Naked Desire〜姫君たちの野望 プロローグ

右野向左衛門

小説

3,992文字

舞台は西暦2800年代。
世界は政治、経済、そして文化のグローバル化並びにボーダーレス化が進み、従来の「国境「国家」という概念が意味をなさなくなっていた。
数百年間にわたる争いの結果、世界は従来の国家から民族中心の国家に再編された。
ヨーロッパに建国された「神聖ユーベル=プレアガーツ連邦帝国」では、改革を求める国民の声は次第に高ままっていた。そしてその渦中にいたのは、とある姫君だった・・・

宮殿の自室の窓からみえる、月明かりに照らし出された景色を一人で眺めながら、私は今までのことを思い出していた
手の届かない場所に行ってしまった人たちの顔を。
そして、二度と戻ってこない風景を。

私の暮らす国では、これまでありとあらゆる不条理がまかり通っていた。
差別。
嘘。
本音と建て前の乖離。
弱者に対する侮辱行為。
富の偏在。
依怙贔屓。
拡大する一方の格差問題と、固定化が進む階級問題。
そして何より許せなかったのは、この世界にはびこるありとあらゆる不条理を、さも当然といわんばかりに容認し、放置している人たちの存在だった。
貴族。
政治家。
官僚。
経済界。
彼らのほぼ全員は、一般庶民を「モノ」としか見ていない。
司法や警察ですら、彼らが起こす問題には目を瞑り続け、関わらないようにしてきた。
私が彼ら以上に怒りを覚えるのは、労働組合と教育界の人間だ。
本来彼らは弱者の側に立って活動すべき人たちだが、実際は強者の側に立ち、本来守るべき者たちを虐げている。組合幹部は経営者と一体となり、社員を監視している。もちろん労組幹部が、非正規社員の雇用を守る活動はしない。それどころか、非正規社員をモノのように扱い、彼らがちょっとでも意見を言おうものなら、すぐにクビを切る。
そして社会に人材を送り出す教育界の人間は、人間として本来持っている権利は全く教えず、社会に従順であれと教え子にたたき込む。学界に至っては、完全に経済界の言いなりである。
メディアに至っては、ひたすら政権べったりの報道を繰り返し、本来伝えるべき事項については、ほおかむりを決め込み、巧妙に論点をずらすことで、真相を曖昧にする。そうしてまた一つ、悲劇の種が生まれることになるのだ。
もちろんこの国が抱える問題について、厳しく指弾する人たちが大勢いたのは事実だ。
正義感の強いフリージャーナリスト。
NGO。
ごく一部の労働組合。
「社会民主主義」「共産主義」を主張する議員たちと、心ある官僚たち。
そして少数ながらも、これらの問題を解決しようと汗をかいた王族と貴族たち。
しかし彼らのほとんどは、権力に近くなれば近くなるほど従前の主義主張を捨て、ひたすら体制側に媚び諂う存在に堕ちていった。
なぜなら彼らの多くは、体制側と同じ階級出身者だったからだ。
だから彼らは口で「改革」を叫んだところで、虐げられる者の気持を理解できないし、しようともしない。ひょっとしたら、最初からその気もなかったのだろう。
上の階級は口で「弱者目線」「格差解消」を訴えながら、本音では彼らのことを蔑み、バカにしている。政治家は政治家で、選挙の時だけ弱者保護を訴えるが、当選後は平気で態度を変える。もちろん差別されている側も、彼ら上流階級の本音は百も承知だから、彼らの意見に耳を傾けることもない。
虐げられるモノも、時には反撃した事もある。しかしそのたびに権力に弾圧され、メディアの仕掛けるネガティブキャンペーンにより、社会から孤立する。彼らは権力の前に、必要以上の懲罰に心身ともボロボロになり、その多くは悲惨な結末を辿った。
バカにされ、騙され、傷つけられ、存在そのものを否定される。そして時には命を奪われる。そんな社会にすむ住人、いや、そんな社会にすむしかない人たちのことを、心の底から慮る人たちが、この国にどのくらいいるのだろうかといつも考えていた。
ところがそんなある日、意外なところから虐げられる者のために立ち上がる勢力が現れた。そしてその勢力の中心人物は、私もよく知る人物だった。
人々は狂喜乱舞した。ついに、自分たちの願いを聞き届けてくれる人間が現れたと。
しかし、その歓びもつかの間だった。
人々は思い知る。
彼らもまた、自分たちを踏み台にして、権力を握りたかっただけなのだと。
自分たちの願いは聞き届けられることはないのか?
私たちはずっと負け犬のまま人生を終わるのか?
だが虐げられし者たちは、こんどは諦めなかった。
自分たちのできることをやるんだ!という強い信念を持ち、ありとあらゆる手段で反撃に打って出た。気がつくと、私も彼らの仲間に加わっていた。知り合いの多くも、抵抗運動に参加した。国内は、未曾有の混乱状態に陥っていた。
もちろん、体制側もただ黙って手をこまねいていたわけではない。ありとあらゆる手段を使って、民衆たちの反乱を鎮圧しようとした。
かくして国内では、体制側と反体制側の間で、大願成就と陰謀阻止の目的のために、さまざまな陰謀が企図された。出典不明のウワサやデマも多数流れた。混乱収拾のために、両者の間で、何回も交渉が行われた。だが交渉は決裂し、最後は武力闘争にまで発展した。
力と力の対決ならば、体制側が有利な展開のはずである。だが実際にはそうならず、最終的に勝ったのは反乱者たちだった。

