び出し、戻って来なくなった。ラゴは少し困ったように溜息を漏らした。龍大も困った時は良く溜息を吐いていた事を思い出した。ラゴになら、俺の親友の事、話してもいいかもしれない。
「ラゴ。少し俺の話を聞いてくれるか？」
「いいだろう。何かあったのか？」
「俺な、３年前に親友２人を殺されたんだ。俺は医者なのに、２人を救えなかった。」
「それは辛い事だな。友を失うのは誰しも辛い事だ。」
「ラゴ。お前、そっくりなんだよ。死んだ親友の１人に。」
「…………。」
「ルタも。もう１人の親友に似てた。」
俺はラゴに全てを話した。３年前、親友２人を殺人鬼に殺された事。ラゴとルタがそれぞれの親友にそっくりな事。自分だけ生きている罪悪感から、自傷行為を繰り返した事。ラゴは何も言わず、ずっと俺の話を聞いてくれた。
「ごめんな、ラゴ。腹減っただろ？団子でも食べるか？」
淀んだ空気をかき消すように明るく振る舞った。
「主、我はもう冷蔵庫に入っていた団子を食べた故。我が主に食べ物を作って差し上げよう。」
「いや、ラゴ。申し訳ないって。」
「問答無用。我が主に料理を献上したいだけ。」
ラゴはそう言って、台所に入って行った。

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