公園に行くと、すぐにぶらんこに座る。
少しお尻を動かしただけで、鎖に繋がれた板はすぐにバランスを失った。小春の体はつんのめり、元の体勢に戻ろうとすれば、勢い余って今度は後ろへ倒れ込む。そうしてぶらんこは前へ後ろへ揺れ始める。
ぶらんこは漕いでないのに動き続ける。不思議に思って振り返ると、年の近い少年が照れたように立っていた。
「ほら」
少年の手が板を押して、小春はまた空中へ戻る。頬に当たった風がくすぐったくて、小春は声を上げて笑った。
後ろだから見えないけれど、少年も多分笑ったのだと思う。板を押す力がさっきよりも少し強くなる。
揺れはだんだん大きくなる。象の形の滑り台が大きくなったり小さくなったり。
小春は怖くなってきて、砂利に足をつけようとした。しかし、いくらバタバタしてみても地面に足が届かない。
「ねぇ、止めてよ」
叫ぶ小春に、少年は何も言わない。
揺れはどんどん大きくなる。空が見えたり地面が見えたり。
揺り返すごとに頭がぐわんぐわんとして、鎖をぎゅっと握った。ここで死ぬのかもしれない。体は硬直し、てっぺんのところで、ついに板が地面と並行になる。
落っこちる!
「危ないですよ」
すんでのところで小春を抱きかかえたのは、背の高い男の人だった。少年はいつのまにかどこかへ去ってしまっていた。
優しい目をしたその人は、動きを止めたぶらんこの上に小春をそっとおろした。
「気をつけてね」
小春の頬は赤くなり、ぶらんこは再び揺れ始める。
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