もちろん、民衆が自分たちの願いを叶えるためには、彼らが思っていた以上の代償を支払わなければならなかった。
ある者は、家族を失った。
ある者は、友だちを失った。
戦いに身を投じた結果、取り返しのつかない障害を負った人間もいる。
かくいう私も、「竹馬の友」と言われる人たちを何人も失った。
ある友人は、敵勢力に命を奪われた。
ある友人は、敵勢力に寝返った。
寝返った友人の中には、ずっと私たちのそばにいた人間もいたから、精神的なショックは大きかった。
逆に中立サイドにいたり、敵側から私たちの勢力に寝返った人間も多数いた。
皮肉なことに、この対立に決着をつけたのは彼らのおかげだった。
全てが終わってわかったことは、戦争は憎しみしか遺さないと言うことだ。
平和が欲しければ、どんなに時間がかかっても対話を続けるしかないのだ。
そのために、私たちはなんと無駄な時間を過ごし、多大な犠牲を払ったのか!
人間とは、なんと愚かな生き物なのだろうか!

新しい時代がやってきて、新しい皇族が皇帝として即位した。
戴冠式で新皇帝は、問題解決のために武力行使をしないことを宣言した。
新皇帝の宣言に、懐疑的な意見を持つ国民はまだまだ多い。先日までムダな血を流していたのにまだわからないのか。私は彼らの意見を聞くたびに呆れてしまう。武力を用いることは、新たな憎しみの種を生むだけだというのに。
それに、新しい体制はまだはじまったばかりだ。
彼らは魔法使いではない。今までとは違う人間が皇帝やこの国の政権についたところで、そう簡単に今までの悪習や恨み憎しみが一掃されるとは思えない。
考えてみて欲しい。今までの体制が、いったいどのくらい続いてきたのかを。数年というレベルではない。数十年、数百年というレベルなのだ。それほど長期間にわたり、社会のあちこちにしみこんできた腐臭が、たった数年で一掃できると本気で思っているとしたら、本当におめでたい。だから我慢して欲しい。自分たちの望む世界を作り出したいのなら。新政権がちょっとしくじったからといって、不満の声を上げないで欲しい。
少なくても、今の政権はこれまでの政権とは違って、本気で社会を変えたいという人たちの集まりだ。結果を残すにはかなり時間がかかる。
私は、彼らの試みを最後まで見届けることができるのだろうか・・・。

私がそんなことを考えながら窓辺で佇んでいると、いつの間にか私の隣に、愛しい人が立っている。彼は私の名前を囁くと、私の身体を抱き寄せた。そしてワタシの唇を奪うやいなや、私が羽織るガウンのひもをほどくと、それを素早く脱がせた。同時に彼も、自分の腰に巻いているバスタオルを外した。
私たちは、あっという間に素っ裸になった。
再び情熱的なキスをして抱き合い、お互いの身体を愛撫する。
快感が身体を貫く。身体が火照り、汗ばむのがわかる。息づかいが荒くなる。
もう限界だ・・・彼もそう思ったのだろう。逞しい腕で私を抱き上げると、私をベッドまで運ぶ。そしてワタシを寝かせると、そのまま私の上にのしかかり、キスの雨を降らせはじめる。彼のキスが終わった後、今度は私が彼の上にのしかかり、先ほど彼にされたことを、彼にしてあげる。それを繰り返しているうちに、二人の欲望の炎は限界点に達する。
「・・・ねえ・・・お願い・・・来て・・・」
私が彼の耳元でそう囁くと、彼は静かにうなずいた。そして固く、逞しくなった彼自身が私の中に入り、その中を激しくえぐる。
ワタシの口から出る喘ぎ声、言葉にならない言葉、吐息、そして叫び声が、深夜の私の部屋にこだまする。ワタシの口から声が出るたびに、彼は愛情をこめて、私の中をかき回す。
私も彼に置いていかれたくない一心で、必死に指先で、彼の腰を掴んだ。強く力を入れたから、爪の跡がついたかも知れない。
あの歓びがやってくるかも・・もう限界だ・・・そう思った瞬間、とてつもない快感が、私の身体を貫いた。
「あなた・・・もうだめ・・・」
私が彼の耳元で囁くと、彼は最後の強烈な一突きを、私の中にお見舞いする。
私は目を大きく見開き、身体をエビ反りにすると
「あ、あ、あぁぁぁぁぁぁ────────────────────────────────!!」
と絶叫する。
同時に火山のように熱い彼の情熱が、私の中に注ぎ込まれるのを感じた。
そして、私の意識は次第に遠のいていった・・・。

皆さま、はじめまして。
私の名前はこの物語の語り部の一人である神聖プレアガーツ=ユーベル連邦帝国の皇女
エルヴィラ・ジャンヌ・マリナ・カーリン・フォン・ゾンネンアウフガング=ユーベル。
よしなに、お見知りおき願います。
これから私が語る物語は、今から数年前からはじまるのです。

そして、この物語は
平和を望みつつ、無念の思いを残して死んでいった人たちに捧げたいと思います。

2018年4月20日公開

© 2018 右野向左衛門

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