ブレイクコア、或いはさなぎ

峰雲

小説

645文字

きっと、あなたの時間を一分も奪いはしない掌編小説。あなたの何かが変わることを作者は願う。

ヘッドフォンの中で、ブレイクコアが狂乱する。

ブレイクコアは音楽の音楽でない、ノイズにも似た、歪なミュージックだ。既存の音楽をばらばらに切り刻んで、組み換える。骨子はそういうことだ。

同じフレーズが千々になり、或いは繰り返され、圧縮されて、限りなく永遠に近い所まで引き伸ばされる。

それは、ぼくに戦争を連想させる。

血と肉が、ハーモニーとリズムが、ごちゃ混ぜに一つの器で掻き回されているような感覚。サラダボウルの中の野菜を、くしゃくしゃと揉むのに似ているかもしれない。

しゅぽん、と間抜けな音がする。迫撃砲かグレネードランチャーの発射音だ。砲弾が炸裂する音までは聞こえない。戦争が全て、こんな風にのんきなら、とつい思ってしまう。

続いて、16ビートのドラム音、いや、マシンガンの連射。コンクリートの壁にポコポコと穴があく。それは機銃掃射の蹂躙だ。

勿論、ぼくの身体にも穴があく。ワイン色の液体が、とぽとぽ溢れて、ぼくの内臓は7.62mmの弾丸に撹拌されて、ぐちゃぐちゃだ。小指にも満たない大きさの弾頭に、体内を破壊されることを考えるのは、ひどく楽しい。さなぎの中の芋虫が、一度溶けて、どろどろになるように、ぼくも銃弾を受けて、どろどろになる。

細胞が生まれ変わるように、一秒前のぼくが、もう既に今のぼくでない。六年後には全ての細胞が新しくなって、やっぱり今のぼくでなくなった時、ヘッドフォンの中の音楽はまだ、ブレイクコアだろうか。

そして今、音楽が止み、次のぼくが生まれる。

 

2016年5月7日公開

© 2016 峰雲

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