医者と妖怪。

松野焔楽

小説

6,342文字

主人公の白金勇希は精神科と外科を掛け持ちしている23歳の医師。自分の患者であり、親友の2人を殺人鬼に殺され、今日は2人が死んで3年後の命日。墓参りを終えた帰り、神社の境内で勇希は三尾の狐ルタとカラス天狗ラゴと出会う。ルタとラゴは死んだ親友2人に何処か似ていた。そんな妖怪との出会いから1ヶ月の間に、勇希に起こった奇跡の物語。
(現在未完成です。)

軽く無視しながら家まで着くと、2人は其処までついて来た。それだけではなく、家まで入って来た。
「おい、そこの狐と天狗。誰が入っていいと言った。」
玄関で俺は仁王立ちして2人の行く手を遮った。知り合いでもないのに勝手に家に入るのは可笑しいだろう、と。それを聞いた狐と天狗は顔を見合わせ、答えた。
「じゃあ、旦那と俺達が知り合いになればいいんだな。俺はルタ。見ての通り、三尾の狐でさあ。」
「我の名はラゴ。日本の妖が洋風な名前なのかと馬鹿にするでない。我々も望んだ名では無い故。」
待て。待て待て。何で自己紹介してんの。俺の家に入り浸るつもりか。しかも既に家に入って来てるし。何やら俺の冷蔵庫を勝手に開けて酒を取り出し、どんちゃん騒ぎだ。仕方ない。酒のツマミになりそうな物を作ってやるか。よし、メンマと鮭とばにしよう。俺は台所に行ってツマミを作り始めた。
ツマミのメンマと鮭とばが出来たので、リビングで煩く跳ねまわっているルタを呼び止め、ツマミが乗った皿を渡すとルタは喜んで跳ねまわり、ラゴとまた飲み始めた。
「旦那!お前、良い奴だな!気に入った!!」
「主、感謝する。」
2人から感謝されて、俺は少し嬉しくなり、自分の部屋に入って行った。
しばらくしてリビングからラゴが顔を出し、俺の顔を見て尋ねた。
「そういえば、まだ主の名を存ぜぬ。名を申せ。」
「白金勇希。この町で医者をしている。」
「ほお、医者。我も人間界では医者の世話になった事があるぞ。怪我をした我の手当てをしてくれた。」
「そうか。診てくれた医者が優しい奴で良かったな。」
その夜は妖怪2人のプチ宴会に付き合ってやって、酔い潰れて寝てしまった2人に布団を被せて、寝室で眠りについた。その日からラゴは積極的に俺の所に来て話しかけて来た。

2019年1月28日公開

© 2019 松野焔楽

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