ぶらんこ

自分のために書いた文章(第1話)

pera_pera

小説

636文字

自分のために書いた文章を、見ず知らずの他人に公開するという試み

公園に行くと、すぐにぶらんこに座る。

少しお尻を動かしただけで、鎖に繋がれた板はすぐにバランスを失った。小春の体はつんのめり、元の体勢に戻ろうとすれば、勢い余って今度は後ろへ倒れ込む。そうしてぶらんこは前へ後ろへ揺れ始める。

 

ぶらんこは漕いでないのに動き続ける。不思議に思って振り返ると、年の近い少年が照れたように立っていた。

「ほら」

少年の手が板を押して、小春はまた空中へ戻る。頬に当たった風がくすぐったくて、小春は声を上げて笑った。

後ろだから見えないけれど、少年も多分笑ったのだと思う。板を押す力がさっきよりも少し強くなる。

 

揺れはだんだん大きくなる。象の形の滑り台が大きくなったり小さくなったり。

小春は怖くなってきて、砂利に足をつけようとした。しかし、いくらバタバタしてみても地面に足が届かない。

「ねぇ、止めてよ」

叫ぶ小春に、少年は何も言わない。

 

揺れはどんどん大きくなる。空が見えたり地面が見えたり。

揺り返すごとに頭がぐわんぐわんとして、鎖をぎゅっと握った。ここで死ぬのかもしれない。体は硬直し、てっぺんのところで、ついに板が地面と並行になる。

落っこちる!

 

「危ないですよ」

すんでのところで小春を抱きかかえたのは、背の高い男の人だった。少年はいつのまにかどこかへ去ってしまっていた。

優しい目をしたその人は、動きを止めたぶらんこの上に小春をそっとおろした。

「気をつけてね」

 

小春の頬は赤くなり、ぶらんこは再び揺れ始める。

2025年6月2日公開

作品集『自分のために書いた文章』第1話 (全2話)

© 2025 pera_pera

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