「若さ」は「馬鹿さ」によって突き動かされる。若者は馬鹿者という世の定め。
(1章の2) となりの荒れ地には墓があった。風雨に晒され、砂埃に打たれて劣化してしまったのか、下の方は白茶けている。 ざっと靴底が滑る。砂利に足を取られ、はずみで小石が靴の隙間…
(4章の1) 1年、あるいは2年前だろうか。いずれにしろ少し前になるが、わたしは強く印象に残るテレビ番組を観た。もちろん今歩いている「夢の世界」でのことではない。現実世界でのこと…
(5章の2) 告知を受け、わたしはすぐさま会社を辞めた。働いている意味がまったくないからだ。一人暮らしで家族はいない。どうして余命が半年なのに働かなくてはならないのか。成し遂げた…
(7章の1) 病室から部屋を移され、機械が隙間なく並ぶ部屋で『業者A』の人間に囲まれることになった。いろいろな線を、そして管を、とっかえひっかえ体に付けられた。これが夢の世界に行…
(バカSF × 古典構造 × 相撲要素も可) 宇宙を股にかけた戦争を止めたのは、寝たきりの関西弁のおばあちゃん。その“方法”とは…。
矢追純一に捧ぐ
(2章の1) 塔の湯の集落に入る。 道のでこぼこが均されている。もちろん未舗装のこと、完全な平らというわけではない。ただ、山道のように、えぐられたような窪みも、ごろた石もな…
(6章の1) そこに、一人の男が現れた。 男は、元々関係の薄い、そして今ではほとんど付き合いの切れている友人の名を出した。その紹介で訪ねて来たのだという。 あいつか。…
(8章の1) わたしはずっと歩いている。「汗よ乾け」と念じていないので、全身汗まみれだ。この時代のシャツは吸水力が悪く、流れ落ちる汗でパンツまでもベトベトになっている。 小…
全裸中年男性パンデミックが起こった東京はあと三時間後に核ミサイルの攻撃によって滅菌させられる。海兵隊に使命が課せられた――アメリカ大使館に避難した合衆国国民および駐日大使を保護せよ。
不条理な大幸運に飄々と忍従する中学生少年少女たちのロードムービー。 異世界にして過去世。未来にして神話時代。下劣にして荘厳。地獄にしてユートピア。 図書館にはなく、本棚にはある…
乗せてくれたトラックのドライバーさんから聞いた断片的な話の数々。
(1章の3) 川があり、砂利道は、それを渡るほんの十数歩分だけ舗装路になる。錆びた欄干に手を付いて下の流れを覗き込むがよく見えない。それならばと、橋の脇から降りてみる。足元がよく…
(5章の1) わたしのすい臓はがんで、さらにはステージⅣだった。これはもう、治療のしようがないくらいに進行しているという状態だ。 ある日担当医は、点滴で元気になったわたしを…
(6章の3) 特別サービスについて、根を詰めてとうとうと話されたわけではない。もはや敵地に乗り込んでのそれなので、相手は強引にでもいい加減にでも、もっと言えば強制してでもできたは…
(7章の3) 翌日、点滴注射を受けているときに沢田が来た。腕の血管に取り付けた管にセットした大型の注射器を、医師が親指でゆっくり押す。赤味がかった液体が管を伝ってわたしの中に入っ…
(9章の5) 一部屋ずつ運ばず、そろって食事をさせるのは手間をかけたくないからだろう。みすぼらしい安宿のやりそうなことだ。 おかずがまた貧弱だった。肉類、刺身類はなし。揚げ…
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