スマホと私

山谷感人

エセー

1,739文字

 私事。

 実刑一年二ヶ月にさせてしまったスマホ盗難事件を含め私は、この一年でスマホを四回、紛失している。
 一回目。邏卒の詰所に行って何回も私のスマホに掛けさせたら女性が出た。私の居住地は細い坂の上な為、バスが通らない。故に乗り合いタクシーなるモノがある。老人に混じりよく利用しているが、そこの女性運転手さんであった。彼女は朗らかに「今から届けに行きますね〜」と来てくれた。大変に有り難かった。
 二回目。私のエセー、実刑一年二ヶ月、を読んでいて頂ければ判る。お爺さん元気にしているだろうか……。
 三回目。私は今夏、猛暑でフラフラな為、坂の下に降りるはまだしも帰り、上がりは無理! と横着な考えになり、歩いて十五分の距離をルンペンなのに毎度、モノホンのタクシーを使うなる荒業をしていた。乗り合いタクシーは時間が決まっているし、便数が少ないのである。ココでまた落とす。
 また邏卒のトコロに行き、散々と営業所にテレフォンさせた。最初は運ちゃん連中は「判らない」の連呼であった。関わりたく無いのであろう。邏卒如きじゃオハナシにならぬと思い私が代わった。「あのね、此方はドコモショップに行き位置情報を貰っているのだよ。場所は今、貴方が通話している近隣」と述べた。ブラフである。無言な故に続ける。
「貴方は所長? タクシー全台、運ちゃん一人一人、調べなさい!」と怒った時の杉下右京の言い方をパクリ伝えた。然し相手は開き直り「調べるがアンタ、この界隈で二度とタクシーに乗れると思うなよ!」と凄まれてしまった。「だまらっしゃい! 運ちゃん」と伝えたトコロでテレフォンは切られた。三日後、警察署に私のスマホがあった。届け主は匿名で。
 四回。スマホが戻ったのは昨夕である。
 私は四日間くらい泥酔していた。また無いよスマホが……になった。流石に邏卒にも合わす顔がないなと思ったが行かねばならない。
 詰所を訪れると皆、唖然としていた。ここは下手にいこうと判断し「あの〜。またスマホを紛失しちゃいました」と台詞を吐いたら邏卒達はポカンとした顔をした。完全に紛失詐欺の、かまってちゃんの展開である。「次は何処?」と呆れられながら聞かれ下手作戦の私は「ちょっと判りません。あ、乗り合いタクシーには乗ったかも」と答えた。そこの事務所にテレフォンして頂いたが「無い」との事であった。
「私、スマホを紛失過ぎなので何かの病気ですかね」
「呑み過ぎだよ。臭いがプンプンする。此方も迷惑だ」
「さよですか」
「取り敢えず今は無いよ。念の為、日本中の届けを確認したが」
「申し訳御座いません。では明日、また来ます」
 下手作戦だと使えない邏卒も日本中までチェックして呉れるのだな……、と私はこの齢で一つ学問させて貰った。
 五日、詰所に通ったが進展はなく昨日、最早これまで……と松平容保の気分でドコモショップに行った。一番、安い機種でも三萬円くらいであった。ルンペンだけど仕方ない。明日、どうにか都合を付けてまた来ますと述べた。
 帰り。時間帯が合う為、乗り合いタクシーに乗ろうとした。停留所にやってきて座ろうとしたら「これ違います?」と聞かれた。女性運転手さんである。有った、私のスマホだ!
 私のスマホ待ち受け画面にはプリティーな猫とセクシーな私が写っている故、そうだろうと思い訪ねて呉れた訳だ。
「有りがとう御座います。二回目ですね、これで!」と歓喜して渡して貰ったら女性運転手さんはアハハと結構、大きな声で笑った。本当に助かった、恩義しかないと感じたが、よくよく考えれば、事務所に置いて呉れていれば初日、見つかったじゃねぇか……である。無論、それでもサンクス、美人な女性運転手さん!
 一旦、部屋に戻り再度ドコモショップに行き「さっきのボッタクリ契約なしな」と伝えて帰路、立ち呑みバーにスマホ復帰祝いに一杯で入ったら結句、一萬円くらい使った私は、皆さん真似しないでね……と云うより他はない。
 スマホを紛失して戻って来る確率は二割とからしい。私は十割である。最早、ショーヘイ・オオタニサンのレヴェル。そもそも一年に四回なる紛失は、そうそうにないだろう。これはスマホがいつまでも離れた愛猫の事を想い弱々しい私に、代わりに遊んでやるよ、最後は戻って来るごっこをしているのかと疑っている。 
 

2024年10月16日公開

© 2024 山谷感人

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